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2021.09.07

「楽しむ」って人生において
大切と感じています

野尻可奈さん[NPO法人勤務]

今回のママ:
野尻可奈さん[NPO法人勤務]
42歳・佐伯市出身・大分市在住
(高校2年生・中学2年生・年中の3男の母)

アパレル関係の店舗で勤務しつつ、社会貢献をしたいとNPOの活動に参加していた野尻可奈さん。現在はNPO法人「地域ひとネット」の職員として、現在進行形のプロジェクトのリーダーを務めている。お子さんの学校行事や地域の活動にも積極的に参加し、側から見るととても忙しそうな毎日。しかし、そんな日々を全力で楽しんでいる様子が伺える。

社会貢献、そして女性活躍に憧れ
地元の銀行に就職

ほんわかとした語り口調なのに、マスク越しに感じ取った意志の強さは大きな瞳が物語っている。綺麗な目がとても印象的だった野尻可奈さん。同席した当プロジェクトの佐藤プロデューサーとは、以前、働く女性向けに開催された講演会の際に出会っていたようだ。そんな情報からも、勉強熱心で常に向上心を持った女性だと第一印象で感じた。

佐伯市出身。地元の高校を卒業後、東京の大学へ進学。幼い頃から編み物が大好きだったため家政学部被服学科へ入学した。編み物が好きになったのは小学校のクラブ活動で手芸クラブに入ったこと。マフラーを編み、そこから編み物にのめり込んだそう。「実は編み物が好きすぎて、子育て期間中に手編みの講師の資格を取りました。小さい子どもを連れて週に一度、トータル5年間教室に通い続けました。教室の中では一番若い方で、生徒のおばあちゃんたちと話しするのが楽しかったです。もう少しレベルアップすれば師範の資格も取れるけど、まだそこにはたどり着いてなくて…。いつかはそこに行きたいですね」。



大学卒業後は大分に戻り、地元の銀行に就職。「就職は大分に戻ることを決めていました。4年間、親元を離れていたので両親や地元への思いが募り、地元の銀行に社会貢献室という部署があることを知って、とても興味を持ちました。いろいろと調べる中で、当時の室長が女性の方でその方に憧れて。女性が活躍していることが当時の私にとってすごく魅力でした。被服学科卒の私では就職は難しいと思って、就職面接の時は社会貢献室で仕事をしたい!という話ばかりしてましたね。」その後、無事に入社が決まり、窓口業務や手形交換業務など、約2年間勤務した。同じ職場に勤めていたご主人と24歳で結婚。

野尻可奈さん[NPO法人勤務]

みんなに助けてもらったから
今があります

銀行を辞め25歳で第一子を出産し、ここから約10年間は専業主婦として過ごすことに。社宅で暮らした日々はとても楽しかったと可奈さんは言う。

「何かあれば子どもを預けて、預けられて、共に子育てをしたって感じです。素性を知っている人たちばかりなので不安もないし、素敵な先輩ママにも出会えましたし。〝持ちつ持たれつお互い様〟で助け合ってましたね。上の二人は社宅でみんなに育ててもらった感じで、困った時もみんなが側にいてくれて心強かった。でも末っ子は、社宅ではなく今の家で育てたので、本当に心細くて、子育ても大変だった記憶があります。社宅から引っ越す時は号泣するくらい寂しかったですね。だけど、今でも繋がっていて、とても大切な関係がそこで築けました」。

主婦も母親になるのも一年生。戸惑うことも多いし、失敗することも多いですが、先入観を捨てて、まずは向き合うことを大事にするようになったと可奈さん。



10年間の専業主婦生活は、市内に大型商業施設が開業することでピリオドを打つことに。施設内に続々と開店するお店のオープニングスタッフとして働くことを決意した。

「一緒に銀行で働いたことがある夫は、私が接客が好きなことを知っていたんです。商業施設がオープンする時に『働いてみたら?』と後押ししてくれました。専業主婦をしている間もずっと働きたいと思ってたんです。女性の社会での活躍を唱えている大学でしたし、先生方も子育てや家庭を守りながらバリバリと働いていて、その姿も見てきました。きっと、働きたい気持ちがずっとあったんでしょうね、、、。でも、子育てしながらの一歩が踏み出せませんでした。兄弟が欲しいとも思っていたし、二人共に切迫早産で妊娠7ヶ月くらいからずっと入院しての出産でしたので、復職して職場に迷惑をかけてしまうのではないかと考えると前に進む自信がありませんでした。悩むより先に進めたのは、夫や二人の子どもたちが応援してくれたおかげです。おかげでパートでアパレルの仕事を始めることを決意しました」

