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女性の働き方を考えるトップ座談会<br>vol.1(前編)

2024.05.14

女性の働き方を考えるトップ座談会
vol.1(前編)

大分県では、女性の個性と能力が十分発揮される社会の実現を目指し、多くの企業が女性の活躍を推進しています。今回は、女性が自分らしく働き続く環境づくりに励む県内企業3社とママのままプロジェクト代表の佐藤宝恵が「女性の働き方」をテーマに座談会を実施しました。社内の環境改善に至った背景や具体的な施策、今、社会に求められている企業の在り方について、前編・後編に分けてお届けします。

環境改善に至ったきっかけとは
3社のこれまでの歩みを振り返る

ママのままプロジェクト 佐藤(以下、佐藤(宝))
ママのままプロジェクトでは、大分県の女性活躍に関する情報やママに役立つ情報を週に1本届けています。今回は、多くの女性がイキイキと働いている県内企業の代表の皆さまに、これまでの歩みや具体的に取り組んだ施策、今後のビジョンなどをお聞きできればと思っています。本日はよろしくお願いいたします。

大分第一交通株式会社 早瀬(以下、早瀬)
弊社では、タクシー事業をはじめ、今年の秋就航予定のホーバークラフト事業も展開しています。もともと男性中心の業界ということもあって、以前は女性ドライバーは少なく、女性従業員は内勤の事務員のみ。事業所内も男性の使い勝手の良い施設や設備となっていました。女性ドライバーの増加に伴い、本社の代表から「男女別のトイレをつくるべきだ」との指示があり、トイレの改装がスタート。全社的に働きやすい環境整備を進めているところです。今日は業界の異なる皆さんのお話を参考にさせていただきたいと思っています。



株式会社ドコモCS九州 大分支店 原野(以下、原野)
私は、大分支店に着任して2年目になります。ドコモのスマートフォンを中心に、動画配信サービスやポイントプログラムおよび各種スマホ決済など、みなさまのスマートライフ実現のために多角的に事業展開しています。女性活躍推進に加えて、働き方改革にも積極的に取り組んでいます。本日はよろしくお願いします。



株式会社 豊後企画集団 佐藤(以下、佐藤)
弊社は、不動産業を中心に学習塾や旅行代理店、相続ビジネスなど、幅広く事業を展開しています。不動産業界もどちらかというと男性社会ですね。私が代表になった17年前は、従業員は50人ほどで、7割ぐらいは男性で、残り3割が女性。代表就任当初から男性中心の業界イメージを変えたいという思いを感じていました。



佐藤(宝)
その思いに至った具体的な出来事があったのですか?

佐藤
私の父が経営していた頃は、女性は結婚したら退職するのがスタンダードでした。しかし、会社を引き継いだころから女性も男性と同じような環境で仕事をすることが当たり前の社会を目指す時代の流れに。とはいえ、優秀な女性が結婚や子育てを機に辞めてしまうことが多く、もどかしい思いをすることがたびたびありました。「彼女が働き続けられるためにはどうすれば良いのか?」との想いから、無意識の中で会社をアップデートしていったら、結果的に働きやすい環境ができあがっていました。“女性のために”というよりも、優秀な人材が長く働けるための施策を講じてきました。

女性が活躍できる企業を目指し、
具体的に取り組んだ施策は?

佐藤(宝)
さまざまな業界で女性が活躍できる環境の整備などが実施されていますが、3社独自の制度や取り組みがあればお聞きしたいのですが、いかがでしょうか?

早瀬
施設や設備の改善に加え、子育て中の女性や時間に制約がある従業員のライフスタイルに合わせた勤務形態を選べるようにしました。子どもを保育園へ送ってから乗務を開始したり、仕事の合間にタクシーを利用して必要な買い物に行くこともできたりと、乗務員はフレキシブルな働き方が可能です。また、提携保育園があるので、必要があれば子どもを預けることもできます。大阪府や沖縄県では、事業所内に保育施設もあります。また、万が一のタクシー強盗に備えて、車からの110番通報システムや催涙スプレーの常備など、防犯対策も強化しました。トイレや催涙スプレーといった女性目線に立った細かい部分を充実させることのほうが求められているのかもしれません。

佐藤(宝)
男性も女性も関係なく、従業員皆が安心して働くための制度や施策に一つひとつ取り組まれたのですね。働く上での魅力は、求人票でもしっかり訴求されているのでしょうか?



早瀬
求職者が知りたい情報を求人票に記載するのも効果的でした。タクシー業界は歩合給であるケースも少なくありません。固定給制を取り入れているのも女性が安心して働ける要因のひとつだと思っています。一人ひとりの要望に合わせながら制度をカスタマイズしていったことで、皆が働きやすい環境の実現につながったと感じています。

佐藤
早瀬社長がおっしゃるように、私たちも「この優秀な人の困りごとを改善するには?」と解決策を検討し、一つひとつ実施していきました。コツコツと積み上げていった結果が、たくさんの従業員の働きやすさに結びつき、現在、新卒採用の割合においては女性が7割にまで増えました。

豊後企画集団 お部屋ラボ事業部 日出店 店長


佐藤(宝)
その都度解決していったとのことですが、上長や代表とコミュニケーションを取りやすい仕組みがあるのでしょうか?

