2018.05.15
今回のママ:
財前真由美さん・39歳・別府市出身・別府市在住
(中学校2年生・小学校6年生の2児の母)
テレビ大分でのアナウンサー時代を経て、現在はフリーアナウンサーとしてテレビやラジオで活躍。毎週日曜放送のOBSラジオ「財前真由美のCheers!On Sunday」、大分放送で毎週水曜日放送の情報番組「旬感!3ch」にレギュラー出演、大分市の広報番組「いいやん!大分」のメインリポーターも勤める。自他ともに認める大のお酒好き。クラッシックバレエに一直線の娘さん、サッカーに打ち込む息子さんの頑張る姿にパワーをもらっている。アスリートフードマイスターの資格も持つ。ご主人は競輪選手の小野俊之さん。
大分で自分らしく生きるママたちのこれまでを綴るインタビューシリーズ。
今回はテレビやラジオで大活躍の、フリーアナウンサー・財前真由美さんのストーリー。
出版社に勤めていたこともあり、同じマスコミ業界でいつかお会いする機会もあるだろう…と思いながら、かれこれ20余年。お酒が好きだという噂を小耳に挟んでいたので(当方も無類のお酒好き)、初対面に緊張しつつも、ちょっと楽しみだった今回の取材。待ち合わせ場所に白いスーツで颯爽と現れた財前さんは、テレビで見るよりも数段も綺麗で、キラキラのオーラが半端ない!ひやー、さすが、見られる仕事をしている人は美しい…。そのオーラを肌で感じながら、テレビでは見ることのできない財前さんの素顔や、子育ての話を聞きたい!と、取材魂にさらに火がついた。
別府市出身、別府市育ち。現在は別府市を生活の拠点とし、フリーアナウンサーとして活動している。「大学で一旦別府を離れましたが、地元で就職活動をしました。それは、母のそばに居たかったから。小さい頃に両親は離婚をして、母は女手一つで私たち3人姉弟を育ててくれました(財前さんは長女)。毎日ずっと働いて苦労している背中を見てきたので、母のそばで仕事をして、結婚したいと思っていました。今は子守ばかり任されて『孫が近くにいて幸せやろ』って言ったら苦笑いしてますけど(笑)なくてはならない、私の最強のサポーターです。母がいなかったら、仕事はできなかったと思います」。
テレビ局の顔として4年間、看板アナウンサーを勤めた財前さん。実は、アナウンサーを志望してテレビ局に入社したのではなかったそう。「地元の企業に就職しようと決めて銀行とテレビ局を受けたんですけど、銀行は一次試験で落ちてしまって。でも、運よくテレビ大分さんに採用が決まり、制作部の配属が決定。それからアナウンサーの勉強を始めることになったんです。同期の人たちはアナウンサーの学校に行って勉強をしているから既に出来上がっていたのに、私はゼロからのスタート。発声練習から滑舌、ニュース読みなどのアナウンサーの基礎から、現場で覚える仕事など…失敗もたくさんしました。とにかく大変過ぎて、あの頃の記憶があまりないです(笑)」。それからは「ハロー大分」などの番組に出演していたが、入社4年目の24歳で結婚し、テレビ局を退職。25歳で長女、27歳で長男を出産した。
「今考えてみると、自分はアナウンサーという仕事の魅力にすら気づけないまま結婚の時期を迎えてしまった感じでしたね。家でゆっくり子育てを楽しみたいという専業主婦への憧れもあったし、プライベートのないアナウンサーの仕事にも正直疲れていた頃だったので、辞めることに未練はありませんでした」。
退職後は、幼稚園・小学校の行事やPTAに積極的に参加し、子ども中心の毎日を送っていた。イベントの式典や結婚式の司会のオファーがあれば、無理のない範囲で仕事も引き受けていた。本格的に仕事に復帰したのは、上の娘さんが小学校2年生の時。9年ぶりのテレビ出演になる、大分放送の情報番組「旬感!3ch」のレギュラーが決まってからだ。テレビ出演を機に仕事も徐々に増え多忙になり、生活は一変。いつの間にか、家族といる時間よりも、仕事の時間が長くなっていった。参観日にも行けず、先約の仕事を優先して運動会を見に行くことを諦めたことも。
「やるからにはちゃんとやりたい性格なので、家族を犠牲にしたことも多いですね…。フリーだから、一つ仕事を断ると縁が切れちゃう気がして基本断りたくなかったんです。だからどんどん忙しくなって、子どもとの約束を守れなかったり、土日なのに一緒にいてあげられないことも多くなりました。この状況を、主人や子どもたちが一番、こんなはずじゃなかったって思ってたかもしれません。ふと我に返り『一生懸命働いてるけど、これって子どものためになってないんじゃないか?私は何のために働いてるの?』って考えた時、心の行き場がなくなって辛い時期もありました」。晩御飯の準備から子どもの送り迎えなど、自分以上に子どもたちに愛情を注いでくれたお母様のサポートのおかげで、今では2人の子どもたちが笑顔で仕事に送り出してくれるそう。
