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2020.01.28

心と体の不調に悩む人たちの
駆け込み寺のような存在になりたい

向井智春さん

今回のママ:
向井智春さん・41歳・大分市出身・大分市在住
(小学3年生・幼稚園年長の2児の母)

大分で自分らしく生きるママたちのこれまでを綴るインタビューシリーズ。今回は、元正看護師でありながら「アロマを医療現場にも役立てたい」と、日本メディカルアロマテラピー協会大分役員校・セラピーサロン「Lulu」の代表として活動する向井智春さんのストーリー。

医療に密着したアロマを追求して

実は、向井さんとお会いするのは2回目だ。以前、このコーナーでご紹介した「わくわく実験室ふぁみらぼ」の代表・廣瀬菜美子さんの取材の際、図々しくも向井さんのご自宅をお借りしたからだ。彼女も廣瀬さんと一緒に「わくわく実験室ふぁみらぼ」のメンバーとして活動する一人で、その際、ご自宅にアロマオイルの小瓶が並んでいるのが気になっていた。私もアロマが好きで、気分転換に好きな香りを漂わせてリラックスしたりする。趣味なのかな?…と思っていたら、もっと深いところでアロマと関わっている女性だった。

大分雄城台高等学校を卒業後、国立別府病院附属大分中央看護学校(現在の国立病院機構別府医療センター附属大分中央看護学校)に入学し、卒業後は地域密着型医療や訪問診療、介護施設などで看護師として9年間働いた。なぜ看護師の道を選んだのだろう。

「英語の先生、栄養士、看護師、体育大学に進学…。進路を考えた時、やってみたいことは色々ありました。叔母が看護師で、小さい頃から勤務先の病院に遊びに行ったりしてたので、昔から“看護師さんって素敵な仕事だなぁ”と思ってたところもあって最終的に看護学校へ進学しました」。

実は向井さんのお姉さんも看護師という、まさにサラブレッド。看護師になるべくしてなったのかもしれない。同じ病院に医師として勤務していた現在のご主人と25歳で結婚し、30歳まで同病院で勤務。32歳で第一子、36歳で第二子を出産した。出産後は看護師の仕事を離れ、現在は日本メディカルアロマテラピー協会の大分支部代表認定スペシャリスト・スペシャルメディカルアロマカウンセラーとして活躍している。



「メディカルアロマってなに?」と思った方のために、簡単に説明しておこう。向井さんが所属する日本メディカルアロマテラピー協会の「メディカルアロマ」とは、私たちが想像する一般的なアロマテラピーやメディカルアロマテラピーとは違い、治療としてのメディカルアロマを研究し、医師・獣医がアロマを医療現場の「治療」として利用するというものだ。一般の家庭では健康法として利用可能である。

「もともとアロマは嫌いではなかったんですが、強い香りが苦手だったのでまさか仕事にするとは思っていませんでした。病院に勤めていた時、様々な病気を抱える患者さんをみて、アロマを癒しの部分で取り入れらないかと漠然とは思ってたんです。看護師として3年間勤務した時、卒後研修という研修があって、そこでラベンダーの抗菌力を研究し、文献などを見て勉強しているうち、アロマって実は癒しだけじゃないんだということを知りました。病院を辞めた後、アロマを取り入れている病院があるということも知り、その出会いも影響しているかもしれません。その病院では環境整備や透析患者さんの足の浮腫みのケアにアロマオイルを使っていました。もっと学びたいと、いくつかのアロマセラピーの検定を受講して資格を取りましたが、あくまでも香りや癒しの分野から抜け出せなくて…。私がやりたいこととどうしても結びつかない。もう少し突っ込んだ、“医療に密着したアロマを学びたい”と探しに探して、このメディカルアロマに辿り着いたんです」。

そこから、まずはペットアロマセラピストという獣医さんたちが関わる動物部門の資格を取得した。受講した内容は、アロマオイルの成分などをしっかり学べるとても興味深いもので、向井さんが理想とする医療と関わる内容に一歩近づいた。自分の目指す方向へが見えかけたそのタイミングで妊娠がわかった。「子宮が収縮する作用のあるアロマがあると以前勉強したことがあり、まだ勉強不足だった私はそれが怖くなってアロマから遠ざかってしまいました」。

向井智春さん

私だけ置いてきぼりに…
再燃した学びたい気持ち

あれだけ注力したアロマのことはすっかり忘れ、そこからは子育てに奔走する日々。第二子の息子さんを出産した後、元々好奇心旺盛な性格の向井さんの心に、メラメラと“学びたい欲”が再燃し始めた。

「長女は実は軽い発達障害を持っていて言葉を喋るのが少し遅かったんです。息子は息子で1ヶ月ぐらい早産で。そんな娘と息子を抱え、若干育児ノイローゼ気味でしたね。これまで働いてきた看護師としてのキャリアは何も役立たないまま、普通の主婦で終わるのかな…って焦りにも似た気持ちが湧いてきて。看護学校時代に同級生だった友達は看護師長という立場になっていたり、そういう現実を改めて見た時、自分だけが取り残されてる…という不安にかられました。その時、以前勉強したメディカルアロマをもう一度しっかり学び直して、もっと深いところまで知りたい!と思いました。人に施すことができるメディカルアロマの資格を取得するため猛勉強しました。知れば知るほど、私が目指している医療に近づいて行く感じがしました」。