佐藤
直属の男性上司には言いづらいという意見もあったため、年に一度、私が正社員と面談をする全社員面談という機会を設けています。現在は希望者のみですが、この面談で従業員の声を吸い上げることによって新たな制度が生まれてきました。ただ、ルールをつくるうえで重要なのは、“皆にとって良いものなのか”の見極め。誰か1人が得をするのではなく、会社全体としてのメリットになるのかを慎重に検討しなくてはいけません。ドコモさんは独自の取り組みなどはありますか?

原野
以前よりリモートワークやフレックスタイムを取り入れていましたが、「スーパーフレックス」という制度を取り入れ、働く時間を自由に設定できるようになっています。10時〜15時のコアタイムを撤廃し、個人単位で勤務時間を選択することができます。そうすることで、セミナーへの参加といった自己研鑽の時間の確保や、お子さんの学校行事まで、仕事とプライベートの両立を図る働き方を推進しています。

佐藤(宝)
ドコモさんの場合は、フレキシブルな働き方を実現しながら全国的なロールモデルを参考にして今後のキャリアを描いていけそうですね。オフィスもフリーアドレスになったとお聞きしました。

原野
2024年2月にオフィスをリニューアルしてフリーアドレス化しました。外の景色を見ながら仕事できるハイカウンター席や、ファミレスのようなボックス席といった趣向をこらした席を取り入れています。それまではリモートワークで仕事をする人が多かったのですが、オフィスに出社する従業員が増えました(笑)。80名ほどの従業員がいるのですが、各々がこれまで話したことのない人と会話を楽しみ、新たなコミュニケーションが生まれたと感じています。

帰省単身赴任なので、やはり一番のリフレッシュは業務のない週末に帰省することでしょうか。犬とビーチを散歩したり庭の芝刈りしたり、夫婦でゴルフ中継をTV観戦するのが楽しい時間です。


ランニング大分ではもちろん、出張先でも必ずランニングシューズとウェアを持っていき年間2000キロほど走っています。脚に疲労感がないと不安になります。


休日のゴルフ特に最近は妻とのゴルフが多く、2人でゆっくり一日ラウンドすることがストレス発散にもなっています。

急な休み申請、仕事のフォローには
感謝の気持ちとコミュニケーションを

佐藤(宝)
女性に限らず、子育て中の社員は、急遽なお休みや早退、遅刻などが発生することもしばしば。休みに対する従業員同士のフォローはどのようにされているのでしょうか?

早瀬
事務員の急な休みに対しては、他の従業員にカバーしてもらうことはありますが、ドライバーの場合は、休んだ人の代わりに誰もが乗車業務を担当することはほとんどありません。業務をするにあたって、前回の運転からの休息時間など、行政が定める条件があるためです。また、お客様の命に関わる仕事なので、無理に出勤させて事故が起きてしまったら、会社の信用問題に関わりますから。乗車予約が入っていれば、違うスタッフを派遣するので、ドライバーの休みに関してはそれほど大きな問題はありません。

大分第一交通の女性乗務員


佐藤(宝)
小さなお子さんを育てている場合、自分のコンディションだけ気を付ければいいのではないので難しい部分もありますよね。また、ダイバーシティ社会と言えど、男女の性差として女性の健康面は考慮しなければいけない事項の1つだと感じています。最近では「女性健康推進」を掲げている企業が多く、生理休暇や妊活のための休みを男性の上司に申請しづらいという声から、「F休(エフキュウ)」という休暇を設けている企業もあるようです。女性の健康に留意した制度はありますか?

原野
「F休」は初めて聞きましたが、同じ休暇は弊社にもあります。それ以外では「ライフプラン休暇」という制度がありまして、年度末日で失効になる年次休暇のうち3日間を上限に積み立てることができます。最大40日間積み立てることができ、リフレッシュ(旅行など)や育児、介護など、ライフイベントに応じて休暇の取得が可能です。従業員からの申請時に、システム上のメニューから理由を選択するため、休暇の理由を細かく聞くこともありません。

打ち合わせをするドコモの社員


佐藤(宝)
そういった休みの申請に対して、従業員から不平や不満が聞かれることなどはありませんか?

原野
そういった話はあまり聞きませんね。普段から従業員同士でコミュニケーションをとっているので、急な出来事が生じても、しっかり業務引き継ぎができているのではないかと思います。

佐藤
皆さんも言われていますが、早退や遅刻だけでなく、不妊治療など、社員を雇う以上突発的な休みは避けられません。弊社も特に女性のコンディションに留意した休暇は設けてはいません。ただ、わざわざ名称化しなくても、従業員同士で解決してくれています。産休、育休含め、何かが原因で休みに入るとき、却下することはありませんし、フォローする側は不平不満は言いません。しかし、そこに休む側の“感謝の気持ちがあること”が大前提です。休む側が、「子どもがいるのだから休めて当たり前」。「産休・育休は当然の権利だ」という姿勢でいると、フォローする側にも不満が生まれます。日頃から、感謝の想いと相互理解の気持ちを持ち続ける社内の風土を作っていくことが大切だと思います。

佐藤(宝)
突発的な休みが発生しても、誰もがストレスなく働き続けるためには、常日頃からのコミュニケーションと、休む側の姿勢や気持ちが大切ということですね。



【後編へ続く】
後編では、社会でも注目される「男性育休」や「女性管理職」の問題、各社の状況や取り組みの紹介、女性活躍推進のために、経営者が大事にしたいマインドについて語り合います。後編もお楽しみに!

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