どんなに忙しくても、1日の終わりに子どもたちと話す時間を持ちたいと財前さん。「上のお姉ちゃんは特に多感な年頃。だから今日学校であったこと、友達のことをちょっとでもいいから話して、聞いてあげたいんです。何かトラブルがあっても、最終的には自分で乗り越えられると信じてあげるしかない。だから、あまり首は突っ込まないです。でも何かしらのサインを出してる時もあるので、それを見逃さないようにしてあげたいです」。
1人の人間として尊重し、きちんと向き合うことで、子どもとの関係も変わってきたとか。「子どもが小さい頃は、自分基準で頭ごなしに『そうじゃない!』と言ったりしていました。産まれた月齢が違うからそれぞれ違って当たり前なのに、完璧を求めすぎて、成長の差が気になったり、オムツが取れない、言葉を喋らない、文字が読めないと気に病んだり…いろんなことで悩んでました。今考えたら、本当にどうでもいいことにイライラして落ち込んでたなぁって思うんですよね。だってオムツはいつか絶対に外れるものじゃないですか。トイレトレーニングで失敗して、子どもは怒られて泣いて、私もその側で泣いて。悪気がないことに対して怒って、今考えたら本当に可哀想なことをしたなって…。あの頃に戻って謝りたいです。親も親としての成長期ですよね。いろんなストレスを子どもにぶつけてヒステリックになって、自己嫌悪に陥って泣いた時もあるけど『ごめんね…』って謝ったら、『人間だからそんな時もあるよ、何を言ってもママのこと大好きだから大丈夫!』って子どもが言ってくれて。あの時はさすがに泣きました。そんな成長を感じながら、子どもに追いつかれて、追い越されて、いつか面倒を見てもらうんでしょうね。今、すでに追い越されてる最中ですけど。字も汚いし、勉強もしないし、宿題も忘れるし…。だけど毎日子どもたちは笑ってる。笑って生きていることが素晴らしい!って思えるようになったら、不思議と腹も立たなくなりました(笑)」。
趣味はないけど、お酒が大好き。仕事から帰宅し、ご飯を作りながら『プシューッ!」と缶ビールを空ける瞬間が、財前さんの1日のリセットボタン。そして、現在中学2年生の娘さん、小学校6年生の息子さんの存在は、財前さんの力の源だ。「息子はサッカー、娘はクラシックバレエを習っています。目標に向かって頑張る2人を家族で応援する時間がとても有意義で、その姿に明日からも頑張ろう!とエネルギーをもらってます」。
財前さんの子育てのベースにあるのは“愛”。言えそうでなかなか言えない、真っ直ぐな言葉だ。「それは(愛は)、言葉で伝えないと分からないから、小さい時から「大好き!』『愛してる!』『あなたたちがここにいてくれることが嬉しいよ!』って毎日のように言ってます。そろそろ鬱陶しいと思われてるかもしれないけど(笑)。愛情をどれだけ注いでもダメな人に育ってしまうかもしれないし、適当に育てたとしても立派な人に育つかもしれない。だけど“私がやれることはやった!”と思いたいんです。一緒に過ごせる時間が長くても短くても、愛情は必ず伝わるはず。大きくなったら抱っこは出来ないけどハグはできるから、これからもしたいですし」。恋人、夫婦、友達、親子。いろんな関係において、日本には“あえて言わない美学”=以心伝心という文化がまだまだ根付いていると思う。怒る時はあんなにガミガミうるさく言うのに、愛する思いは言葉にできているのかな…。子どもや家族、大切な人たちに言葉で愛を伝えなきゃ…と改めて思った。
ここ6、7年はとにかく突っ走ってきたという財前さんの今年の目標は、ワークライフバランスを見つめ直すこと。「息子は、今のチームでサッカーができる最終学年になります。子どもたちの今の瞬間を見逃したくないから、仕事、家庭の中での大事なことを取捨選択して、自分の基準を明確にしていきたいですね。子どもたちと過ごせる時間も、考えてみたらあと数年。子育てに後悔したくないので、いいバランスを保っていけたらと思います。今は『働いてるママが好き!』って言ってくれているので、それが私の支えになっています!」。「30代、40代にしかできない仕事があると思う」と財前さん。かけがえのない存在があるからこそ、テレビやラジオを通して伝えられる言葉があるだろう。母として、アナウンサーとしてのオンリーワンを目指し、毎日を駆け抜ける財前さんを心から応援したいと思った。
この記事のライター:安達博子
「今回、子育てや仕事の話しを包み隠さず話してくれた財前さん。テレビ越しに見る凛とした美しい出で立ちから、きちんとした母親像を勝手にイメージしていましたが、いい意味で覆されました。飾り気がなく自然体で、どこか男前で、正直で…。とても魅力的な女性で、愛情深い母親の一面も見せてくれました。反抗期女子の上手な付き合い方も伝授してもらい、相手を取材対象者と思って“ちょっと引いて見る・聞いてみる”を、我が家でも実践しようと思います(笑)。今度ぜひお酒を一緒に飲みましょうね!大ファンになりました」