MAMA STYLE様々なママの様々なスタイルを
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2021.05.11

ママが活躍する清掃業の
無限の可能性にワクワクしてます

藤原真里さん[清掃会社経営]

今回のママ:
藤原真里さん[清掃会社経営] 35歳・竹田市出身・大分市在住
(中学1年生・小学校6年生・4年生・2年生・幼稚園年長の一男四女の母)

心地よい環境の中で暮らしたり仕事をしたい…。そのために欠かせない「清掃」を、クリーニング事業として展開する会社「ONE’S HEART(ワンズハート)」の代表を務める藤原真里さん。マンションや賃貸物件の退去清掃や、オフィスの清掃、入居前の新築清掃やお墓の清掃まで、ありとあらゆる清掃業務を請け負っています。実は藤原さん、5人のお子さんを育てながら社長業もこなすシングルママでもあります。

両親の介護をしてあげたい
中学から目指した介護福祉士

掃除道具を持ち、ピンクのジャージ姿で踊る女性たち…。流行りのアプリ「Tik Tok」で、そんな短い動画が配信されていた。これは、今回紹介する藤原真里さんが代表を務めるハウスクリーニングの会社「ONE’S HEART」が配信している動画だ。「清掃業のイメージを変えたい」という想いから、ツイッターやフェイスブックなど、様々なSNSを使って清掃業務のことや、仕事への想いを発信している。これまでの「ママスタイル」では取材するチャンスがなかった、イマドキな雰囲気のママ。その外見からは想像できないが、実は5人のお子さんを育てながら会社を経営する逞しいシングルママでもあるのだ。このギャップが只者ではない感じ! 実際にお会いして話を聞いていくうちに、あっという間に藤原さんの魅力に惹きこまれていった。

3歳まで竹田市で育ち、以降は大分市へ引っ越し、大分大学教育学部付属小学校・中学校に進学した藤原さん。小学生時代は合唱部に所属し、慰問で老人ホームを訪れたことをきっかけに介護の仕事に興味を持ち始める。「お父さんとお母さんが歳をとって介護が必要となった時、私がお世話をしてあげたい」という気持ちから介護福祉士を目指すことに。高校は、介護福祉コースがある学校へ進学。卒業前に国家試験を受け、晴れて介護福祉士となった。高校卒業後は大分市内、別府市内の介護施設や障害者施設で働いた。



「当時お付き合いしてた彼のお婆ちゃんが事故に遭ってしまい、面倒を見てあげたくてお婆ちゃんが住む竹田市に引っ越しました。彼は父子家庭で、お婆ちゃんに育てられたんです。結婚も考えていたし、彼も大分市内で働いてたので『私はどこでも働けるから』と竹田市の病院の小児科で働きながら、お婆ちゃんのお世話をしていました。好きだったんですよね。ボランティアに参加したり、誰かのお世話をすることが」。

その際、職場の先輩から「どうせなら看護師の資格を取って看護師になったら?」とアドバイスをもらい、お金を貯めて看護学校に通い始めた。しかし、入学して1年目の22歳の時に妊娠が発覚。学校に休学届けを出したものの、すぐに第二子を妊娠。2年間の休学が認められず、あえなく看護師の道を諦め退学した。

「その後は、4人目の子どもが産まれるまで整骨院でホームヘルパーとして働きました。24時間365日稼働の仕事だったので、夜中も電話があれば仕事に行ってました。ご飯を作る時間もなくて外食ばかりで…。ヘルパーの仕事って1時間ぐらいで終わることが多かったので、依頼があった家の近くのお店で家族でご飯を食べて「ちょっと行ってくるから待っててね」と仕事に出かけ、終わるまで待ってもらうこともありました。家に帰りついてみんなで布団に入ったら、また呼び出されて仕事に行く…みたいな事もありましたね。土日も仕事が入るし『これじゃあまりにも子どもたちがかわいそう。この状況を続けるのは難しい』と、仕事を辞めることを社長に伝えたんです。そうしたら『じゃあ、経理の仕事をやってみる?職場に子どもを連れてきてもいいよ。家で仕事してもいいし』と社長がおっしゃってくれて…」。

