2018.09.03
ママのままアンバサダーの板井善江です。近頃、テレビや新聞で頻繁に目にするワードのひとつが「働き方改革」ではないでしょうか。メディアでも、様々な企業が社員の「働き方」に着目した取り組みを取り上げており、事例を紹介する新聞記事やその様子を紹介するニュースを目にする機会が増えてきているように思います。そこで今回、この「働き方改革」というテーマで、大分県の取り組みや県内企業の取り組み、ママのまま読者の意識を調査してきました。
まず最初に訪れたのが、大分県主催の「おおいた働き方改革 経営者勉強会」。
内容は「経営戦略としての働き方改革~人口オーナス期における企業の経営課題を考える」というもので、ワークライフバランスの観点から現在の「働き方」の課題をわかりやすく紐解き、「働き方」の考え方をいまの時代に合う発想へとシフトチェンジするために具体的な事例を入れて解説したわかりやすい勉強会でした。
参加対象は、その名の通り「経営者」。
その会場は、当初予定していた会場を広めの会場へと変更するほどの参加者の応募があったらしく、「働き方改革」への関心の高さが伺えました。
その勉強会で、私がもっとも関心をもった内容は「人口オーナス期の働き方にチェンジする必要性」。
この「人口オーナス期」という言葉、そしてその言葉と対照的に使われる「人口ボーナス期」という言葉を、みなさんはご存知でしょうか。
人口ボーナス期とは、総人口に占める働く人の割合が上昇し、経済成長が促進されることを指します。人口ボーナス期の日本では、重工業の比率が高く、早く・安く・大量生産することで、より大きな成果を得ていました。長時間労働そのものが生産性を高め、均一な物をたくさん提供することで市場のニーズが満たすためには、働き手がたくさん必要。そのために労働者を一律に管理することが通用する、そんな時期でもありました。労働者の立場は弱く、力仕事や体力勝負の男性の方が適している業務が多かったことも特徴として挙げられます。
日本では、この人口ボーナス期を迎えたのが1960年代と言われ1990年代初頭まで続いたといわれています。
1960年代と言えば日本はまさに高度成長期。
この人口ボーナス期の1986年頃は「亭主元気で留守がいい」といったCMコピーが流行るほど、男性が朝早くから夜遅くまで忙しく働き、主婦として家庭を守る女性は専業主婦であっても子どもを安心して育てることができるほど、世帯収入が平均して保障されていた時代でもあったのかもしれません。
一方、人口オーナス期とは、人口構成の変化が経済にとってマイナスに作用する状態。
つまり、働く人よりも支えられる人が多くなる状況で、日本では少子高齢化が顕著になってきた1990年頃からその時期に入ってきたと言われています。
では、そんな人口オーナス期とはどんな時代かというと、
・物に飽和状態の市場において、付加価値が常に求められる。
・労働力不足のため人件費が高騰し、短時間で成果を上げる働き方が求められる。
・頭脳勝負、アイデア勝負の労働比率が高くなるといった特徴がある。
・労働力が激減している現実があるため、男女をフル活用する必要性がある。
・これまでは仕事を続けることの障壁となっていた「育児」「介護」「難病」「障がい」などが働く上での障壁ではない、という環境づくりの必要性が求められている。
そんな時代。
まさに現在のことを指します。
日本ではここ30年程の間に、様々な出来事が起きました。
1990年代初頭のバブル崩壊、団塊の世代の退職、リーマンショック、東日本大震災など日本の社会構造や経済構造で培われたこれまでの「常識」や「価値観」を大きく変化させるような出来事が次々と起こり、人々の意識は確実に変化しているように思います。
また同時に、ダイバーシティ、女性活躍推進などという概念が次第に広がり、経済基盤の強化策としてそれらに関連する様々な動きもみられています。
この30年間で起きた社会構造の変化に伴う労働力の変化。
人口ボーナス期から人口オーナス期への劇的変化。
この劇的変化の内容をしっかり把握すること、そしてその変化に合わせて雇用する側も雇用される側も働き方の「意識」を変えていくこと、これが最も大切なのではないかと感じます。
この春、ママのままプロジェクトでは子育て中の女性を対象に「働く」をキーワードにしたアンケートを実施しました。
アンケートでは、現在の仕事の有無や今後の働く意思について、また仕事をしたい(続けたい)理由や仕事を現在していないママにはその理由など、大きく7つの項目でアンケートを実施。
結果、9割のママが「仕事をしたい」「仕事を続けたい」と回答しています。