意を決し、35歳で念願の再就職。37歳で待望の妊娠がわかり、職場に迷惑をかけると一旦は退職した。心配していたことをよそに3人目は入院せずに無事出産。

「無事に生まれるまで、家族の協力も大きかったですね。子どもたちは、寝ててもいいから側にいて欲しいって言ってくれて家事は2人の子どもたちが手伝ってくれました。先輩ママや友達もおかずを持ってきてくれ、両親も買い物してくれたり、みんなのおかげで無事に出産できました。本当にありがたかったですね」

その後、お子さんが1歳半になる時、仕事に復帰しては?と元の職場から声をかけてもらった。しかし、これまで保育園に預けて仕事をした経験がなかった可奈さんは、その時点で保育園に入れない厳しい現実を知ることになる。

「それまで保育園に預けたこともなかったので、保育園事情を全く知らなくて…。点数制度も知らず、結局、2歳になって保育園に入ることができました。次男は育成に憧れてたみたいで、待望の育成生活、そして私も、憧れの保育園ママになれたわけなんです(笑)」。

野尻可奈さん[NPO法人勤務]

やっぱり、まちづくりが好き
やっぱり、社会貢献活動が好き

子どもを預け、再就職を果たしたが、家庭と仕事、ボランティアの活動3つは多忙でした。日々の仕事に加え、学校の読み聞かせボランティアの活動、中学のPTA役員、同時に、可奈さんのその後に大きな影響を与えるNPOの活動にも無理のない程度で参加していたはずが、、、気づけばアップアップの状態に…。

「やっぱり体調を崩してしまったんです。夜中に寝てるのに目眩がするようになって。自分で好きなことをやってるから弱音は吐けど、このままじゃダメだと思って自分は一番何がしたいんだろうと立ち止まって考えることにしました。これからの働き方を考えていたときに、幼稚園でママのままプロジェクトのキャリア形成セミナーのリーフレットを発見し、参加してみました。毎回、様々な分野の先生の言葉が刺さるようでした。子育て期にも伸ばせている能力があること、自分を振り返る時間や自分自身の休みを取ること、自分らしさを伝える話し方など…あっという間の2時間。一緒に参加しているママたちは現在働いているママ、これから動きだそうとしているママと年齢も様々でしたが、セミナーを通じて、お互いの体験談や考えを聞き、伝え、毎回気づきを持ち帰ることができました。個人的に講師の先生に相談することもでき、前向きになることができました」

そこで選んだのは、今、可奈さんが勤務しているNPO法人「地域ひとネット」の活動に参加することだった。

その出会いは少し遡る。可奈さんが住む家の近くの鉄道が高架になることで、鉄道残存敷の利活用の研究会が立ち上がった。参加者募集の記事を新聞で見つけた夫が、社会貢献やまちづくりに興味を持っていた可奈さんに「参加してみたら?」と提案。沿線上地域に住む、住民としてその研究会に参加した。県の職員を始め、様々なNPOで活動する人たち、建築関係者、学生、自治委員の人々など、世代性別問わず幅広い人たちで構成された。ワークショップやプレゼン、鉄道残存敷を使った社会実験、市民活動の楽しさを知る。そこで出会ったのがNPO法人「地域ひとネット」の代表を務める谷川真奈美さんだった。

「それまでNPOって何?って、無知だったんですが、様々なNPO法人の方と出会い、活動内容を知ることができました。谷川さんはその時は初対面だったんですが、全然初めてじゃない感じがして、とても魅力的な方だなと感じました。彼女は当時『ふれあい囲碁』を広げる活動をしてたので、時間が合えば、子どもを連れてその活動にくっついて行ってたんです。ふれあい囲碁自体、とても楽しくて、どんな年齢層でも楽しめる簡単なゲームなんですよね。囲碁を通じて人間関係づくり地域づくりをミッションにしている活動内容に共感して、まずは地域ネットの会員になったんです。途中から私も仕事を始めたので、お休みが取れる範囲で、無理なく活動に参加していました。キャリア形成セミナーに参加したことをきっかけに、このNPO活動をガッツリやってみたい!と思い、アパレルの仕事を辞めたんです。大学卒業して就職面接で言った社会貢献活動がやっぱり私は好きなんだということに気づきました」



そして現在は「地域ひとネット」で職員として活動している。名刺には「結び手リーダー」と書かれているが? 

