2019.07.17
女性の視点や発想をロジカルに考え、カタチにする、おおいた女性マーケティング部「ITAJOMA」。女性心理、行動、特性を分析・研究。女性の声とチカラを、企業へ、社会へ届けるための仕組みづくりをサポートする「オフィスat」。“女性の感性”にフォーカスを当てた2つの会社のリーダーである、阿部博美さんと佐藤宝恵。今回は、彼女たちがマーケティング業界や広告業界における女性の立ち位置、女性の働き方、女性が輝くことについて熱く語り合いました。
佐藤
広告代理店の営業として、様々な仕事に取り組む中で、潜在的な「女性の力」を、何かに繋げなければいけないと考えるようになりました。ひとつは雇用、つまり女性が活躍できる場所や機会をつくり、女性が持つアイデアや能力を発揮してほしいと。もうひとつは、「生活者として女性の視点」。女性の考え方や視点を企業の商品開発や商品プロモーションに役立てるということです。そんなときにお会いした「オフィスat」さんのWebサイトを見て一目惚れしてしまいました(笑)。まさに自分の思い描いていたイメージがそこにあったんです。
阿部
「オフィスat」では、企業の商品開発やプロモーションなど、目的や課題に応じたプランを企業や行政にご提案。女性心理を科学的に分析し、マーケティング設計に基づいたプランづくりから実行までをトータルでサポートしています。もともと私自身が人材派遣の仕事に10数年勤め、そこで女性のマネジメントに携わっていました。その経験から「女性の力を何かに活かせないか」ということを考えはじめるようになりました。派遣の女性スタッフたちの能力がとにかくすごくて…結婚・出産で辞めていった彼女たちが復職しようと私のもとにやってくるんですが、主婦になった途端、企業からは見向きもされなくなったと。「残業できないんでしょ?」「早く帰って旦那さんと子どものご飯作ってあげてよ」と、結婚して出産したら社会人としての価値がなくなるような扱いをされるようになったと落ち込んでいる人もいました。能力も高い、キャリアもある。子どもを産んだからといって、その人の能力が下がったわけでもないのに、なんだか違和感を感じました。
佐藤
さきほどのヨーグルトの話もそうなんですが、A、B、Cの中で、なぜCではなくAを選んだのか。女性が商品を選ぶときは、ただの感覚ではなく、CMですり込まれていたり、今までの経験から他商品との差別化が自然に行われていたりするんです。その感覚を女性視点として用いることで、商品に重みが生まれますよね。
阿部
女性は常に良いものを選択しようとする無意識のマーケターなんです。日頃からそういう視点で商品を見ていて、消費者に近いところにいるので、的確な意見やリクエストをアウトプットすることができます。例えば仕事で商品開発をする際にも、消費者である受け手の自分もそこに共存しています。新しいアイデアを出さなければいけないときに「これ言ったらまずいかな…」と物怖じする人も少ない。だから今の時代にすごくマッチしていると言えるんですよ。
佐藤
トップダウンの男性の会議に対して、女性の会議はボトムアップというか、各々が自由に発言する井戸端会議のような感じ。ただし、飾らない意見や奇譚のない意見を、ただの商品に対する文句で終わらせるのではなく、わたしたちがビジネス脳を持って、問題に対しての改善点や解決方法をまとめていかないといけません。しっかりと軌道修正しながらゴールに持っていくことが大切です。意見をまとめあげた上でクライアントに提案するのが私の役目だと思っています。
佐藤
時代は「ダイバーシティー&インクルージョン」と言われていて、外国人や障がいのある人など、いろいろな多様性を受け入れて享受し、それを実現させようとしています。男性だから、女性だからと分けて考えるんじゃなくて、想像力を働かせることが重要です。例えば、女性起業家のイベントを企画しようとして、メインの来場者を女性と想定します。その中には当然ママもいるでしょう。そうなるとベビーカーを置くスペースの確保、オムツ替えスペースや授乳室も必要になってきますよね。さらに、女性のことだけを考えるのではなく、車椅子の方のために、車椅子が通るスペースも確保しないといけません。
