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2019.10.25

子育てしながら働くことは
想像以上に大変なんだと実感しました

衛藤有佳さん

今回のママ:
衛藤有佳さん・37歳・大分市出身・大分市在住
(5歳・2歳・1歳の一男二女の母)

大分で自分らしく生きるママたちのこれまでを綴るインタビューシリーズ。今回は、保活問題に直面しながら5年半ぶりに看護師の仕事に復帰し、子育てと仕事に奮闘中の衛藤有佳さんのストーリー。

長期の育児休暇を取っても
ずっと待ち続けてくれる職場や先輩

「保育園に落ちた、日本死ね!」。保育園に入れなかった人による怒りの匿名ブログが世間を賑わせてから早3年。少々乱暴な言葉だと感じたが、当時、同じ境遇の女性たちが共感したのは確かだと思う。これまでもこのコーナーで保活に苦労した女性たちの声を拾ってきた。でも、今回ほどリアルな話はなかった気がする。行政関係の方々には耳の痛い話も出てくると思うが、あえて勇気を持って書かさせていただく。今回取材させていただいた衛藤さんは今年の春、約5年半ぶりに看護師としての復職を果たした。ここに至るまで、血の滲むような保活の経験をした。大分市内に住む、たった一人の女性の話かもしれない。だけどこれはリアルな話で、様々な今の問題を露呈しているように感じた。

衛藤さんは、中学生の時に祖父を亡くした。厳格だったけれど一緒に遊んでくれる優しい祖父だった。食道がんになり、入退院を繰り返していた。部活動が忙しく、お見舞いにもあまり行くことができなかった。亡くなった祖父の冷たい手を握った時に身をもって死というものを受け止め、悲しさが込み上げてきた。「なんでもっと会いに来なかったんだろう…」と後悔の念が残った。「もし家族が病気になった時、おじいちゃんにできなかったことをしてあげられる人になりたい」。そう思い、看護師の道に進むことを決意。看護実習では、車椅子を押したり、笑顔で足をさすってあげるだけで「ありがとう」と感謝され「こんな私でも誰かの役に立つことができるんだ」と喜びを感じた。医療の専門学校を卒業後、東京の大学病院に就職。「母親がとても厳しい人で、一度家を出たいと思い大分を出ました。でも私の中で5年経ったら大分に帰ってくると決めていました。大学病院の仕事はとてもハードでした。責任も重く、毎日ハラハラしながら働いていたので精神的にも疲れてしまい、26歳で大分に戻りました」。



その後、半年間の休養を経て、大分の総合病院に再就職した。勤務して5年後の31歳で結婚し32歳で第一子を出産。32歳、34歳で2人お子さんを授かった。

「育児休暇は長くて3年取得できるんです。第一子を出産した時、1年半くらいで復帰しようと思ってたんですけど一番最初の子どもということもあり手を焼いてて、主人も仕事が多忙だったので結局3年間お休みをいただくことになりました。子どもが2歳7ヶ月になる頃、第二子を妊娠。そのまま引き続き第二子の育休もいただくことに。育休に入って4年目くらいで第三子を妊娠したんです。職場にはずーっと待っていただいるので、もうそんなに休めない…みんなに迷惑をかけてしまう。と仕事を辞めることも考えました。長いブランクがあると、私も看護師として復帰するのは厳しいなと思ってましたし」。

長い育休期間に加え、もう一つ、仕事に自信を失う出来事があった。結婚する前、自分の担当する病棟で父親を亡くすという、とても辛い経験をしていた。すい臓癌だった。

「たくさんの癌患者さんを見てきた中で、患者さんの心に寄り添える緩和ケアなどの勉強をしたいとずっと思ってたんですけどなかなか踏み出せなくて。そんな時、父が癌になったんです。家族に何かあった時に支えられる人になりたいと思って看護師になったのに、結局何もできなかった…。それからは同じ癌患者さんを見るのが辛くなって看護師をやめようかなと思ってたんです」。

