MAMA STYLE様々なママの様々なスタイルを
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2022.11.29

『FAMILY comes first always』
彼のおかげで今の私がある。家族が一番!

岩本アニタさん[児童クラブ英会話講師]

今回のママ:
岩本アニタさん[児童クラブ英会話講師]
32歳・ハンガリー出身・大分市在住
3歳の一男の母(第二子1月末出産予定)

これまで多くの女性を取材してきた本コーナー「ママスタイル」ですが、初の外国人ママが登場!ハンガリーで生まれ育ったアニタさんは、大分に暮らして3年目。現在、児童クラブで子どもたちに英語を教える仕事をしています。来年の1月末には第二子(女の子らしい)を出産予定で、ますます賑やかになるアニタさんご一家。言葉も文化も風習も全く違う異国での暮らしは、きっとたくさんの苦労や不安があったと安易に想像できます。今回は、私たちが忘れかけていた大切なことを思い出させてくれるエピソード満載です。

運命の出会いはアニタさんの
一目惚れからスタート

冒頭から、取材の裏話をひとつ…。実は取材当日、ご主人が通訳として付き添ってくれるという話だった。英会話力はほぼゼロに等しいので、通訳同席ということで安心していた。しかし体調不良のため、ご主人が急遽欠席に。「え、やば。全く話せない…(涙)」。会話程度の日本語なら大丈夫との前情報を胸に、少しの不安を抱えながら待ち合わせのカフェへ。「初めまして」とふっくらしたお腹を愛おしそうになでながら、美しい黒髪のアニタさんが現れた。カフェに入り「好きなものをどうぞ」を伝えると「これをトッピングして、これをこれに変えて…」と、私よりも上手にオーダーする姿に「え??日本語うまっ!」と思わず呟いた。店員さんも笑顔で「日本語お上手ですね」と言った。



ハンガリーで生まれ、地元のハイスクールに通い、大学では歴史を学んだアニタさん。大学2年生の時、アルバイトでアイルランドを訪れた際、現在のご主人と出会った。23歳の夏だった。

「智裕(ご主人)は語学留学でアイルランドに来ていました。パブに行った時に彼がいて『なんてかっこいいの!』と、私が一目惚れ。一瞬で恋に落ちました。私は大学生だったので結婚する予定もなかったし、お友達の関係から始まりました。私も3ヶ月しかバイトでアイルランドにいなかったので彼との未来はないかな…とも思っていました。そして、私はハンガリー。彼が日本に戻ってからはSNSやスカイプで連絡を取り合っていました。次第にお互いが大切な存在になり、おつきあいすることに。そして彼は私の家族に会いにハンガリーに来てくれました。最初日本人とお付き合いすることは家族は喜んでいなかった。でもお母さんが『やっと彼氏ができたから』と喜んでくれ、サポートしてくれました」。



その後、アニタさんがアルバイトでお金を貯め、当時ご主人が住んでいた東京へ。一ヶ月ほど滞在した。アニタさんにとって生まれて初めての日本だ。国士舘大学でサッカーをしていたご主人の姿を見ることもできた。

「サッカー、めちゃくちゃうまかったです。かっこよかった! だけど食べ物が合わず、11月で寒かったのもあって病気になってしまいました。一番最初に牛丼を食べて3口くらいで吐いてしまって…。お醤油や照り焼きソース、漬物など、日本食が合わなかった。ハンガリーはお肉が多くてスパイスをたくさん使います。全然違う味でなかなか慣れませんでした。デートで行ったよみうりランドでフライドポテトを食べた時『やっとまともなものが食べられた』って思いました(涙)。私日本には住めないかも…って思いました」。

大学を辞め、日本に来ることを決意
彼の家族が最大のサポーター

その後も、お互いの国を行ったり来たりしながら、超遠距離恋愛の愛を育んでいった。しかし大学卒業を迎えたご主人の就職が決まり、これまでのように行き来することが困難に。アニタさんはまだ大学生だった。

「私は歴史が好きで、歴史関係の仕事に就きたいと思っていました。でも、歴史を学ぶクラスに入るのに1年間待機しないといけなくなってしまいました。大学にも交渉したけどダメでした。もちろん大学は卒業したかったけど、彼と一緒にいることを決意し、泣く泣く大学を退学しました。本物の愛はなかなか見つけられないから…」。

アニタさんは、ご主人がいる日本へ行く決意を固め、バイトでお金を貯めて東京へ。日本語学校に通いながら寿司レストランでバイトをした。アニタさん27歳の時だった。「お寿司屋さんのキッチンで働いていた時、お客さんに外国人だからとひどいことを言われたことがあります。オーダーされたものをきちんと作ったのに『こんなもの頼んでない』とか『国に帰れ』とか…。外国人だからとジロジロ見られたこともあるし、だから今でもあまり目立つのが好きではないんです」。心無い人たちの言葉が、アニタさんの心を傷つけた。こんなにグローバルな世の中になったのに未だにそんなことを言う人がいるんだ…と、日本人として恥ずかしい気持ちになった。



