2021.10.05
女性が活躍できる環境づくりを進める大分県。その指針として、庁内各課の支援をとりまとめ、具体的な目標指標を定めた「女性が輝くおおいたアクションプラン2021」を策定。県内の経済団体にも参加を促すことで、女性活躍に積極的に取り組む企業が増え続けています。今回は、本プランを推進する大分県 商工観光労働部長の高濱航さんと、ママのままプロデューサーの佐藤宝恵の対談をお届けします。女性活躍のための施策や取り組みの中で見えてきた課題、「ママのままプロジェクト」に期待することなど、女性が輝く社会に向けてさまざまな視点で語り合います。
佐藤:
働く女性に関する支援、受け入れる企業に対して「女性が輝くおおいたアクションプラン2021」には、女性活躍をサポートする施策が盛り込まれていますね。
高濱:
このプランでは、「働きたい女性への支援」、「働いている女性への支援」、「仕事と家庭を両立できる環境づくり」の3本の柱で、女性が働きやすく活躍できる県づくりを進めています。例えば、「働きたい女性への支援」では、子育て中の女性を対象としたスキルアップ支援などを行っています。今回の佐藤さんとのインタビューの前に、改めて、大分県のママさんの生活環境を想像してみました。「1歳の子どもの預け先に悩む人」や「未就学児を持ち、4年ブランクがある人」、「習い事をしている中学生の子どもを持つ人」、など、置かれている状況は本当に人それぞれであり、それぞれのママが直面している働く上での負担をどう取り除くかに考えを巡らせました。“女性は結婚・出産によって働き続けるのが難しくなる。抱えている負担を解決することがスタート”だと思っていました。ただ、「ママのままプロジェクト」では、“ママだからこそできることがある”とメッセージを発信しているんですよね。この発想は全く持ってなかったです。結婚・出産は女性活躍のためにネガティブなことではないんだ、大分県でも、子どもがいる女性の強みを活かせるようなスキームづくりを行っていかなければいけないと感じました。
高濱:
結婚・出産を機に退職したブランクがある女性も、やはり働きたいと考えている人が多いようですね。
佐藤:
正規・非正規かかわらず、大分県の未就学児を持つ多くの女性が働いているように見受けられます。働き方やスタイルは人それぞれですが、女性が働くことがスタンダードになりつつある今、逆に働いていない女性がプレッシャーや不安を感じてしまうということもあるようで、その点も心配ですね。
高濱:
仕事も家事も完璧なスーパーウーマンをモデルに掲げて女性活躍を推進するばかりでは、気後れしてしまう方もいるかもしれません。家庭と仕事を両立することは、スーパーウーマンでなくてもできると伝えていかなければいけないと感じます。そして、そのような職場環境があたり前に備えられている大分県にしていかなければいけないと思っています。ところで、女性が働くうえで、「休みやすさ」「職場や上司の理解」という声をよく聞きますが、企業の取り組みの現状はどうなのでしょうか。佐藤さんはまだ不十分だと感じますか?
佐藤:
大分県が推し進めている女性活躍推進宣言企業になったからといって、それで終わりではありません。そこで掲げた目指すべきビジョンに対して、継続的に取り組んでいく必要があります。それを手助けするために大分県には「イクボス」や男性家事参画、女性人材セミナーなどのセミナーや研修がたくさんありますが、男性の参加者が少ないのが現状です。男性の意識を底上げする方法として、セミナー参加が多い企業に対して、大分県から承認をもらえる制度を作ってみてはいかがでしょうか。企業にとってもリクルートや企業ブランドのPRにもなります。
高濱:
県内企業の女性活躍への取り組み関しては、しっかりと情報共有しながら成果や変化を追いかけていきたいですね。企業がメリットを感じて、理解するだけでなく、実際に行動してもらうことが大事です。状況が変わらない場合は、おっしゃる通りポイント制度なども一つの手段かもしれませんね。
佐藤:
未就学児を持つママたちの再就職の壁として、子どもの発熱時の急な休みがダントツ1位です。企業側がひとつの業務に対して1人だけを担当付けしてしまうと属人化となり、突発的に休まなければいけない場合に本人は責任を感じてしまいます。例えば1業務2人担当制の「ダブルアサインメント」を導入することで、精神的な負担を軽減し、働きやすい環境に生まれ変わらせることができます。
高濱:
雇用のカタチとして、仕事に人を割り当てる「ジョブ型」と、従来の日本型ともいわれている人に仕事を割り当てる「メンバーシップ型」の2つの考え方があります。生産性向上の文脈でジョブ型が注目を浴びてきていましたが、コロナもあり変化が大きく先の読めない時代では、変化に強いメンバーシップ型の方が良いのではないか、と再評価されてきています。ただ大事なのは、ジョブ型、メンバーシップ型と二分するのではなく、コロナのような社会変化のみならず、職場内の日々のちょっとした変化に対しても、個人の能力でカバーする前提ではなく、組織側の仕組みで上手くカバーする仕組みを備えておくことが大事だと思います。突発的な休みに対しても慌てずに対応することができます。企業はもちろん、私たち行政も変わっていかないといけません。
佐藤:
まずは、雇用形態の多様性を経営者が知るということが必要ですね。人口オーナス期と言われる昨今、フレキシブルな雇用形態を取り入れ、多様性のある人たちを組み合わせることで、効率性の高い少数精鋭型の組織が生まれるのではないでしょうか。
高濱:
多様性に着目したダイバーシティから、その多様性を強みにつなげていくインクルーシブの考えが大事ですね。また、行政だけで社会課題を解決する時代は終わりました。ビジョンを掲げ、それに共感するプレーヤーが一緒に価値を創造していく時代に入っています。行政と民間企業が垣根を越えて協力することで、さらなる価値を生み出すことができます。色々なものを組み合わせることで実現できることも多いですから。ママのままに倣って、物事のポジティブな面を上手く引き出す。そのための障壁があれば、除いていくという考え方を女性活躍の分野のみならず、他の行政分野でも見つけていきたいと改めて感じました。今後もママのままプロジェクトの取り組みに期待しています。
佐藤:
ありがとうございます。「ママのままプロジェクト」は、様々なジャンルの情報を掲載しています。それに対して好きな人が好きな時にキャッチアップできれば良いと思っているので、あえてターゲティングはしていません。冒頭で高濱部長が言われた通り、子育て中の女性もひとくくりにできないと考えているからです。これからもその人それぞれ自分らしく自信を持って前に進んでいけるような情報をしっかりと行き届かせ、チャレンジができる機会をつくっていくことがミッションだと考えます。