2020.05.26
今回のママ:
安田恵さん・31歳・鹿児島県出身・大分市在住
(2歳の女の子の母)
今回は、本サイト「ママのままプロジェクト」の編集企画・制作に携わっている広告制作会社「株式会社Cont(コント)」のアシスタントディレクターを務める安田恵さんのストーリー。鹿児島県出身の彼女が、どうして大分に拠点を置くことになったのか?今日に至るまでのたくさんの苦労や経験が、今の安田さんを築いています。
「ママのままプロジェクト」の企画会議や取材スケジュールなどの打ち合わせで、いつもおじゃましている会社「株式会社Cont(コント)」。WEB、動画、紙媒体など様々なメディアに関わる広告制作会社で、私にとっても常に刺激をもらえる大切な場所でもある。
ここで昨年、アシスタントディレクターとして働き始めた安田さんの出身地は、実は鹿児島県。お母さんが病気がちだったため、なるべく近場の大学へ…と、熊本の大学に入学。残念ながら今年から休刊することになった熊本のタウン誌「タウン情報クマモト」で、学生時代にアルバイトとして編集・出版の仕事を経験した。雑誌作りの面白さに魅了され九州内のタウン誌の求人を探し、縁あって大分のタウン誌の会社に入社が決まった。
「東京に行くことも考えたんですけど、東京の出版社はライター、カメラマン、編集者と、それぞれ仕事が細分化されていて、企画から取材、誌面デザインなど、雑誌作りに一から関われるのはタウン誌だと思ったんです。それで、求人募集を探していた時、大分のタウン誌の会社との出会いがあって、就職することになりました」。
WEBライターとして在宅で仕事をしていたある日、外注ライターを募集している会社があることを聞きつけた安田さん。それが現在の職場「Cont」だった。早速面接に行くと、編集スタッフとしてパート勤めから始めてみませんか?という提案を受けた。編集の仕事が大好きだった安田さんにとっては願ったり叶ったりの申し出に「こちらこそお願いします」と即答した。お子さんがまだ1歳児で保育園の預かり時間が限られていたため、入社当初はパートとして9時から16時半までの月15日勤務を選択した。現在は社員に昇格し、平日の9時から17時まで時短で勤務している。
「ママのままプロジェクトに携わる現場でもあるので、ママに寄り添ってくれる会社だと思います。子どもの体調不良による急なお休み・早退時も『お子さん優先でいいからね』と言ってくれる職場の皆さんにはいつも感謝しています。リモートで仕事できる内容なので、どうしても仕事が終わらない時は家に持ち帰ったりする時もあります。体力的にきついなぁと思うこともあるけど、自分が好きで選んだ仕事なので全然苦にはならないですね」。
とはいえ、働く女性の毎日はハード。週末は掃除、買い物など終わらせ、余裕があれば翌週の料理に使う食材を下ごしらえしたりと家事に追われるので、自分の時間はないに等しい。しかし今は、家事・育児に協力的な旦那さんが安田さんの一番の助っ人になっている。
「彼も転職したので、時間的にも融通が効くようなりました。以前は、料理も家事もあまり協力的ではなく、絵に描いたような亭主関白な主人だったんです。でも子どもが産まれ、私も働き出してからすごく協力してくれるようになった。今では娘と二人で進んで洗濯物を畳んでくれたり、お風呂に入って寝かしつけまでしてくれます。今私がこうやって楽しく仕事ができているのも主人のおかげ。『仕事に行くようになってから毎日楽しそうだね』とも言ってくれ、感謝の気持ちで一杯ですね」。
自分の好きな仕事に就け、優しいご主人に支えられ、側から見れば羨ましい限りの環境に見えるが、今日に至るまで多くの苦労を経験している安田さん。実は大学入試センター試験の直前に、最愛のお母さんを肺がんで亡くしている。高校生で母親を亡くした安田さんの辛い思いは計り知れない。
「一番辛かったのは、出産した時ですね。母親もいないし、親戚一同はみんな鹿児島なので身内が近くにいない環境でした。里帰り出産もしなかったので、看護師の仕事を現役でバリバリこなしているお義母さんが、仕事終わりに家に立ち寄ってくれ助けてくれました。でもそれぞれに生活もあるし忙しいので、こちらもなかなか甘えられないですしね。長女を産む前、実は一度流産を経験してるんですが、初めての経験で不安な気持ちを誰に聞いていいかわからず、ネットの検索魔になってしまい逆にさらに不安になったり…。産後1ヶ月くらいがピークでした。まだコミュニケーションも取れない赤ちゃんとの空間が孤独で辛くて辛くて…。旦那に気持ちをぶちまけたら、それからは仕事を早く切り上げて帰ってくれて、いろんなことを協力してくれるようになりました」。
途中で言葉につまり、涙をこぼした安田さん。不安と孤独と戦ってきた当時の姿を想像すると、一緒に泣かずにはいられなかった。頼る親族がいない中で赤ちゃんを健気に育て、歯を食いしばっていた安田さんの姿を見てきたご主人だからこそ、今一番の支えになっているんだと納得した。
鹿児島で一人暮らしをしているお父さんの存在も心配の一つだと安田さん。先日、安田さんにも、妹さんにも何も言わず心臓の手術を受けようとしていたそう。「心配かけたくないと思ってたんだと思うんですけど、LINEで明日手術というのをさらっと言うからびっくりして、車を飛ばして鹿児島に帰りました。手術後は体が楽になったそうなんですが…。離れているからこその心配もありますね」。
いつも思う。当たり前の人生なんてなくて、それぞれにそれぞれの物語があるなぁ…と。いつも元気で、笑顔が可愛らしい安田さんの背景にそんな物語があるなんて、取材する前には想像もつかなかった。たくさん泣いて、苦労して、辛い思いや悔しい気持ちを味わった人には、その後、ご褒美が待っている。好きな仕事にも恵まれ、優しい旦那さんと可愛い娘さんとの穏やかな日々は、きっと神様からのプレゼントだ。
この記事のライター:安達博子
一緒に仕事するチャンスはなかったですが、前職が同じ会社だったので私にとっては後輩にあたる安田さん。「雑誌を作るのが大好き!」って、今時こんなガッツのある人がいたんだと、一緒に仕事できなかったことをとても残念に思いました。私も母を亡くしましたが、出産前と出産後はまだ健在だったので、その存在の大きさを痛感しています。子育ての一番の先生でもある母親不在の中、初めて経験する子育ては心細くて不安で仕方なかったでしょうね…。でも必死に頑張る安田さんの姿を見てきたご主人がいるから今の理想的な夫婦の関係が築けているんだと感じます。大好きなお酒を一人で飲むのが唯一リフレッシュする時間だと教えてくれた安田さん。コロナが終息したら、一緒に飲みに行くでー! めちゃくちゃ楽しみです。これからも、そのままの安田さんで大好きな仕事に頑張れ!(先輩づら)。