日本にきたその年のクリスマスイブに、ご主人からのプロポーズを受け翌年4月に結婚。結婚式は行わず、婚姻届を出しに行った。その後、30歳で妊娠。コロナ感染症が流行し始める直前の1月に、ご主人の地元大分で出産をした。出産後はご主人の実家にお世話になり2ヶ月後に東京へ戻った。コロナ渦が本格化し、一切外出できず家にこもりっきりだった。ご主人の実家のサポートがあったとはいえ、日本での初めての出産はきっと不安だったに違いない。自分に置き換えて想像してみたが、私は絶対に耐えられない。

「なんで私はここにいるの?と何度も思うことがありましたね。ハンガリーに帰りたいとも。でも、彼のママが東京にも来てくれ、助けてくれました。彼のお姉さんも出産の時に駆けつけてくれて、とても安心でした。その後は、コロナの影響もあり、家族が近くにいた方がいいということで3人で大分に帰ることに。日本で、東京で、大分で、こうやって子育てができてきたのは、彼の家族の存在がとても大きいです。ありがとうの気持ちでいっぱいです」。

岩本アニタさん[児童クラブ英会話講師]

どんなに頑張っても日本人にはなれない
だからその真ん中を見つけようと思った

現在、息子さんは3歳。幼稚園には行かず、アニタさんがひらがなを教えているそうだ。「息子は日本語、家族間も基本日本語で話しています。息子はYouTubeで英語の勉強をしているみたいだけど。子どもにあまり聞かせたくない話は夫婦で英語で話しています。ハンガリー語は難しいので、息子に教えているけど、すぐ逃げるね(笑)」。

1年半ほど前から、児童クラブの英語の先生として働き始めたアニタさん。仕事の間は、義母さんが息子さんを見てくれているそうだ。「じいじが息子と散歩に行くのが好きみたいで、私の仕事がお休みの日でも連れて行ってくれるんです。家族みんな本当にいい人たち。このサポート無くしては働けなかったです」。日本の新しい家族に支えられ、大分で働くママとして奮闘するアニタさん。1月には第二子を出産予定だが、みんなのサポートを受けながら、一人目とは違う安心感に包まれて出産ができるだろう。



自分の人生を振り返って、アニタさんは今どう思っているのだろう。「まさか日本に来るとは思ってなかった。ハンガリーは時間がゆっくり過ぎるけど、日本にいるととても早く感じる。だけど、そんな日本の時間や食べ物にも慣れてきて、だんだん日本人になってきたのかなって思うこともあります。日本に来た時は『日本人になれるように頑張ろう』って思ってたけど、顔も違うし、どんなに頑張っても日本人にはなれない。『日本人の奥さん・日本人の子どものお母さん』なだけ。でも私はその真ん中を見つけていこうと決めたんです。今でもどうしても慣れないのは、私は思ったことをすぐ口にしてしまうけど、日本の人は頷くだけで何を思っているかわからないところ。だけど、みんな私に慣れてくれたのか、仲良く仕事ができて、妊娠もしている私を助けてくれてとても親切です」。

アニタさんの夢を聞いてみた。「ハンガリー料理のレストランをすること。ロールキャベツやミートボールはとても美味しいんです。デリバリーや給食サービスとかにも関われたらいいなと思ってます。だけど、もし彼に夢ができたなら、それを全力でサポートしてあげたいです!」。

毎回、取材の最後に、取材対象者の好きな言葉を画用紙に書いてもらっている。アニタさんが書いた言葉は『FAMILY comes first always』。意味は「いつでも家族が一番」。「彼に出会わなければ、今の私はいません。大学を卒業できなかったのは悔しいけれど、彼が一番大事だから後悔はありません。彼のおかげで私も変われたし、彼の家族に入れて一番幸せです!」。

その言葉を聞いて、思わずスタンディングオベーションしたくなった。大きな愛の映画を見終わったような気分だ。日本人だからか、ついストレートな表現を敬遠してしまうけれど、やっぱり大事ですよね『愛』って!。アニタさんにたくさんのことを教えてもらって気がして、心がずーっとあたたかかった。

岩本アニタさん[児童クラブ英会話講師]

この記事のライター:安達博子

途中から、外国の方と話しているのを忘れてすっかり意気投合! 日本に来てまだ5年足らずで、こんなに日本語を上手に話せるアニタさんはきっと努力の人。愛の力ってすごいですね! 「世界一のイケメンは彼だけど、息子が抜いちゃうかも!」と、おのろけ話にもキュンキュンさせてもらいました。ここでは書けなかったアニタさんの家族のエピソード。アニタさんのお母さんは、貧しい子どもたちの支援のお仕事をされていて、小さい頃からサポートする子どもたちと同じ屋根の下で暮らしていたそうです。お手伝いもしていたそうで、いろんな子どもたちの姿をみてきたと話してくれました。その経験もあり、愛がすべてだと、アニタさん自身が身を以て実感しているんだと思います。アニタさんを例えるなら『愛の人』かな。1月には元気な女の子、無事に産んでくださいね! 

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