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2021.09.21

産後の辛い思いを経験したからこそ
頑張るママたちを癒してあげたい

小川文乃さん[サロン経営]

今回のママ:
小川文乃さん[サロン経営]
36歳・大分市出身・大分市在住
(中学1年生・小学校6年生・1年生・年長の2男2女の母)

当プロジェクト宛てに、熱い想いをしたためた一通のメールが届いた。市内で訪問型のリラクゼーションサロンを営んでいる女性からだった。そこには、サロンをオープンした経緯や子育てへの想いが丁寧に綴られていた。早速アポイントを取り、サロンを兼用している、ご自宅におじゃました。

あの時、話を聞いてくれる存在がいたら
どれだけ救われただろう

取材におじゃましたのは、市内にある閑静な住宅街にある小川さんのご自宅。途中道に迷ってしまったのだが、連絡をすると迎えに来てくれ道案内をしてくれた。車から降り会釈する、柔和な笑顔に安心感を覚える。

「訪問型relaxationサロン Inaho」を経営している小川文乃さん。通されたリビングの隣部屋にはベッドが設置され、そこがサロンになっていた。「ゴリゴリゴリ…」。キッチンからコーヒー豆を挽く音が聞こえてくる。部屋中がいい香りに包まれ、丁寧に淹れてくれたコーヒーが運ばれて来た。とても美味しいコーヒーだった。小川さんの心配りや優しさを垣間見た。
 
大分市内の小・中学校・高校を卒業後、ゴルフ場に就職し4年間勤務。その後、22歳の結婚を機に仕事を辞め、23歳で第一子を出産した。上のお子さんが3歳、下のお子さんが1歳半の時、家計を助けるため生命保険会社に入社し、5年間勤めた。



「家計も逼迫して、悠長にしてられないなと思って仕事を始めました。子どもは無認可保育園に預けたんですが、上のお姉ちゃんの時にちょっと大変なことがあって…。保育園で熱湯を頭から被ってしまい、火傷をしてしまったんです。担任の先生の不注意だと園側から説明があったんですけど、先生の問題じゃなく園の方針の問題では?と言ったら、保育園サイドとゴタゴタしてしまって…。応急処置が良かったので、火傷の後は残らなかったは不幸中の幸いでした。そんなこともあって、認可保育園に入り直しました。子育てをしながら仕事は続けたのですが、4人目を出産した時、実弟の会社の経理を手伝って欲しいという話があり、保険会社は辞めました。でも本当は、看護師になりたくて辞めた…と言う理由もあるんです」。

4人目の出産をした際、リスク妊婦として病院への入院を余儀なくされた小川さん。その際お世話になった助産師さんのおかげで不安だった入院生活を安心して過ごすことができた。

「本当に素敵な助産師さんだったんです。とってもいいお仕事だなと思って助産師さんになりたいと思ったんです。それでまずは看護師を目指し、弟の会社に勤めながら看護師の勉強も同時にしていました。でもどんどん忙しくなってそれどころじゃなくなって、看護師の道は諦めることに…。自分が役に立てることが他にないかなと考えていたら、ドライヘッドスパを見つけたんです。現在は会社の経理の仕事もしながらサロンのお仕事もしています」。ドライヘッドスパとは、水を使わず、頭をツボ押しのような感じでほぐしていくものだ。なぜこの仕事を選んだのだろう。



「実は、第一子を出産した後、産後うつのような状態になってしまったんです。夜泣きがひどくて、やっと寝かしつけた…と思ったら気づけば夜が明けてて、休みなくお弁当を作るという毎日。抱っこしないと泣くから、そのまま外に出て散歩していつの間にか朝焼けを見る時間になってたこともありました。何度か、虐待に近いようなことをするかもしれない…と自分が怖くなったこともあります。『いつも泣いてるねぇ。でも今しかない可愛い時期だから大事にね』って近所の人が慰めてくれるんですけど、逆に自分が責められているように感じて悲しくなったり…。まだ若かったから友達も出産してないし、好きで結婚して赤ちゃん産んだんだからって親にも相談できず、誰にも会いたくなくて孤独でした。本当に苦しかったし、今考えればあれば産後うつだったんだろうなって思うんですよね」。

今でもその光景を思い出すと胸が苦しくなると小川さん。これ以上何を頑張ればいいの?もう頑張れないよ…自問自答しながら、光の見えないトンネルの中にいた。冷静に考えれば、周りに支えてくれる人がいると分かるのに、母子二人だけで箱の中に閉じ込められたような、逃げ場のない孤独を感じるあの時間…。私も同じ気持ちを味わった一人として、当時の彼女の気持ちが痛いほどわかった。

「あの時、話を聞いてくれる人がいたら、束の間でもリラックスできる時間があったら、私はどれだけ救われただろう…って思うんです。だから、同じような境遇のママたちの癒しの場になれたらと、訪問型のサロンを立ち上げたんです。世代も近いので、近い過去の話をして『頑張ってるね』ってママたちに伝えてあげたい。あの時って、専門的な知識が知りたいわけじゃないんですよね。寄り添って聞いてくれるだけでいいんです。大変だったねって認めてもらえて、わかってもらえることがすごく大事。サロンに来てくれたママたちが『こういう存在があってよかった』って言ってくれた時は本当に嬉しかったです。忙しいママや妊娠中の方以外でも、事情があってなかなか足を運べない高齢者の方や障がいがある方にも利用してもらたら嬉しいですね」。

