MAMA STYLE様々なママの様々なスタイルを
ご紹介します

2023.08.01

私は自分の人生を楽しまなきゃ!
気づかせてくれた子どもたちに感謝です

古田絢香さん[ベビーマッサージ講師・ヨガインストラクター]

今回のママ:
古田絢香さん [ベビーマッサージ講師・ヨガインストラクター]
34歳・大分市出身・大分市在住
6歳の双子(男の子・女の子)、2歳(男の子)の3人の母

初めての妊娠が双子と判明し、戸惑いながらも双子の子育てに奮闘。現在は、3人の子育てをしながらベビーマッサージとママヨガ教室を行なっている古田絢香さん。初めての妊娠生活は体調不良で寝たきりになり、出産直後に分かった娘さんの病気の可能性。子育てのこと、仕事のこと、自分のこと…。悩み、もがきながらも自分を見つめ直し、トンネルの先に一筋の光を見つけた絢香さん。当事者でなければ到底想像できない辛い時期を、自分自身を変えることで乗り越えてきた。

不安だらけだった妊娠・出産
あの日々は本当に辛かった

ママのままプロジェクトが主催した写真撮影の特別企画に応募してくれた古田さん。応募者多数のため、残念ながらその企画には参加してもらえなかったが、彼女が書いた応募理由の一文に目が止まった。「ずいぶんの間イライラの毎日でした。双子に平等に、そして優しい母でありたいと過ごしてきて、ストレスを溜め込んでいました。下の子が生まれて、ようやく少しずつ外に出るようになって〝子育て〟の視点が変わってきました。母親になって6年(6歳)子ども達に育てられてきた毎日です」。

一人でも大変な子育てなのに、双子を持つママたちの現状ってなかなか想像できない。彼女が奮闘する姿は、きっと多くのママたちの心に響くはず!と確信し、早速取材をお願いした。

取材先に現れた、小柄で可愛らしい雰囲気の絢香さん。笑った目元や口元が誰かに似てるぞ…。あ!女優の吉高由里子だ! 思わず「似てるって言われません?」と聞いてみたら「以前、そう言ってくれる人がいましたねぇ(笑)」と、はにかんだ笑顔を見せた。



大分産まれの大分育ち、生粋の大分人の絢香さん。地元の小中高を経て、大分大学へ進学。大学では心理学を学んだ。

「小さな頃からマイナス思考で自己否定が強くて。小学校の時、友達関係でつまずいたことがあったんですけど、両親が共働きということもあり頼ることができず〝寂しい〟という気持ちが常にありました。そんな環境で育ったからか、人の心というものに興味が湧いて心理学を専攻したんです」。

大学卒業後は、大分県庁に就職。「大学院まで進めば心理学の資格が取得できたんですけど、それを仕事にする自信がなかったんです。精神的に問題を抱えた人と対峙できるような自分は確立できてないと…。それで両親の勧めもあって、公務員の道を選びました」。23歳で入庁し、11年間勤め、今年の3月に退職した。

結婚は27歳。自分の世界を広げたいと異業種交流会に参加し、そこで出会ったのが現在のご主人だ。翌年妊娠が判明し28歳で出産した。

「4回目のエコー検査で双子だと分かりました。まさか自分が双子を産むことになるなんて!と衝撃でした。周りに双子出産の経験者もいなかったし、喜びよりも不安の方が大きかったかもしれません。私、本当に産めるの?って」。



妊娠3ヶ月ぐらいからつわりが始まり、次第に体調が悪くなった。起き上がることもできず、寝たきりの毎日を送った。「体調が戻ったら仕事に戻るつもりだったんですが、結局病休をいただき、そのまま育休に入りました。気持ち悪くて起き上がれず、3食食べて、寝て…の日々でした。〝介護されるってこんな感じなんだろうな〟って想像できましたね。必要なものを準備してワクワクした楽しい妊婦ライフとは程遠かったです。ただ産まれてくるのを待つ…という感じでした」。

お産は思いの外スムーズで、男の子と女の子の双子の赤ちゃんが無事に産まれた。出産後「女の子の足に発疹があります。新生児には普通発疹はないので、ちょっと詳しく調べさせてください」と告げられ、結果、遺伝子の病気の可能性があることが判った。髪が抜けたり、歯が生えてこなかったり、背骨が曲がったりと、様々な症状が出てくる可能性があるという珍しい病気だった。