阿部
まさにその通りですね。私たちは「女性に権利を!」と主張しているわけでもなんでもなくて、もっといろんな人の意見を取り入れ、一人ひとりのことをしっかり考えるべきだと言いたいだけなんです。仕事に望む際も、常にイメージ力・妄想力を持つべきだと思っています。そこの鍵を握るのが、「マイノリティー」を受け入れようという姿勢。基本的に、マイノリティーを理解していない企業のトップが多いような気がします。全体人口の半分もいる女性でさえマイノリティーとしてくくられているのが実情だとしたら、ちゃんと彼女たちの声や気持ちに応えなくては何も始まりませんよね。
佐藤
まだまだ女性が働くことに関しては、一足跳びで解決するものではありません。企業の受け入れ体制や女性の意識改革、もっといえばパパがどこまで育児参加するかなど複合的な要因から変革するものです。完全に環境が整うまでには少し時間がかかるので、さまざまなアイデアや知見を取り入れながら、環境の改善に積極的に取り組んでいってほしいですね。
阿部
今までの日本企業は「フルタイムでオフィスで働く」という価値観しかありませんでした。しかし、フルで仕事してもらうのではなく、ちょっと大変なときだけ人を派遣する、スポット的な方法もありますよね。これからの仕事のスタイルは「はい何時間、時給はいくら」ということばかりではないんですよ。パソコンでテレワークにするなど、フレキシブルな仕事のスタイルを積極的に取り入れていかなければいけません。
佐藤
女性が働くことに関しても、正規雇用・非正規雇用と二分化されがちですが、女性が活躍する方法はまだまだあります。そのヒントがママのままプロジェクトのママアンバサダーです。アンバサダーの女性たちにはぜひロールモデルになってほしいんです。例えば、何かアイデアが欲しいときに5人招集して、ディスカッションしてもらい、しっかり代価をお支払いする。このように、彼女たちのチャレンジの場を作ることで、働くという価値、責任を持つことのチャンスを掴んだことになると思うんです。女性マーケティングチーム「ITAJOMA」が女性一人ひとりの価値を上げて、自己実現の橋渡しになりたいと思います。それがどんどん広がって、「彼女たちみたいになりたい」という女性たちが増え、小さなマンパワーが組織体系になって大きなものを生み出していけばいいなと期待しています。
阿部博美
株式会社オフィスat 専務取締役/NPO法人ママワーク研究所 共同創業者・相談役
大学卒業後に入社した派遣会社の経験を生かし、放送局関連会社に入社し派遣部門を担当。アナウンス講座を立ち上げ、福岡県で初めてアナウンサーの派遣をスタートさせる。ニュースアナ以外にも競艇場の実況中継やMCなどの新分野を切り開きながら、部門責任者を10年務める。その後、広告部門に異動し経験を積んでいく中で、マーケティングを極めようと決心し退社。2003年、女性視点マーケティングの先駆者的存在「HERSTORY」に入社し、2008年に独立し、2014年より「オフィスat」にて、年間延約2000人の在宅スタッフを交え、数々のプロジェクトを進行させてきた。働き方全体を見直し、新たなビジネスモデルの構築を目指す。
佐藤宝恵
ニッコン株式会社 代表取締役社長/ママのままプロジェクト プロジェクトマネージャー
1990年大手測量機器メーカーに入社し、その後結婚を機にニッコン㈱へ派遣社員として入社。2度の出産を経て正社員となり、各種広告戦略・プロモーションに携わるほか、企画全般のプロデューサーやディレクターも務める。主婦、母親の経験をベースに、女性視点のマーケティングに着目し、これまで培った企画力を活かしたプロモーションチーム「ITAJOMA」を発足。企業と女性チームで創りだす新たなPR戦略は、多くの支持をいただき実績を重ねている。また、「ママのままプロジェクト」のプロジェクトマネージャーとして、「働くママのサポート」「女性の活躍」を軸とした活動に積極的に取り組む。