
2026.01.06
2026年4月に9年目を迎える「ママのままプロジェクト」。これまで、大分で子育てをするママたちを中心に、家族や地域社会に向けて、役立つ情報や共感できるメッセージを発信し続けてきました。新年最初の記事では、「ママのままプロジェクト」代表・佐藤宝恵が、WEBメディアとしての取り組みをはじめ、毎年開催している「ままいろフェスタ」や、女性の就労支援事業など、これまでの歩みを振り返りながら、「ママのまま」が大切にしてきたこと、そしてこれから果たしていきたい役割について語ります。
「ママのままプロジェクト」がスタートした8年前と比べると、今はママたちのコミュニティが大きく増えたと感じています。立ち上げ当初は、ママたちが「自分たちで何かやってみよう!」と動ける場が、今ほど多くありませんでした。あったとしても、小さなサークルのような集まりが中心で、外に向けて広がっていく力はまだ弱かったように思います。SNSも今ほど身近ではなく、自分たちの想いや声を届ける手段が限られていたことも、大きかったのではないでしょうか。

8年前に開催したキックオフの様子その結果、前向きな活動よりも、不満や愚痴をこぼす場になってしまうことも少なくありませんでした。そこで私が感じていたのは、多くのママたちが「私なんて…」という気持ちを、心のどこかに抱えていたということです。彼女たちには能力がないわけではありません。ただ、何から始めればいいのか分からない。やってみたい気持ちはあるけれど、失敗が怖い。家族を優先するあまり、自分のことは後回しになる。そんな無意識のブレーキが、ママたちの行動を止めてしまうのです。
その空気が少しずつ変わり始めたきっかけのひとつが、「ままいろフェスタ」でした。特別な人ではなく、ごく普通のママたちが実行委員として表舞台に立つことで、周りのママたちも「私にもできるかも」と実感できるようになりました。実行委員が増えていったのも、その表れだと思います。また当時は、「企業に応援してもらう」「行政の仕事として関わる」といった考え方自体が、ママたちにとってあまり身近なものではありませんでした。でも、そうした選択肢を知ることで、自分たちの活動をもっと広げられると感じてもらえたのではないでしょうか。広告代理店であるニッコンだからこそ、その道筋を具体的に示せた部分もあったと実感しています。

最近では、実行委員メンバーが自主的に動いてくれるようになり、その行動力には目を見張るものがあります。今年度の「ままいろフェスタ」では、経費の管理や施工業者さんとのやり取りも、すべて実行委員が担ってくれています。少しずつ任せられるようになってきたのは、これまで積み重ねてきた成果だと思っています。

企業や行政と関わることで、彼女たちの活動の幅は大きく広がります。それによって、「ママたちにできること」は一気に増えていきました。ママたちの可能性が、理想や夢ではなく、“現実の選択肢”として見えるようになってきたのではないかと感じています。


ここ数年で、企業側のママに対する見方は大きく変わってきました。ママたちは今、生活者としての視点と発信力を持つ存在として、広告や広報の重要な担い手になりつつあります。ママのままプロジェクトは、ママたちのコミュニティであると同時に、企業や行政とつながるプロジェクトでもあります。私はこの関係を、単なる業務の受託ではなく、同じ方向を向いて進む伴走型の取り組みだと考えています。
行政事業などは「もれなく、くまなく」を前提に設計されますが、そのまま実行すると、本当に必要な人に届かないこともあります。だからこそ、受託する側が現場のリアルを見て、どうすれば伝わるのかを整えていく。その役割を私たちは担っていると思っています。
例えば、大分県女性が輝くエンパワメントセミナー事業「will be」の修了式では、涙を流す参加者も少なくありません。私は、その瞬間こそがエンパワメントだと感じます。目に見える成果ではなくても、心の中で何かが動く。その変化にこそ意味があると思っています。