「子どもたちはそこから約1ヶ月入院しました。その間、毎日病院に母乳を届けて…あの時期は体力的にも精神的にも本当に辛かったですね」。現在、娘さんは6歳。今は症状が出ることもなく、2人とも健やかに育っている。

辛い、苦しい、助けて…と言えない自分
抜け道が見つからず八方塞がりに

産前、体調不良だったこともあり、十分な準備もできぬまま、初の双子育児に突入! しばらくは、お母様の手助けのもと実家で過ごした。「一人が寝たら、一人が起きて泣き出す。するとせっかく寝た子が起きる…というエンドレスな状態でした。母乳も2人分は足りないからそれぞれに母乳をあげて、ミルクを足して。布おむつを使い、とにかく頑張ってましたね。双子だから、できるだけ平等にしなければいけないと、そこにも囚われていました。こうでなければいけない!という思いも強くて、手を抜く方法がわからなかったんですよね…」。「大変だろうねぇ」と、出産祝いに駆けつけた友人の言葉に「そうでもないよ、楽しいよ」と応えた。本当はいっぱいいっぱいで助けてほしい!と声をあげたかった。でも、プライドの高い絢香さんは毅然に振る舞った。



ご主人は育児にとても協力的で、率先して手助けしてくれた。しかし「主人が抱っこすると赤ちゃんが泣くということにもイライラしてました。大人が2人もいるのに、何で楽にならないの?って。結局、私しか育児はできないんだって勝手に思い込んでどんどん自分を追い込むんです。だけど協力してくれる主人に対してそれを言うことはできないから、どんどんストレス溜め込んで。主人がご飯作ってくれたのに、思ったように料理が出てこないと腹をたてる。子どもが離乳食を食べてくれない。自分の思う通りにならないとイライラして、でもそれをどうしたらいいの分からず、ずっと家の中にこもっていました。今考えれば、何でそう思うの?ってことばかりなんですよね…」。自分の中に閉じこもり、孤独から抜け出せず、八方塞がりの日々だった。

それに加え、育休明けのプレッシャーも降りかかりストレスがさらに増えていく。「主人とも距離ができてしまって、家庭の中の空気は最悪でした。このままじゃダメだと自分でもわかっているのに…誰にも不満が言えず、苦しみもがいてました」。

特に第一子出産後は、多くのママに孤独を感じる時間が訪れる(ない人もいるかもしれないけれど)。〝おっぱいがあるのは私だけ。それって、結局私しか育てられないってこと?〟という思考に陥ってしまい、先の見えないトンネルを知らぬ間にくぐってしまう。今考えれば周りにたくさん協力者がいるのに、盲目の魔の時間が訪れる。私もそれを経験しているからこそ、絢香さんの痛みが手に取るようにわかった。

古田絢香さん[ベビーマッサージ講師・ヨガインストラクター]

一歩踏み出した外の世界
3人目の出産で世界が激変

産休と合わせ約2年近くの休みをもらい、2人のお子さんが1歳になった4月に仕事に復帰した。「正直、仕事に戻る自信がなくて、何度も辞めたいと思いました。だけどそういうわけにはいかないですよね。復帰後、子育てを理由に迷惑はかけられないというプライドで完璧を求め、どんどん自分を追い込んでいきました。周りの人たちはそんな風に思ってないのかもしれないのに、自分で自分の首を締める状態でした。仕事が終わり、疲れ果てたまま子どもを保育園に迎えに行って、ご飯作って。ストレスフルになってしまっているから、その矛先を子どもたちに向けてしまい、自己嫌悪に陥るんです」。そんな日々を1年間過ごし限界を感じていた時、第三子の妊娠がわかった。

つわりもあったが、最初の妊娠に比べるとすごく楽だった。上2人のお子さんは保育園に通っていたため、心に余裕もできた。「だけど、仕事に復帰したら3人の子育てと仕事の毎日が始まる…と考えると、ネガティブだった以前の心に戻りそうになるんです。この悪循環をどうにか断ち切りたいと思ってた時、ベビーマッサージとヨガに出会いました。上2人の時はできなかった外出ができるようになって世界が変わり、2回目の出産にしてやっと肩の力を抜くことができた感覚でした」。