その辛い気持ちも含め、全てを看護部長に相談した。「『本当は仕事はどうしたいの?』って聞いてくださって。自信はなかったんですが、でもやっぱり仕事は続けたい!と正直な気持ちを伝えたら『じゃあ、私は待つよ。今は子育てに専念してしっかり休んで、その後、一緒に頑張って働きましょう』と言ってくれたんです」。

その言葉に救われ「今できること、やるべきことをやろう!」と、どこかで吹っ切れた衛藤さん。同じ仕事ができる職場はたくさんあるけれど、人との繋がりはそこにしかない唯一無二なもの。目の前に壁が立ちはだかった時の先輩の言葉は、どうしてこんなにも心に響くのだろう。素晴らしい上司に恵まれた衛藤さんが、とても羨ましかった。

衛藤有佳さん

どこに救いを求めていいの?
信じて疑わなかった保育園入園

今年の4月に約5年半ぶりに職場復帰した衛藤さん。日進月歩の医療現場は、システムや薬一つとっても日々大きく変化している。ブランクを埋めるべく、子どもたちが就寝後、調べ物や勉強をしているそうだ。朝は9時出勤、16時退社の週4日勤務で、自分にあった勤務体制が選べるのはとてもありがたいと教えてくれた。「この数ヶ月、人生で初めて子育てと仕事を両方経験してる感じですけど、子ども3人が交替で病気になるし、仕事も忙しいしで、毎日あっという間(涙)、大変だけど充実しています」と衛藤さん。しかし、今日に至るまでの道のりは険しいものだった。

第二子出産前、長男に手を焼いていたこともあり、保育園の産前産後の預かりを利用したいと考えた衛藤さん。初めて子どもを預ける先の保育園選びは妥協したくないと、生活圏内の大分市中心部の認可保育園をたくさん見学し、厳選した10園ほどに入園の申請を提出した。しかし、残念ながら全滅だった。

「7月くらいに申請して時期も悪かったし、産休中とは言え産前産後の預けだったので優先順位としては低いんだろうなと諦めて、結局、産後まで無認可保育園を利用しました」。何箇所かの無認可保育園に電話をして話を聞いた際「認可保育園は希望されていますか?うちは入園する人数によって保育士を確保していますので認可が空いたらうちを退園するということは困ります」と言われたこともあった。その時、一筋縄ではいかない保活の厳しさを実感した。

様々な経験を経て、保活に対する知恵を蓄えた衛藤さん。認可保育園に入るための選考には、家庭状況をポイント化した「点数」が大きく左右するということをご存知だろうか? 就労状況や兄弟の人数、母親の健康状態やシングルマザーなどの条件に点数がつけられており、合算するとそれぞれの家庭の「点数」となる。点数が高ければ高いほど入園の優先順位が高くなるというものだ。

第三子が1歳3ヶ月になる今年の4月に本格的に仕事復帰を考えていたので、事前に認可保育園に申請を提出した。第一子の保活の際に多くの保育園をまわり、情報収集もバッチリ。保育園も3、4箇所に厳選した。「新年度の4月入園希望で、正社員、そして子どもも3人いるので入園できるものだと思って高を括ってたんです。まさかそれでも入園できないなんで想像もしていませんでした」。こんなにも条件が揃っているのに、希望する保育園に入ることができなかったのだ。



申請を出す前に市役所に相談に行ったこともあって、こんなに保育園に入るのが難しいなら、なんで相談に行った時に危機感あるアドバイスしてくれないんだって。どこにこの怒りをぶつけていいかわからなくて、市役所に申請用紙を持って怒鳴り込みに行きました(涙)。

『どこなら入れるんですか?離婚したら入れるんですか?』って半泣き状態の私に、担当者の人は『シングルマザーになったら点数がプラス2点加算されます』って丁寧に教えてくれました(笑)市役所の対応としてもこれ以上の情報開示が厳しいんだろうと思い、自分で直接保育園に電話を入れることにしました」。

