5年前の取材は、本当の私を見つめ直す
大きなきっかけに
安達:中田さん久しぶりです。お元気でしたか? 以前取材させていただいたのは2021年でした。ちょうど5年前ですね…。月日が経つのは早い!
中田:お久しぶりです! はい、元気でした。本当にあっという間の5年でした。当時はまだ小さかった子どもたちも大きくなって、今はもう中学2年生と小学5年生です。生活も、仕事も、気づけば随分と変化しました。
安達:可愛らしい雰囲気は変わらないね。30代から40代になって体調の変化とか感じる(笑)?
中田:いえいえ…そんなことないですよ(照れ笑い)。仕事が変わって、体を動かすことも多いからか年々元気になっている感じです。きちんと土日がお休みになったということもあるかな?
安達:それはよかった! 中田さんが37歳の時に取材させてもらったママスタイルの記事を読み返したんだけど、コロナ渦で勤めていたホテルの休業中に何か勉強をしたいと参加してくれてた「キャリア形成セミナー」で見かけたのが取材のきっかけだったよね。最後の発表の時に泣いてたのが気になって、それで取材をお願いしたんだけど…。改めて、当時の記事への反響はどうだった?
「キャリア形成セミナー」修了式での中田さん
中田:そうでした。思い出しますね…。あれから、私の働き方も大きく変わりました。それは、あの取材がきっかけと言っても過言ではないです。記事の反響は想像以上でした。同級生やママ友があの記事を読んでくれて「自分のことみたいだった」「気持ちがすごく分かる」という声をたくさんもらいました。自分でなんとかして乗り越えようとしている姿に共感してくれたんだと思います。
安達:中田さんと一緒で、復職のブランクの不安や、社会復帰の辛さに共感するママがきっと多かったんだね…。
中田:みんな表には出さないけど「ママとしての壁」にぶつかっていて、同じ境遇の女性がたくさんいることを知りました。私自身も、ママたちが抱える悩みや気持ちに気づかされましたね。
安達:取材後のコロナ渦明けにホテルに復職されてから、どんな変化がありましたか?
中田:職場環境は整えられていたし、人間関係も良好でした。でも、私の中にどうしても拭えない違和感があって…。
安達:どんな違和感?
中田:働く環境は良くなったのに、なぜかずっと不安というかモヤモヤがあったんです。記事を読み返したとき、その時の自分に違和感を感じて、この違和感は何?ってずっと考えてたら「変わってないのは自分だけかも」って気づいたんです。環境や周りの人たちのせいにしていたけど、本当はちゃんと向き合えてなかった自分自身が原因だったなって…。
安達:記事を通じて、俯瞰で自分を見つめることになったんだね。
中田:苦しさの原因って、私自身が作り出していたんだと分かったんです。感情で仕事をしてしまうところや、ビジネスとして割り切れない部分とか、自分の思い込みが苦しさの原因だって気づいて…。見たくない自分に向き合わないと、ずっと同じことを繰り返すなと。あの記事は自分を見つめ直す大きなきっかけになりました。
自分に向き合って見つけた
キャリアコンサルタントという仕事
安達:そこから、キャリアコンサルタントの資格取得を決めたんですね。昨年11月に取材で訪れた「おしごとフェスタ」の会場で、声をかけてくれてびっくりしました。就職アドバイザーのお手伝いをしてくれてたよね。キャリアコンサルタントを目指したきっかけは?
2025年おしごとフェスタの様子
中田:私と同じ境遇で苦しむ人たちに寄り添える仕事ってどんな仕事?って考えるようになって、それがキャリアコンサルタントという仕事だったんです。転職を考えている時、もしかしたら職場で寄り添ってくれる人が一人いるだけでも違うんじゃないかって…。「自分の思い込みをちゃんと知りたい」「仕事として人と向き合える力を身につけたい」って、自分に向き合うためでもありました。ホテルで勤務しながらキャリアコンサルタントの資格を取得しました。
おしごとフェスタでキャリアアドバイザーとして活躍する中田さん
おしごとフェスタスタッフ集合写真
安達:現在は具体的にどんな仕事をしてるんですか?
中田:大手企業の子会社で、就労支援員として障害者就労支援のお手伝いをしています。発達障害や、心の病気を抱えている方々が社会でちゃんと働けるように、一緒に仕事をしながら業務のプランニングや支援計画や管理、指導をしながら、安定して働ける環境を整えるサポートをしています。
安達:仕事をする上で大切にしていることは?
中田:労働って、対価が発生する以上は責任も伴う…。会社のルールもあるから、そこを曖昧にしないことが結果的にその人のためになると思っています。「企業の一員として働く」という視点を大切にして、時には心を鬼にして指導することもあります。「できると思っているからこそ、伝える」。優しさだけじゃなく、可能性を信じ、伝える厳しさも大事にしています。
同じ景色を見ながら
同じ目線で伴走していける存在に
安達:どんな経緯で、キャリアコンサルタントとして今の仕事が決まったんですか?