女性活躍が語られる中で、一歩を踏み出せない層にきちんと届く場は、決して多くありません。「will be」には、そうした人たちをそっと後押しする役割があるはず。このプログラムは、就職や再就職といった明確なゴールを目指す場所ではありません。まずは、いろいろな選択肢を知り、自分の世界を広げること。そのきっかけをつくることを大切にしています。参加者の多くは、申し込むだけでも勇気が必要な方たちです。5回のプログラムを通して少しずつ関係性が生まれ、自分の中の変化に気づいていきます。最後に今後のビジョンを宣言してもらうのは、その気づきを言葉にしてお守りとして存在させておくためです。
人が変わるためには、何かしらのアクションが必要です。ゴールは人それぞれで構いません。「will be」で大切にしているのは、半歩でも前に進もうと思えること、そして「私だけじゃない」と思える仲間に出会うことです。規模を20人程度に絞ったことで、参加者同士やスタッフとの距離も近くなり、最終回には感情が動く場面が自然と生まれるようになりました。


大分県 働きたい女性と企業とのマッチング支援事業「おしごとフェスタ」でも、企業側の変化が見えてきました。最初は戸惑いもありましたが、回を重ねるごとに、ママたちに合わせた見せ方や関わり方を工夫する企業が増えています。また、アドバイザーが企業ブースを回ってヒアリングを行い、その内容を県への報告としてまとめています。これは行政にとっても価値のある情報で、信頼の積み重ねにもつながっています。



私が何より大切にしているのは、参加者が気持ちよく過ごせることと、関わるメンバーが経験を積めることです。30代から60代までのメンバーが同じ目的で集まり、志を共にし、振り返りを重ねながら改善していく。ママのままプロジェクトを軸に、世代を超えた新しいつながりが生まれていると感じています。
これまで私たちは、「情報の発信」と「チャレンジの場をつくること」を軸に活動してきました。その中でも、ママのさまざまなライフスタイルを紹介する「ママスタイル」は、100回近く続くコーナーです。私はこのシリーズを「ママのままプロジェクト」の背骨だと思っています。働き方や子育ての悩み、企業の制度、行政の制度など私たちが伝えたかったことが、100人のライフスタイルの中に自然と詰まっています。
スタートから8年が経ちましたが、ママのままの本質は変わっていません。ターゲットの軸は一貫して「働くママ」。子どもやパパ、企業ではなく、働くママ自身を主役にする。その姿勢を立ち上げ当初から大切にしてきました。女性の価値や視点を、きちんと社会に示したい。その想いは、今も変わらないミッションのひとつです。

2026年に向けて注力したいのは、「多種多様なチャレンジの入口をつくること」です。組織で働く人には次のステップを目指す場を、専業ママには何か行動を起こすきっかけを。それぞれの立場に合ったチャレンジの入口をつくりたいと思っています。以前は「チャレンジの場をつくり、伴走支援までした方がいい」という声もありました。でも私は、そこの必要はないと考えています。大切なのは、自分の足で歩き始めるためのスタート地点を用意すること。そこから先は、本人の歩幅と速度でいいと思っています。
これまで多くのママたちと出会い感じることは「考えすぎてしまう」傾向があるということです。子どものこと、家族のことを思いながら日々過ごしていると、自然と安定を望みリスクを避ける思考になります。「私は後でいいや」と、自分のことを後回しにしてしまう。そんなブレーキが、無意識にかかっているのです。でも、新しいレシピを見て「ちょっと作ってみようかな」と思うように、もっと気軽にチャレンジできたら嬉しいですね。「何か挑戦したい」と言っていても、なかなか動けない人もいます。それを良しとするのか、背中を押すべきなのか、悩むこともあります。それでも願うのは、安全を求めて補助輪を付けて走るのではなく、一度それを外して思いきりこいでみて欲しい。怖いことも多いし、転ぶかもしれない。でもその先にはきっと違う景色があると思っています。
ママたちは、子育てを通して困難を乗り越える力を持っています。立ちはだかる高い壁もありますが、それでも一歩を踏み出す力は、きっとある。だから2026年も、初心に立ち返って、チャレンジの場をつくり続けたいと思っています。大きなゴールを決めなくてもいい。まずは一歩を踏み出せる入口を、これからもつくり続けていきたいと考えています。

