2018.04.01
今回のママ:
岩本知佳さん・36歳・大分市出身・大分市在住
(小学校6年生・4年生・幼稚園年中・保育園に通う4児の母)
学校法人 道徳学園 勤務
大分市野田にある「のだ山幼稚園」の敷地内に4月1日に新しくできた「わくわくの森保育園」。人気の幼稚園が手がけるとあって、ママたちの注目を集めている。ここで主任保育士を務めることになった岩本さん。4人の子育てをしながら、初の「主任」という大役に日々奮闘している。
大分で自分らしく生きるママたちのこれまでを綴るインタビューシリーズ。
今回は、「わくわくの森保育園」の主任保育士を務める岩本知佳さんのストーリー。
自然に囲まれ、森や畑、動物と触れ合いながら子どもの豊かな感性を育む幼稚園「のだ山幼稚園」。人気の幼稚園だということは知っていたが、澄んだ空気の中、開放感ある広大な園庭でのびのびと走り回る子どもたちの姿を見て納得した。この敷地の一角に、今年の春に待望の保育園「わくわくの森保育園」が開園。保育園の主任保育士を務める可愛らしい雰囲気の岩本さんは、実は4人のお子さんを持つ現役ママだというから驚いた。
幼いころ、卒園アルバムに「将来の夢は幼稚園の先生」と書いていたという岩本さん。年長の時の担任だった先生が、厳しくも優しい愛情深い先生で大好きだった。それからは一途に幼稚園の先生を目指してきた。別府大学短期大学部の初等教育科を卒業後、保育園に就職するが、結婚を機に退職。その後、子どもにも恵まれ、1番目の子が4歳、2番目の子が2歳の時にのだ山幼稚園で仕事復帰を果たす。
「学生時代、のだ山幼稚園に実習で訪れていて、素敵な幼稚園だなぁという印象が残っていました。だから、子どもの幼稚園はここにしよう!と決めてたので、上の子の入園と同時に私も先生として復帰したんです。ママとして、先生として関わることになりました。初めての仕事ばかりで覚えることも多くて、家事も思うように回らないし、最初は子育てと家庭と仕事を無我夢中でこなしてた感じです。今も必死なんですけど(笑)」。
毎日をこなすのに精一杯だった日々。思うようにいかないことも多く、泣きながら仕事に子育てに奮闘する毎日だった。当時2歳だった一番下の子を保育園に預け、泣く姿を背に「私は何のために仕事をしているんだろう…」と思うこともあった。そんな時、岩本さんを救ってくれたのが保育園の先生の存在だった。泣いた後、すぐに元気になったことや、お友達と仲良くしていたことなど、子どもの一日の様子を事細かにノートに書き留めてくれていた。お迎えに行った時は岩本さんにこんな言葉をかけてくれた。「さすがですね。素直なお子さんで素敵です」。
辛い時も、この先生の温かい言葉に癒された。「子育ては出来て当たり前。逆に出来ないと責められるもの。自分の子育てって褒めてもらうことがないから、その言葉が本当に嬉しくて毎日の救いになってました。でもその先生が体調不良で突然辞められて…。先生にお礼を伝えたかったのに会えなくなって、私泣いてしまって。あの経験があるから、今度は私が毎日頑張っているママたちに寄り添える、そんな存在になれたらって思うんです」。
この話には後日談がある。その2年後、会えなくなった保育園の先生が、のだ山幼稚園の預かり保育の先生として再就職し、再会を果たしたのだ。岩本さんは当時の感謝の気持ちを伝えることができ、また保育園の先生は子どもたちの成長を見届けられなかったという後悔の気持ちを、岩本さんのお子さんとの再会で払拭できたそうだ。偶然の再会は、岩本さんにとっては必然の出来事だった。その後、さらに2人の子どもに恵まれ、産休・育休を2回取った後、復帰し今に至る。
仕事が終わったらすぐ帰宅し、夜ご飯の準備をして子どもたちをお風呂に入れ、子どもたちと一緒に就寝。片付けができなかった時は朝4時に起きて片付け。スマホでお笑い動画を見ながらお皿を洗う一人の時間が、今のリセットボタンだと岩本さん。程よく手抜きすることを覚え、完璧を求めていた時よりも、随分と気持ちが楽になったと笑う。
「結婚=退職」という現状が今だ拭えない保育現場。生まれて初めて親元と離れる不安を、優しく包み込んでくれた大好きな先生が結婚していなくなる寂しさ…。子どもを通して私も経験済みだ。卒園しても、成長した姿を見てもらえる環境が理想的だと常々思っていた。結婚、出産を経ても働ける環境をと、のだ山幼稚園では現在、時短や業務の見直しを図りながら、女性の働き方改革に積極的に取り組んでいる。そのロールモデルとして、後輩たちのために新たなレールを敷く存在でもある岩本さん。主任としての責務も抱え、プレッシャーもあるだろう。しかし、自分の経験が活かせる、やりがいのある仕事だと晴れ晴れとした表情だ。
「私の子育ての経験値はまだまだ。違う悩みも増えていくと思うけど、この経験を生かして、子育てしているお母さんを助けていける存在になりたいです。親として一番嬉しいことは、自分が愛情を注げない時間、先生たちに我が子がたくさんの愛情を注いでもらっていると感じた時。そこに信頼や安心感が生まれると思うんです。仕事も子育ても一生懸命なお母さんたち。ママだからと言って仕事のミスが許されるわけじゃないし、尚更、頑張らなければいけないと常に心が張り詰めていると思うんです。私たちが出来ることは小さいかもしれないけど、ママたちの気持ちを少しでも和らげることができたら…。子どもにもママにも寄り添える存在でありたいです」。
のだ山幼稚園・わくわくの森保育園
大分県大分市大字野田323-5
http://www.nodayama.jp/
この記事のライター:安達博子
「何より印象的だったのは、岩本さんの包み込むような優しい空気感。4人の子育てをしながら仕事をして、休む間もない毎日のはずなのにほんわかした笑顔…。安心感があって、こんな先生に子ども預けたーい!と思いました(もう遅いけど)。卒園後も大好きな先生に会いに行けるって子どもにとっても嬉しいですよね。そんな環境が、いつの日か当たり前になってほしいです」