中田:キャリアコンサルタントの面接で「あなたは資格を活かして何がしたいですか?」と質問された時、「障害者の人たちが社会で安心して働けるよう、企業と障害者の方達を繋ぐ仕事をしたい」という話をしたんです。難しい仕事だと思っていたので10年先のビジョンとして掲げてたんですけど、縁があって今の企業の方に声をかけてもらって。トントン拍子で話が決まり、それがきっかけでホテルのお仕事を辞めることになりました。
安達:それが、今の障害者就労支援のお仕事に繋がったんですね。5年前の取材の際「隣に寄り添える存在として誰かの力になれたら…」って話してたもんね。それはずっと、中田さんの中で温められてたんですね。
中田:5年前に話した時の〝寄り添う〟は、すごく漠然としてたんです。でも今、障害者支援をしていく中で、同じ景色を見ながら同じ目線でその人たちと伴走していくことが寄り添うことだと明確になりました。皆さん、それぞれに高い能力があるのに、強いこだわりがあるから社会に馴染みにくいという人たちもたくさんいるんです。それを見て、生きづらかった過去の自分と重なったんです。だからこそ向き合いたいと思えたし、この人たちが社会に出ていくための橋渡しをしたいと思いました。
安達:どんな時に仕事のやりがいを感じますか?
中田:その人たちの強みを見つけられた時はすごくワクワクします! 本人たちも気づかなかった才能や長所が、私が考えた支援計画と合致した時は本当に嬉しいですね。対話をして、観察や分析をすることがとても大事になってきます。手に取る商品や、興味を持つ理由を深掘りして分析してた前職の接客業に通じるものもあります。パソコン作業も多いですけど、作業着を着て、安全帽をかぶって安全靴を履いて、肩を並べ汗かきながら一緒に仕事をすることも大切にしています。
安達:行動した先の「今」ですね。勉強は難しかった?
中田:もう一回学校に行った、というくらい勉強しました。大人になってからの仲間との学びも本当に楽しくて、とても充実していました。人の特性を深掘りしたり分析したりするのが、私はたぶん好きなんだと思います。
安達:これまでの接客業の仕事の経験も、今に繋がってますね。周り回ったけど、過去の中田さんが今の中田さんを形成している気もします…。5年前よりも随分強くなったよね!
中田:はい!強くなりました。見たくない自分にきちんと向き合うことができたからだと思います。キャリアコンサルタントの仕事の中でも、感情的になったり、人に引っ張られたり、客観視できず視野が狭くなる自分の弱みを見つけることができました。自分に向き合うことで、やっとスタート地点に立てたんだと思うんです。「ママスタイル」の取材がきっかけで、嫌いな自分に逃げずに向き合ったからこそ「今」があるなって…。そこからスタートすると、ブレなくなると思うんですよね。人を羨んだり、他責の視点もあったけど、今は「自分はどうなの?」と常に自分に問いかけ、その時に生まれた「好き」という自分軸を大切にすることができているように感じています。
人を支援する領域で
学びを深め続けたい
安達:今後の目標は?どんな自分であり続けたいですか?
中田:時代は常に変化していくので状況も変わるかもしれないですが、方向性が見えてきて、軸はできたかなと思います。人の支援の領域で、学びを止めずいつまでもフットワークの軽い自分でありたいです。
安達:ご家族のサポートも大きいんじゃないですか?
中田:はい、いつも応援してくれてますね。夫はいつも私を肯定してくれ、背中を押してくれてます。子どもたちも大きくなって「何かを学びたい」という気持ちも生まれ、それも嬉しいですね。
安達:5年前の自分に何か伝えたいことは?
中田:あなたが今足りないものはちゃんと見つかるよって伝えてあげたいです。でもそれには自分に向き合う時間が必要だよって。「自分の違和感に気づいて、それを見逃さずに動いたからあの時の私がいるから、変われたよ。ありがとう」と言ってあげたいです。
安達:また5年後の自分が楽しみですね。これからのキャリアを考えているママたちに伝えたいことは?
中田:まずは「自分を知ること」。自分と向き合うことを恐れずに、そこをスタート地点にして一歩踏み出してほしいです!
撮影場所/10 COFFEE BREWERS(大分市中央町)
5年前、立ち止まりながらも前を向こうとしていた中田さん。5年後の今、彼女は「自分自身と向き合う強さ」を手にしていました。ママスタイルの記事で自分を俯瞰して見ることで、何かの違和感を感じ、その違和感の原因を「自分と向き合うこと」で見つけ、そこから中田さんの新しい世界が広がりました。今は、人の特性を観察すること、分析すること、そして寄り添い伴走する好きな仕事に出会えました。表に立つ接客業とは違い今は完全に裏方のお仕事ですが、分野は違えど、5年前の中田さんがきっとベースになっていると思います。ふんわりとした可愛い笑顔は健在だけど、芯の強さがプラスされた中田さん。遠回りした方が強い根っこが張れるんだなと、改めて感じました。中田さんのこれからがまた楽しみです!