「昨年、地域ひとネットで〝おおいた・おカワリプロジェクト〟という活動をしたんです。これは昨年の7月に起こった天ヶ瀬の豪雨災害で被災した方々に、クラウドファンディングで資金を募って大分市のまちなかの商店で物資を購入して届けるプロジェクトだったんです。当時私は仕事もしていたので活動には少ししか参加できなかったんですが、現地にいくことは出来なくても自分の得意分野で支援をお手伝いできることができると声をかけてくれたんです。そして、これを発展させたのが、今私が携わっている〝おおいた・いとでんわプロジェクト〟です。今年の春から始動してますが、災害時に避難所に行くのが困難な障がいをお持ちの方や手助けが必要な高齢者、乳幼児がいる家族など、要配慮者のニーズ(情報)を支援団体に繋げる取り組みです。段差があるとか、畳のお部屋とか、避難しやすい情報ってすごく大切ですよね。そこで、ホームページではバリアフリーのホテルをご紹介し、避難に必要な物資や支援内容を事前に登録もできるように現在、制作中です。まずは、支援が必要な方々が、『何』に困っているかの情報を迅速に伝えるのが、〝おおいた・いとでんわプロジェクト〟の大きな柱です。

私はその中で、地域のキーパーソンとなる個人や、企業、市民活動団体の方々と出会い、その団体の方々の得意分野を生かして今後の支援体制が構築できるように関係づくりをすることが役割です。支援を行うには、各エリア、またさまざまな職種の方との関係が大事になってきます。情報や人の「結び手」を大分県内で広げていきたいと思っています。ウェブサイトは来年の春にオープンする予定で進行していますので、まずは要配慮者の方に登録してもらい、ニーズを知りデータを集めることが活動の第一歩。ウェブサイトが完成すると、一層活動の幅が広がっていくなと期待しています。これまで大きな災害が起きても、何か支援をしたいという気持ちがあっても、小さな子どもがいるから無理だと思っていました。災害支援は被災地に行って片付けや泥かきをするイメージがありますが、昨年のおカワリプロジェクトで、遠方でも、仕事があっても、子育て中でもできる支援があることを知りました。私のように被災地には行けないけど、何かできないかと考えている方は多いと思います。困っている方と少しだけお手伝いできる方の手をつなげていきたいと考えています」

年々、全国で大きな災害が多発している昨今。こういった細やかなサービスやシステムが実現化することで、災害時に孤立化せず命を守る活動に繋がるんだと、プロジェクトを熱く語ってくれる可奈さんを見て感じた。

最後にこれからの目標は?

「まずは、おおいた・いとでんわプロジェクトの『結び手』の企業様・団体様に理解していただくことです。そして、昨年のおカワリプロジェクトのような、被災地のお店、地元で購入して物資を届けるという仕組みを県内各地でできるように作りたい。また、地域のために活動しているNPOのことをたくさんの方に知っていただきたいと願っています。今年で5回目を迎える大分市主催の『おおいたNPO博』というイベントが開催されますが、私は実行委員となってイベント運営に携わっています。市内で活躍する団体の活動内容をより多くの方に知ってもらい、何かお手伝いできるかも?と活動参加へのきっかけになっていただけたら嬉しいです。喜ぶ顔がみたい、地域のためにお役に立ちたいと願っていた私の思いは、今、NPO活動で活かされています。地域ひとネットの理念でもある、人と人、心と心をつなぐ活動でいろんな方との出会いを楽しみます!」

野尻可奈さん[NPO法人勤務]

この記事のライター:安達博子

高校生のお子さんがいるとは思えない、若くて綺麗な可奈さん。華奢な出で立ちからは想像できないパワフルな人で、常に学びの姿勢を忘れない志の高い女性です。学校の役員やボランティア活動、地域の活動やイベントにも積極的に参加し、加えて復職も果たし「時間が足りない」と思うほど、フル回転で毎日を過ごしてきた可奈さん。聞いただけでも目が回りそうなのに、全てにおいて本当に楽しそうなのがとても印象的でした。10数年振りに幼稚園ママを体験し「子育てを2回した気分」と笑顔。私が同じ立場なら、絶対に子育てで手一杯で、周りのこと、しかも社会貢献活動なんて絶対にできない自信があります(涙)。いろんなことを楽しむ天才! 大変な出来事さえも人生の肥やしにしてしまう力を持ち、きっと、可奈さんの人生ってずーっと楽しんだろうなって羨ましく思いました。

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