子どもたちがベストが選択できるよう
私が頑張る姿を見せたい

小川さんが産後うつの状態から抜け出せたと感じたのは、2人目を妊娠してから。お腹にいる赤ちゃんを可愛がる娘さんの姿を見て、子どもに接する自分の姿や、娘さんの存在を、少し引いた場所から俯瞰で見ることができるようになったからと話してくれた。

「この子は私とは違う人間だと思えるようになったんです。それまでは一心同体みたいな感覚だったんですよね。あまりにも距離感が近すぎたのかな。この子の人生を、私が思うように育てるわけにはいかない…とその時ハッと気づきました」。この経験を経て、小川さんの今の子育てへの想いが築き上げられた。

「私は母子家庭で育ちました。大人になって、結構いろんなことを我慢して育ったなってわかったんです。だから、自分の子どもたちにはやりたいことを全部やらせてあげたい、欲しいものは与えてあげたいと思ってずっとやってきたけど、だんだんとそれが当たり前の空気になってきて…。でもそれは違うよねって、そういう言葉を伝えるよりも、私自身が何かに挑戦したり、一生懸命頑張っている姿を見せるのが一番の学びになるんじゃないかと思ったんです。私が母を思い出した時、浮かんでくるのは、自分が寝ている間にお弁当を作ってくれたり、早朝に出勤する、母の頑張っている姿。だから私も、何かを頑張っていれば、子ども達の心に何かを残せるんじゃないかと思って、多くを語らず、まずは行動することにしました。それもサロンをやろうと思った大きなきっかけの一つです」。



実は、4人のお子さんのうち、2人が発達障がいと診断されていると小川さんは教えてくれた。現在幼稚園に通う一番下のお子さんは、発達支援センターにも通っている。往復1時間の道のりを毎日送迎しているそうだ。最近になって長男にも発達障がいがあることが判明した。それぞれが来年、幼稚園から小学校、小学校から中学校に上がるという新しいステージに進む過渡期。小川さん自身も迷いながら、子どもたちがいい方向へ向かうように情報収集をし、行動している。

「専門家の人たちの力も借りながら、その子のいい部分を伸ばしていってあげたいです。病院の先生やソーシャルワーカーさんたちからアドバイスいただいて、いろんな道を模索していますけど、最終的には親の判断になります。何が正解かは本当にわからないし、悩ましいことだらけだけど、一番のベストを選んであげたいと思っています」。

常に笑顔で話してくれる小川さんを見ていて、子どもたちのためにひたむきに走り続ける姿こそが、子どもたちにとっての一番の学びだと、改めて教えられた気がした。

小川文乃さん[サロン経営]

夢は女性たちの働く場も提供できる
そんな存在になること

現在、コロナの影響で発表の場を失った地元の作家さんとコラボして、月に一回、公民館でイベントの開催もしている。児童館ではセルフリンパ流しの講座を開いたり、身体障がい者の方が入院する施設を訪れハンドマッサージを行ったりと、サロン以外の場でも積極的に活動している小川さん。

「障がい者の方は手が硬直している人も多くて、ハンドマッサージをすることで手がほぐれたり表情も柔和になったりするのを見て、私はこういうことがしたかったんだ!って。充実感があります! 講座も、ママたちに家でリラックスできる方法を知って欲しいという思いから。訪問サロンや自宅サロンって、少し敷居が高く感じる人もいると思うので、こういう活動を通して私とサロンの存在を知ってもらいたいという気持ちもありますね。今はコロナの関係でそういった活動が思うようにできていない部分もありますが、今後は期間限定サロンを開いたり、最終的には働く場所の提供までできるようになるのが夢です。女性たちやママたちの選択肢が広がるお手伝いができたらって思っています!」。

果敢に活動の場を広げる小川さん。その優しく大らかな人柄を慕っていろんなママたちが集まり、そこから大きな輪が広がっていく未来像が見えてくる。ホットハンドセラピストとして多くの人たちの心を体を癒し、包み込んでくれる存在となっていくだろう。

小川文乃さん[サロン経営]

訪問型relaxationサロン Inaho
https://www.Instagram.com/relaxation.inaho
ayano_ogawa0116@yahoo.co.jp

この記事のライター:安達博子

この世に存在する家族には、それぞれのストーリーがある。1000の家族があれば1000通りの物語が…。喜びも悲しみも、大変なことも辛いことも、様々な経験を経て、唯一無二の家族の色になる。小川さんの家族にも、紆余曲折いろんなことがあったと思う。でも、逆風を追い風に変え、常にポジティブに笑顔で突き進む彼女の姿は、現在進行形で同じ経験をしている人たちにどれだけの勇気を与えるだろう。常々、人の生き方は顔に出ると思っている。優しく全てを包み込むような彼女の笑顔は、それを物語っている。小川さんの癒しのゴッドハンドで、一度、頭をほぐして欲しいなぁ。頭はもちろん気持ちいいのだろうけど、心がほっこりとほぐれるんだろうなあ…と妄想する。その後はきっといい原稿が書けるはず(笑)

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