それ以降、まだ小さかった子どもたちを職場に連れて行ったり、今で言うリモートワークという働き方で仕事を続けられた。「建設業で働く私の父はとても忙しい人でした。父は仕事場に私たちを連れて行ってくれ、近くの公園で遊んで父を待つという環境で育ちました。私もそんな風に働きたいなと思ってたので、社長の提案はとても嬉しかったし、たくさん助けてもらったと感謝しています。それが私の今の原点になっていると思います」。

ネットショップ、配送業、清掃の下請け…
自分の居場所を探しゼロからのスタート

「自分が働きやすい仕事を見つけたい」。次第にそんな想いが湧いてきた藤原さんは、意を決しお世話になった会社を辞め、自力で稼ぐ方法を探し始める。「子育てしながらお金を稼ぐ方法」として最初に思いついたのが、ネットショップ。28歳の時、子ども服専門のアパレル事業を始めた。

「ネットショップの運営だったら、子どもの学校行事にも参加できるし自由度が高いなと思ったんです。でも売り上げがそんなに見込めず…甘かったですね。ネットショップを継続しようかどうか悩んでる時、経済的な理由から主人と離婚することになったんです。子ども5人抱えてシングルになって、こうしちゃいられれない!どうにかして子どもたちを食べさせていかないと!と、あの頃は必死でした。そんな時、一ヶ月限定の運送業の求人を見つけて、とりあえずその期間だけも働いてみようと応募してみたら採用されて」。

久々に外で体を動かす配達の仕事の面白さにハマった藤原さんは、当初一ヶ月だった仕事を継続することに。その仕事と同時に、これからなくならないインフラ事業で私にできる仕事はないかとYouTubeを見ていた時、偶然目にした清掃業の動画に心を動かされる。「これだ!と思いました。掃除の仕事がなくなることはないだろうし、内容によっては子連れで働けるかもしれない!と思ったんです」。一縷の望みにかけ、名刺を作り、やったこともない飛び込み営業を開始する。



「『清掃業やってるんですけど、どうですか?』って、とにかく目に止まった不動産屋さんやお店や会社に飛び込みました。営業なんてしたことなかったので不安だし、恥ずかしいし、門前払いされたところもたくさんありました。でも、なんとかして子どもを食べさせていかないと!と必死でした。昼間働くお金だけじゃ足りなくて、夜はスナックで働いていたこともありました。その時は元旦那が子どもたちのお世話をしてくれました。今でも離婚という形はとってますけど、子どもたちにとってはたった一人の父親ですしね。離婚の経験があったからこそ根性もついたし、自分で働く場所を作ろうと思えた。ある意味、元旦那のおかげで鍛えられました(笑)」。子どもを守るためならなりふりかわまず、何でもできる。どこまでも前向きな藤原さんの言葉に、涙が出そうになった。母ってやっぱり強い。

努力の甲斐もあり、知人の紹介などで仕事が広がり、会社を立ち上げ二ヶ月で月150万円を一人で売り上げるほどに。「いただける仕事は断りたくない!」と昼夜問わず、がむしゃらに働いたものの、一人でやることへの限界を感じ、一緒に働いてくれるスタッフを募った。その後売り上げは順調に伸びていった。しかし、理不尽なクレームが突きつけられ、仕事への対価が支払われないということが続いた。「下請けは辞めて、元請けで仕事をしようと、その時決心しました。自分が好きな時に働ける場所を作ろうと、全てを捨ててゼロから出直しました。しばらくは赤字が続いて大変な時期もありましたけど、でも今は育てる時期だからと辛抱しました。新規のお客様を開拓し、今では取引先が38社になりました」。

藤原真里さん[清掃会社経営]

ママたちが笑顔で
安心して働ける仕組みづくりを

自身がシングルマザーとして5人の子育てをしながら働く大変さを経験したからこそ、同じ境遇のママたちや子育て中のママたちが楽しく、気負いなく働ける環境を作ってあげたいと藤原さん。現在のスタッフもほとんどがママで、やる気のある自発的なスタッフばかりだと嬉しそう。

「人を育てることの難しさを痛感しました。時給制だから、仕事の内容よりも残念ながら時間が過ぎることだけを待つようなスタッフの人もいたんです。厳しく指導するとすぐ辞めて、人材が定着せず大変な時期もありました。でも今のスタッフは、失敗を次に活かしながら『もっと成長したい!』と食らいついてくる感じ。リーダーになれる人材も育ってきていて、これからが本当に楽しみです」。