「仕事を続けたい」「仕事をしたい」理由の4位に「現在の職場が働きやすいから」という回答がありますが、一方で「仕事を辞めたい理由」のトップに「現在の業務内容では両立できない」という回答があります。
また「仕事をしたいけど働いてない理由」には、「希望する時間帯の仕事がない」という理由がトップにあり、少数意見のなかには「子育てと両立できる働き方がみつからない」というものもありました。
子育てに忙しい時期は、子どもの年齢にもよりますが、圧倒的に「ママ」としての時間と体力が必要な時期。
そんな時期の「ママの働き方」に時間や内容、就業場所などにおいて新しい働き方の形、その時期に適したより柔軟な発想が生まれると、もっと現実的に仕事をするママが増えてくるように感じます。
さらに注目すべきは「女性が働きやすい社会になるためには何が必要か」という質問への回答で、1位は「職場の制度や理解」という結果です。
「人口ボーナス期」では、主に男性が働き手の主軸を占め、それに合わせた働き方や制度がすでに確立していましたが、「人口オーナス期」へと変わったいま、働き手に女性が増え、社会的ニーズとしても女性の労働力が必要とされており、真の意味でその変化にあった制度や意識の変化が起こっているのか。
このアンケート結果からは、まだまだ変化の必要性が見て取れるように思います。
また「女性が働きやすい社会になるためには何が必要か」という質問への回答で、もうひとつ注目したいのが「女性の意識」が4位にあることです。
実際、「働き方」について考える際、高度成長期やバブルの時代を現役世代として働いてきた親をもつ私自身は、バブルがはじけた後の就職でしたので、親が現役バリバリで働いていたころとは景気の勢いや社会の空気に「何かが違う」と思ってきましたし、就職したての頃は「終身雇用制」が一般的であった雇用体制にしても、リーマンショック後には、いわゆる「リストラ」で企業の人員整理がなされていくのを目の当たりにし、「就職=一生安泰」ではない危機感も感じていました。
そしてそれは、「働く意識」を深く考えるきっかけともなった出来事でもあったように思います。
「企業に必要とされる人材」であること、そして「働き甲斐」のある環境や仕事を求めるためには、それにふさわしい社会や所属する企業に貢献ができる人であること、さらに自分自身の市場価値を高める必要性。
雇用される側のニーズがあれば、企業側のニーズもある。
双方のニーズが一致すること、そして双方にとってwin-winな関係であること。
企業と働き手の間に必要な関係ではないかと思います。
そんな思いもあり、私自身、独身の頃はこれまでの人生のなかで最も自由に仕事に没頭した時期だったと思います。
というのも、結婚し出産を経て働いてみると、圧倒的に時間が足りない!という状況に追い込まれたからです。
特に育休明けの1年間は仕事と育児の両立に体力と神経をすり減らしつつも、育児への丁寧さやこだわりなどはできるだけ捨てて、とにかく勢いで乗り切る時期、そして子どもが3歳になる時期までは、子どもに自我が芽生えつつも身辺自立の確立が未完成ということもあり、最高に可愛い時期でありながらも時間に余裕のないせいか、これまた丁寧なかかわりとは無縁の葛藤の時期だったように思います。
子育てで親が手をかけられる時期は限られているとは言いますが、それでも就学までをピークに、その後は成長段階に合わせた精神的なフォローや進路のフォローを多方面でしていく必要があります。
また、子どもの健康状態や障がいの有無によっては、それ以上に必要なサポートも生じてきます。
「女性」が働くということ。
結婚や出産といった生活の変化に伴い、家庭のことや家族のこと、子育てのことなどで時間的、精神的に相当のマネージメントを要することでもあります。
しかしながら、このマネージメントには家族の協力や理解、自分も含め家族の健康状態などが関係しますし、極限まで忙しく精神的に余裕がなくなると自分でできるマネージメントにも限界がある時期があるように思います。
アンケート結果から働きたいママが9割いることがわかった一方、「女性が働きやすい社会になるため」に、もっとも必要とされていたのは「職場の制度や理解」という結果。
では人口オーナス期のいま、ママになっても働きやすい企業側の取り組みは、実際のところなされているのでしょうか。
調べていくとわかってきましたが、大分県内でも女性が働きやすくなるような取り組みをしている企業があります。
また、女性活躍社会にむけて実際の活動とその活動の発信を行う法人もあります。
次回以降はその具体的な取り組みについてご紹介していきます。