向井さんが病院に勤めていた当直のある台風の日の真夜中に「子どもが高熱なので今から病院で診てもらえませんか?」という電話が入った。同じ親として、電話してきたお母さんの不安な気持ちが手に取るようにわかる。そんな時、電話口で「その状態なら大丈夫だと思いますよ。一晩様子をみて、明日受診でも」という向井さんのアドバイスに、お母さんはどれだけ安堵したことか。「看護師の時の経験を経て、私もそんな相談窓口のような存在になりたいと思いました。私、人に頼られるのがきっと好きなんだと思います」。

認定スペシャリスト・アロマカウンセラー・アロマボディメンテナンストレーナー・動物臨床獣医部会認定ペットアロマセラピスト・ペットマッサージセラピスト。名刺に書かれた保有資格を見れば、その想いの先に進む、向井さんの努力と覚悟が垣間見れる。

向井智春さん

まだまだ狭き門だけど
いつかアロマが人の助けになる日が来たら…

在宅医療専門の訪問診療医院を開業したご主人の手伝いで、一緒に訪問看護をした経験もある向井さん。以前は、医療とアロマの結びつきには難色を示していたご主人も、向井さんが施すメディカルアロマの力を目の当たりにし、自身もアドバイザーの資格を取得したそうだ。

「もちろん、処方する際、病院内で治療として使うには医師の判断が必要になります。その上で、例えば皮膚トラブルのある方には軟膏代わりに塗ってくださいと処方したクリームをお渡ししたり、咳止めのジェルを塗ってもらったりしました。ターミナルケア(病気で余命わずかとなった方に行う医療ケア)で癌末期の方の訪問診療に同行したことがあります。栄養不足や薬の副作用で口内炎がたくさんできて、その痛みに耐えられずご飯が食べられなくなりどんどん体が弱ってしまう方も多いんです。その症状が楽になる、口内炎に塗るオイルも処方させてもらいました。また精神的な病を抱えている若い患者さんにもお会いしたこともあります。自律神経失調症で、ご飯も食べず家に閉じこもっているので痩せ細っていて処方された薬をたくさん飲んでいました。まずは自律神経を整えるところから始めてみようと、その人の状況をふまえながらアロマジェルを処方し塗り続けてもらいました。1ヶ月ほど経過したら、薬を飲まなくても良くなり笑顔も増えて、外出もできるようになったそうです。それを聞いたとき、この仕事をしていてよかったなと心から思えました」。



処方する際、向井さんが大事にしていることがある。それは「カウンセリング」。倦怠感がある、頭が痛い、皮膚がカサつく…。様々な不快な症状には必ず原因があると向井さん。「不快感や病気などの諸症状には原因があって、その元を正さないと治らないんです。逆に原因が分かれば、使うべきオイルや成分が明確になる。ただの風邪なのか? 何が原因の痛みなのか? ストレスなのか? 急を要するものなのか? その判断は素人さんには難しいかもしれません。特にうちに駆け込んでくる方は、病院嫌い、薬嫌いの方が多い。だから、医療に従事していた私がそこで問診をすることがとても大事。該当する症状に対してメディカルアロマでいいのか、もしくは病院に行った方がいいのかという判断もできます。急を要する人には病院で診てもらった方がいいという助言もしてあげられますしね。ママ友には話せなくても、知らない私だったら話しやすいでしょ? そんな、悩んでいる人のための駆け込み寺みたいな存在になれるといいですね」。

家庭でできる簡単なケアから美容的なケア、メンタルケア、そして終末医療まで、多岐にわたる分野の救いの手となる可能性を秘めた、未知なるアロマの力。「医療現場への導入はまだまだ狭き門なんですけどね…」と向井さんは言ったが、藁をもすがる人たちの、一筋の希望の光になってほしいと願わずにはいられなかった。

向井智春さん

日本メディカルアロマテラピー協会
https://www.jmaa-aroma.com/

日本メディカルアロマテラピー協会大分支部役員校 Lulu
https://jmaa-cloud.com/shop/koharunx2/
koharunx2@gmail.com

この記事のライター:安達博子

アロマって完全に香りで楽しむものと思い込んでいた私にはとても衝撃的な取材でした。奥が深すぎます。世の中には、体調不良や心の病を抱えて悩んでいる人たちがたくさんいると思います。病院に行っても、専門機関に相談しても、そのトンネルからなかなか抜け出せない。どんなことでもいいから光を見つけたいと、藁をもすがる気持ちだと思います。私は母を癌で亡くしましたが、どんな方法でもいいからこの人の苦痛を取り除いてあげたいと、身を引き裂かれる思いを経験しました。あの時、向井さんがいてくれたら…。本当にそう思いました。たくさんの人たちの不安に寄り添ってくれる存在の向井さん。今後のご活躍が楽しみです!そんな中、ふぁみらぼの活動も頑張ってくださいね! またシミ取りジェル作りにおじゃまします(笑)

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