しかし、仕事では仲良しこよしの関係ではなく、プロとして自立できる力を培ってほしいと願っている。仕事では厳しく指導することもあるが、そのフォローを忘れないのも、子育てを経験したママだからこそ出来る細かやな気遣いかもしれない。

「対価をいただいている仕事だから妥協はできません。会社やスタッフ、自分自身が成長するための叱咤激励として、ある時は厳しい指導もあるんですが、そのままだとやっぱり気持ちが下がりますよね。だから、お手紙ボックスを作ったんです。それぞれのスタッフに『ありがとう』『ここの仕事はよくできてたね』と、感謝の気持ちや頑張ったことを賞賛する内容を書いて箱に入れるんです。みんな『嬉しかった』『安心した』と言ってくれ、やってよかったなと思いました。小さなことかもしれないけど、みんなが楽しく笑顔で働ける仕組みづくりをしていきたいですね」。



力仕事も必要な清掃業は、一般的に男性が働く場所というイメージも強い。しかし、藤原さんの会社では、赤ちゃんを背負ったママがアパートやマンションの共有部分を清掃している。小さな赤ちゃんを連れても可能な仕事を割り振りしたり、仕事の依頼があった際もあらかじめ「春休みとか夏休み期間は、子どもを連れて清掃に入ることもあるかもしれませんが、それでも大丈夫ですか?」と、事前に断りを入れ了承してもらう。藤原さん自らがそうやって、ママたちが働きやすい環境の地固めをしてくれている。

「子どもが泣いて申しわけない気持ちにならないでいい環境を整えてあげたいんです。赤ちゃんが泣いて仕事ができなくなったら、他のスタッフがカバーするから大丈夫って伝えてるんです。お互いがお互いを助け合って働ける仕組みを作ってるから安心して働いてほしいですね。『今日も仕事楽しかった!』ってママが笑顔になって、笑顔のママを見る子どもや家族が笑顔になって。そうであってほしいです」。

毎日多忙な藤原さんだが、打ち合わせや仕事場に子どもたちを一緒に連れて行き、コミュニケーションの時間を取っているそう。「大手チェーンの回転寿司屋さんや、有名ファースフード店の開店前の清掃の仕事をすると、子どもたちが『ここママたちが綺麗にしたんだね』と嬉しそうなんです。それは私も嬉しくて…。働いてお金を稼ぐことの大切さを知る勉強にもなると思って、あえて『私がこうやって働いてるから、お小遣いをあげられるんだよ』って伝えるようにもしてます(笑)」。

これからの夢は、ママたちが活躍する清掃業の可能性を広げていくこと。赤ちゃんや小さな子どもを連れて、老人ホームや独居の高齢者宅をクリーニングすることで、多世代交流も生まれ、子ども、高齢者の相互にとっていい効果が生まれるのでは?と考えている。身障者施設への介入も検討していると藤原さん。「いろんな可能性があって、考えるだけでもワクワクしますね!」。その笑顔に、ママ×子ども×クリーニング事業の、これからの大きな可能性を感じ、こちらもワクワクが止まらなかった。

藤原真里さん[清掃会社経営]

この記事のライター:安達博子

まずはそのギャップにやられました。一見イマドキなママという雰囲気なのに、介護福祉士を目指したきっかけや、今の仕事に対する思い、ママたちの労働環境など、その想いを聞いて感動しました。これぞ起業家だと、拍手を送りたい気分です。恥やプライドを捨てて、守るべきものを守るために奔走する姿は、強くてたくましくてかっこいい母親の姿だったと思います。5人のお子さんたちも、一生懸命で、忙しいけど毎日キラキラと楽しそうに働く藤原さんの背中を見て、たくましく育っているんだと思います。藤原さんの生き様を読んで、たくさんの女性たちが背中を押してもらえることでしょう。「やろうと思えばなんでも出来る!」って思えました。清掃業の可能性は無限ですね! 数年後、大きな会社に成長している気がしてなりません。今後のご活躍も楽しみにしてます!

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