2018.10.26
今回のママ:
福田朱美さん・44歳・福岡県出身・大分市在住
(中学3年生・中学2年生・小学校4年生の3兄弟の母)
タイルを手工芸用に取り入れ、インテリア雑貨や作品として楽しむ、今人気の「タイルクラフト」。そのタイルクラフトの日本ヴォーグ社認定講師を昨年春に取得し、以降、タイルアート教室「チェリーブロッサム」の講師として活動。大分市や別府市を中心にワークショップや教室を開き、イベントなどにも出品しながら、タイルクラフトの楽しさを伝えている。花や動物をモチーフにした作品は、ほんわかと優しい雰囲気。三人の男の子のママでもあり、家庭と仕事のバランスを考えながら、無理のない働き方を模索しつつ新しい道に向かって邁進中。
大分で自分らしく生きるママたちのこれまでを綴るインタビューシリーズ。
今回は、育ち盛りの男の子3人を育てながら、タイルクラフト講師として活躍する福田朱美さんのストーリー。
「ママが働く」って、なんなんだろう。結婚前に培ったキャリアを再び活かしたいと思う人、家計を支えるために働きたいと思う人、自分のために仕事がしたいと思う人、手に職をつけたいと思う人、専業主婦として家庭を立派に守りたいと思う人…そこにはいろんな価値観があり、ママの働き方は千差万別。結婚して、子どもを産んで、子育てに奮闘して…結婚によって女性の生活は一変する。子育てが落ち着き、自分の時間ができた時「働く」ということを考える時があると思う。これからの自分の居場所はどこ?と悩むことになっても、ふとしたきっかけで見つかることだってあるのかも…。今回取材させてもらった福田さんは、40歳で出会ったタイルクラフトをきっかけに、新しい道を切り開いた一人だ。
福岡の看護学校に通っていた福田さん。お年寄りと話したり、人と関わることが好きだったこともあり、自分に合った仕事だと、看護師の勉強と仕事に日々奮闘していた。しかし、20歳の時に病気を患い、やむを得ず学校を辞めることに。看護師の資格を取得することは諦めつつ、引き続き病院で勤務していた時、同じ病院で働く理学療法士のご主人に出会い、28歳の時に結婚。ご主人の実家がある別府市に嫁ぎ、30歳で第一子、翌年に第二子を出産。それからは子育てに追われる日々を送る。
子育ても落ち着いた頃、コンビニでパートとして働き始めた。運命の出会いが訪れたのは、今から3年前。立ち寄ったカフェで、偶然にもタイルクラフトの先生と出会った。話を聞くうち、これを仕事にしたいという思いが生まれてきた。
「だけどその反面、自分には絵の才能とかセンスがないと思っていたので、仕事としてやっていけるのか不安もありました。先生が活躍しているのは、先生だからできてるんだ…と。だけど、活動しながらそれを見つけていけばいいかと思って、この世界に思い切って飛び込みました」。
当時働いていたコンビニのパートを続けながら、タイルクラフトを猛勉強。資格を取るため9作品を制作し、合格を目指した。しかし、全カリキュラムの工程が総合評価される最終課題審査で、残念ながら不合格に。それからは心新たに作品作りに没頭し、昨年5月に合格。晴れてタイルクラフト認定講師の資格を取得した。
「資格を取るのに1年かかりました。不合格だった時はショックだったけど、これから活動するために必要な試練だと前向きに捉えて、頑張りました!」。資格取得以降、イベント参加への誘いや、商品の委託販売の話などが次々と舞い込んできた。多い時には、1日2、3件の問い合わせがあるほどだった。「今年の夏は遠方まで足を運んで、県内外で活躍する作家さんやお店の方と出会い、いろんなものを見ることができて本当に勉強になりました。でも、急に活動を広げることで家庭がおろそかになるのは嫌だったので、自然と今のペースに落ち着きました。楽しく活動できないと続けられないと思うので、無理せず、今の自分にあった活動を続けていけたらと思います」。
40代にして、自分のやりたいことが見つかった福田さん。パート時代から激変した生活に、家族の戸惑いはなかったのだろうか。
「活動することは、家族には事後報告だったんですけど(笑)、主人はやりたいことに反対する人じゃなく、理解があってむしろ応援してくれる人なんです。子どもたちは、男子だからタイルクラフトの活動がピンときてないみたいで「なんか作りよんのー?』って感じ。小学校や公民館で教室を開いて教える姿を見て、じわじわと把握してくれたみたいですけどね。家族も自然と、この変化を受け入れてくれてるみたいです」。
そんな家族の存在は活動の支えになっていることは間違いないのだが、3人兄弟のママでもある福田さん。子どもたちの反抗期やトラブルと、子育ての悩みも尽きることがない。兄弟三人三様、性格も違えば、それぞれとの関係性も異なる。
これからの展望について聞いてみた。
「それが私の中の悩みで…。タイルクラフトの講師の資格を持っているので、この魅力を多くの人たちに広げたいという思いはもちろんあるんです。でも、今まで感覚を信じて生きてきた私なので、物事を順序よく分かりやすく並べて、人に教えると言うことがどうやら苦手みたいなんです。だから、今はどちらかというとワークショップで皆さんと一緒に作ったりして、活動を楽しみたいという思いが強いですね。お手本を見ながらタイルを並べていくという製作方法もあるんですが、発達障がいの人はそういう作業が苦手とも言われています。いつかその分野で役立つことに関われたらいいなと思うんですが、まだどうやって繋いだらいいのか明確なビジョンはできていません。いつか、私が経験したことが誰かの役に立つ時がきたらいいなと思っています」。
40代になると、人生の折り返し地点に立っていることを自覚する。子どもが成長し巣立った後、どんな自分でいたいのか? 理想の自分に近づくためには、これからをどう生きればいいのか? 色んなことを模索する年齢なのかもしれない。
「コンビニの仕事を辞めたのが今年の3月。そこから一気に生活が変わりました。勇気を振り絞って、思い切って今の生活を手放すことも大事なのかなって思います。この先私の道がどう進むのか分からないけど、タイルクラフトを無心で製作することは、私をリセットしてくれる大切な時間。だからこれからも無理せず、流れに身を任せて活動を続けて、いつか同じ悩みを抱えるお母さんたちの救いの存在になれたら嬉しいですね」。
※毎月1回、別府市東荘園の『雑貨喫茶 OLOVO」にて体験教室を開催。詳細は以下SNSでチェック。
Facebook タイルクラフト教室チェリーブロッサム
https://goo.gl/llQRGD
blog
https://ameblo.jp/olivedekirei11/
この記事のライター:安達博子
「柔らかく優しい作風と同じく、取材中は終始、ほんわり綿毛に包まれたような和やかな時間を作ってくれた福田さん。育ち盛り、ワンパク盛りの男の子3人のお世話をしながらも(もちろんご主人のお世話も)、40歳過ぎで新しい世界を見つけ、自分のペースを保ちながら活動する姿は、悩み多き40代女子(もう女子じゃないというツッコミはナシで)に勇気と希望を与えてくれる存在になると思います。『思い切って今の生活を手放すことも必要』という言葉は、福田さん自身が実感しているからこそ説得力がありました。仕事で休日に出かける際は、必ず息子さんたちに手作り弁当を作って出かけるそうで、そんなこだわりにも愛情の深さを感じます。ネガティブとポジティブが同居する、自称『不思議ちゃん』の福田さん。包み隠さず、正直な今をさらけ出し話してくれたことに感謝します。これからの活躍、楽しみにしてます」。