電話口の保育士さんたちは「入園できるかどうかは役所が決めるのでこちらでは答えられませんが…」と前置きしながらも、親身になっていろんなアドバイスをくれた。小規模の保育園や2歳児まで受け入れの保育園であれば、比較的入りやすいかもしれないということや、姉妹二人同時入園を絶対条件にしていた衛藤さんに対して、とりあえずは別々に入園して同時入園希望と申請すれば途中で同じ園に入れることもあるということなど。保育園選定の基準をもっと柔軟にすることが必要だとわかり、アドバイスしてもらった内容を加味して再度保育園を選び直した。最終的に、姉妹二人で同時入園できる保育園が見つかり、仕事に復帰することができたのだ。

「今回、いろんな経験をして切実に思ったのは、保育園入園に関して、もっと情報を開示してほしいということ。自分の家庭の点数は大体わかるけど、それがどのくらいの優先順位に位置しているのか?って、現状が全く把握できない。それが分かれば他の対処法も選べるのにって…。情報開示は難しい点もあると思うんですけど、少しでも先に明かりが見える方法があるといいなと切に思いました」

衛藤有佳さん

仕事と子育ては大変だけど
必要とされていることが嬉しい

来年、一番上の息子さんは小学校に上がる。現在通っている保育園は2歳児までの預かりなので、二番目の娘さんは来年退園しなければならない。その後は幼稚園の入園を予定しているが、ここにもある問題が…。

「今年の10月から、幼児教育・保育の無償化が始まりましたよね。それで、幼稚園に入園希望のお子さんも増えているようなんです。でもこれもあくまでお友達の間の話で本当なのか分からないんですが、幼稚園入園も今までみたいに簡単に入園できないかもしれないねって。真の情報が欲しくても、どこで情報を入手できるのかわからない。だから、今はママたちの口コミ情報が頼りなんです」。

子どもがすでに成長している世代にとっては、保育園・幼稚園の無償化なんて羨ましすぎる話だが、手放して喜べない問題も孕んでいるなと感じた。働くママたちが本当に欲しい情報を的確にわかりやすく伝えられる方法はないのかなぁ…。そう考えた時、当サイト「ママのままプロジェクト」の役割を再確認できた気がした。

これからも看護師として、三人のお子さんのママとして、多忙な日々が続くであろう衛藤さん。もともとベースが美しい人ではあるけれど、内側から滲み出る輝きを放っている。

「今回の保活を経験して、自分が想像していた以上に子育てしながら働くことは大変なことなんだと実感しました。子育ては不安で心配で怒ってばかりで、掃除も料理も上手にできないし、でも必死にやってきたなと思います。そんな私を必要として受け止めてくれる子どもたちが愛しくてたまらないし、仕事では患者さんに『ありがとう』と言ってもらえることもたくさんあって、仕事と子育てをしていることで存在意義を感じることができます。毎日めまぐるしいし正直しんどいですけど、心は満たれているんだと思います。必要とされている自分がいることが、何よりも嬉しいですね!」。

衛藤有佳さん

この記事のライター:安達博子

「私は保活を経験していません。なので、正直『日本、死ね!』の時もあまりピンときていなくて…。これは都市部だけの話だと思っていたので、今回衛藤さんの話を聞いて身近な問題だということを切実に感じました。エリアにもよると思うんですが、働くママにとって自分たちの生活圏内で保育園を探したいというのは当たり前で一番優先すべき条件。経済的な面も考慮すると、認可保育園に入れたいと思うのも理解できます。しかし、保活がこんなにも大変だなんて!ちょっと愕然としました。子育て政策が色々と打ち立てられていますが、働くママにとってまだまだクリアしなければならない問題もあるなと…。だけどそんな大変な経験をしてきても、衛藤さんは美しい!ほんと綺麗なんです。笑顔も素敵だし、こんな看護師さんがいたら、入院中も明るい気持ちになれそう。そんな太陽のような、ふんわりと柔らかい空気感に包まれていた衛藤さん。強くたくましく、そしてしなやかに、これからも看護師さんの仕事に誇りを持って突き進んでください!。正直にいろんな思いを話してくれてありがとうございました。」

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