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“父親であること”を楽しんで<br>子育てしやすい社会を目指す

2023.10.24

“父親であること”を楽しんで
子育てしやすい社会を目指す

大分県では“子育て満足度日本一”を目標に取組を行っていますが、子育て満足度をアップさせるためには、父親の積極的な子育て推進が不可欠。そこで県では今年度から「おおいた子育てパパ応援事業」として、各市町村の子育て支援拠点や企業と連携し、父親の積極的な家事育児を推進するさまざまなプロジェクトを展開しています。今回は、本事業に取り組む大分県福祉保健部こども未来課 子育て支援班 主査の都留翔平さんに、事業の全貌や今後のプロジェクト、展望などを聞きました。

父親の家事・育児参加率、
47都道県中46位

―大分県の父親の家事・育児参加率の現状を教えてください。

総務省が5年に一回実施している「社会生活基本調査」によると、令和3年の大分県における男性の家事平均時間は84分となっています。全国平均の114分と比べるととても低く、47都道府県中46位という結果になってしまいました。また、県でも毎年「子ども・子育て県民意識調査」というアンケート調査を実施しているのですが、令和4年度の調査では「父親の平日の家事時間0分」が約4割という結果に。こうした背景もあり、大分県全体で父親の積極的な家事・育児を推進するため、「おおいた子育てパパ応援事業」を実施することとなりました。

―父親が子育てに関わることでどのような効果が生まれますか?

男性が積極的に子育てに関わるほど、子どもの出生数増加につながるというデータがあります。また、働くママの話を聞いてみると、「2人目を決意したのは、パパが家事・育児に積極的に参加してくれるから」という声も聞かれました。幼少期に父親が子どもとしっかり向き合う時間を取ることが、思春期の心の安定にも寄与するといった話もあり、色々な面からも父親が子育てに関わる意義は大きいと思われます。



―県ではこれまではどのような事業を展開してきたのですか?

これまでは、「おおいたパパクラブ」さんやNPO法人ファザーリング・ジャパンさんにご協力を頂きながら、子育てパパのコミュニティづくりを中心に支援してきました。父親の役割に関する講座や、お子さんと一緒に参加できるワークショップなどを通じて、父親としての子育てへの向き合い方を学ぶ機会としたり、悩みを分かち合う仲間と出会う場づくりとしてきました。

―参加したパパからはどのような感想が聞かれましたか?

多くのパパから「参加してよかった」との声をいただきました。講座で知り合った人に自分の悩みを相談してみると、「みんな同じような悩みを抱えている」「なんて小さなことで悩んでいたのだろう」など、たくさんの気づきを得る機会になっているようです。親子向けのイベントに参加してお子さんの喜んでいる姿を見ることで、自分自身も楽しさや充実感を得る、また同じ立場のパパたちとの交流を通じて、子育てをよりよくしていこうと意識を高めていく、そんなプラスの循環のきっかけになっているとありがたいです。

“父親であること”を楽しんで<br>子育てしやすい社会を目指す

既存のプログラムをベースに
「プレパパ講座」など新たな取り組みも

―今年度から新たに始まるプロジェクトはありますか?

これまでのコミュニティづくり支援に加え、今年度は色々なメニューを拡大しています。例えば、これからパパになる人を対象にした「プレパパ講座」を新たに展開しています。お子さんが生まれた直後は、とにかくバタバタでご夫婦とも疲れ果てる日々が続くかと思います。夫婦で意識をあわせて子育てしていくことが大切なのでしょうが、なんとなく、どこかすれ違っているような…。私含めそういった経験を多くの方々がされているように、だからこそ生まれる前から、パパが身につけておくべき心得や、周産期の女性のメンタルヘルスを学ぶ機会としてプレパパ教室をご活用頂き、夫婦で意識をあわせた、心豊かな子育てにつなげて頂ければという思いがあります。今年度は、独自で両親学級を実施している自治体と連携した開催となっております。



―民間企業向けに、出前講座も行っていると聞きました。

当事者であるパパが意識を変えるだけでは状況が変わらない場合もあります。実際、大分県における男性の育児休業取得率は、令和4年度調査で13.8%とまだまだ低いのが現状です。ただ、様々な業態の県内企業にお話を聞く中で、その多くが人材不足を課題として感じており、その背景には離職率の高さも相当程度あると感じます。今年度の出前講座では、部下ヂカラ講座等を通じて、パパ自身が仕事上でできることに気づく機会をつくるとともに、その企業の雰囲気や管理職の方の意識もあわせて変えていく一助になればと考えています。こうした取組の浸透が、結果的に社内の仕事効率を上げ、パパにとっては家庭とのワークライフバランスを充実させていくことに、また企業にとっても社員の定着による人材確保につながっていくことを期待しています。

―講座やワークショップの開催情報をまとめた冊子やWEBはありますか?

大分県では、令和4年12月に「子育てのタネ」という子育て支援ポータルサイトを公開しました。イベントやライフステージごとの子育て情報、パパとママ、妊娠・出産を控えた人など、すべての人に役立つ情報をまとめたサイトです。「おおいた子育てパパ応援事業」の動きについても、今後はサイト内で発信していきたいと考えています。

子育てのタネ:https://kosodatenotane.jp/

大分県全体を巻き込んで
パパの子育てを応援する取り組みを

―この事業を通して感じたことは?

私自身、子どもが2人います。私も日々悩みながら生きていますので…「ママの悩みやストレス」、「パパのやるせない気持ち」、どちらも痛いほどわかる気がします。ただ感覚的に感じるのは、夫と妻で根本的に考え方が対立しているのではなくて、どちらも子どもの幸せ、家族の幸せを願ってのことだと思うので、そのちょっとしたボタンのかけ違いが整うだけで、その家族にとってすごくいい形の子育てになっていくんじゃないかと。面白いことに、国や県、また民間の意識調査でも、男性の子育て推進の一番の障壁として「夫婦間コミュニケーションの欠如」がトップにあがってきます。これは私自身にとっても身にしみる課題ですし、男性の子育て推進のキーワードはこれなのかなと強く感じるところです。今年度は様々な切り口でメニューを展開していますが、どれも行き着くところは夫婦間コミュニケーションの充実という面もあるかもしれません。



―パパへのメッセージをお願いします

パパにはパパの苦悩があると思います。やるせなさも情けなさも、たくさんあると思いますが、そういう感情も含めて、父親であることを味わってみるのもいいのかなと思います。子育ての渦中にいるときはなかなか気づかないのですが、ある瞬間にふと立ち止まった時、自分の方が子どもに育ててもらっている感覚が大きいですね。妻に対してはもちろん、子ども達に対しても「ありがとう」の気持ちを忘れないように、戒めています。それぞれのご夫婦で子育ての形があるかと思いますが、「育てなきゃいけない」という義務感で子育てが終わってしまわないように、せっかく与えられた色んな思いをぜんぶひっくるめて楽しんでもらえるといいのかなと思います。きっと、涙もろくなります。

―今後の目標は?

私含め、こども未来課は子育て真っ最中の職員がたくさん在籍しています。子育ての当事者として、パパとママの双方に寄り添いながら、それぞれの家庭にとってよりよい子育てのあり方に近づけるようなサポートをしていければと思っています。ひとつひとつの家庭内に「ありがとう」が広がっていくことが、県内全体の機運づくりにもつながっていくのではないかと考えています。

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