ベビーマッサージ教室では、気持ちに寄り添ってくれる先生との出会いで、心が劇的に変化するのを感じたという。「教室に通うことで、いい意味で大雑把でいいんだ! ちゃんとしなくてもいいんだ!と思えるようになりました。それまでの私はどれだけ力が入っていたんだろうって(涙)」。その後、ベビーマッサージの資格を取得、同時に体を動かしたいとヨガにも通い始めた。静止していた体と心が一気に動き出した。自分次第で、見えてくるもの全てが変わっていくんだということを、絢香さんは実感した。



そんな気持ちの変化も後押しし、11年間続けてきた仕事を辞める決心をした。「何かが違うとずっと思いながら仕事を続けてきて、そんな自分も好きじゃなかった。公務員という、これ以上ない安定を手放すのはとても勇気がいったけど、疲れてイライラしたばかりの姿を子どもたちに見せたくないなって思ったんです。〝子どもの人生じゃない、私の人生を生きよう〟とその時気づいたんです」。

「とにかく今の自分から変わりたい!」という強い想いが、未知の世界へ踏み出す勇気をくれた。

古田絢香さん[ベビーマッサージ講師・ヨガインストラクター]

公務員からフリーランスへ
まだまだ発展途上中の自分を受け入れて

現在、ベビーマッサージの教室とママヨガ教室を主宰している絢香さん。まだまだ不安も多い中、模索しながら新しい道を進み始めた。もともと完璧主義の性格なので、常に「これでいいの?」と自問自答している様子だ。

「長年勤めてきた事務職とは180度違う、人と接する仕事。ベビーマッサージやヨガはあくまでもツールで、私が目指すのは、その背景にいるママたちが楽しく過ごせる時間を提供すること。私の経験が誰かの役に立てばと思っているけど、それを求めるママたちばかりでもないんですよね。私ができることは何だろう…っていつも考えています。まだまだ発展途上中です!」。それでいいんだと思う。完璧なんてない。未熟な自分を受け入れて、まずは行動を起こすことが何よりも大切だと思う。格好つけることなく、ありのままの気持ちを伝えてくれる絢香さんは、本当に綺麗な心を持った女性なんだと改めて感じた。



今回の取材を受けるかどうかも迷っていたと絢香さん。「フリーランスになった今がうまくいっているわけでもないし、立派な人間でもない。キラキラした経歴もない私が取材を受けるに値するの?って思ったんです。主人にその想いを伝えたら、いつもは私の意見を尊重してくれる主人が『それは受けた方がいいよ!発信することでいろんなことが加速するかもよ!』と後押ししてくれました。一貫して、ずっと私のことを見守ってくれていた主人には感謝の気持ちでいっぱいだし、今は尊敬しかないですね」と、涙ながらに話してくれた。勇気を出して、この取材を受けてくれてありがとう。きっと誰かの人の心に、何かしらのメッセージが届くはずと信じています。

これからの目標は「たくさんの人に出会うこと」。これまで出会えた人たちを介して、自分を知ることができたと絢香さん。「いろんな人と関わる事が自分の楽しみになり、世界も広がると実感した1年でした。改めて自分を知っていく意味でも、これからもたくさんの人に会いに行きたいです」。

これまでの自分を振り返り、最後に噛みしめるようにこうつぶやいた。「最初は苦痛だったし、自分を見失うこともあったけど、子どもたちが生まれてきてくれたから、多くのことに気づかせてもらえた。これからは大きな目的地を見つけて、そこに向かって歩んでいきたい。まずはその目的地探しをしないとですね!」。苦しかったよね。でもやっと見えてきたね。誰がやってくれたわけじゃなく自分が動いて自分で変わっていったんだよ。と、親心になった私は、涙ながらに彼女にそう伝えた。

古田絢香さん[ベビーマッサージ講師・ヨガインストラクター]

この記事のライター:安達博子

『こうじゃなきゃダメだ』という思い込みは、時に自分を苦しめる。絢香さんもその一人。プライドが高く、完璧主義な性格は、どんどんと自分の首を締めていく。3人の育児と仕事の責務。家庭も回さないといけない毎日の中ギブアップも言えず、ストレスは溜まる一方。でも、外の世界に足を踏み出した瞬間から絢香さんの世界は変わった。「だからもし同じ経験を今してるママがいたら、これだけは伝えたい。変われるよ…って」。言葉一つひとつがとても丁寧で嘘がなく、思慮深い絢香さん。これからは絢香さんの「楽しい」という直感を信じて突き進んでください。そしてもっともっと魅力的な女性になってくださいね。応援しています! 

こちらの記事もオススメです

page top