今に繋がる
多彩な職種経験が強み
自分が書いた「ママスタイル」の記事がSNSでアップされると、多少の不安と照れ臭さを感じるのだが(これでよかった?取材者や読者の方に喜んでもらえる?と常に自問自答しているので)、インスタのストーリーで投稿されるのを見ると嬉しい気持ちになる。汗だくになって撮影した写真や、頭を悩ませ絞り出したキャッチコピーや原稿などが、端的に読みやすく整理され、魅力的に発信されているからだ。
今回取材させてもらうのは、当プロジェクトのインスタを代行で運用してくれている坂本貴子さん。お友達と二人で投稿している「大分おでかけナビ」を事前に拝見し、待ち合わせのカフェへ。「いつも魅力的な記事、楽しみにしてます。私もここに掲載されると思うとすごく嬉しいです!」と貴子さん。「私も大分おでかけナビ見て、あのお店に行きましたよ!」と、お互いに挨拶。屈託のない笑顔がとても印象的な、可愛らしい女性だった。
大分市出身。大分県立大分豊府高等学校を卒業後、大分県立芸術文化短期大学の情報コミュニケーション学科へ。卒業後の就活は、就職氷河期だったこともあり苦労したと貴子さん。「求人票を見ても、やってみたい!と思う仕事がなかなか見つからなかったんです。ならばと自力で広告代理店や金融関係の会社を受けたんですが、ことごとくダメで…。面接の反応はいいのになんでだろう…と思ったらSPI総合検査(一般社会人として必要とされる資質を測定する適性検査)の評価が良くなくて。それで、SPI検査がない会社を探し、地元の製麺工場兼ラーメンチェーン店の会社に、総務として採用してもらうことになりました」。次々と店舗を拡大し、勢いのある会社だったため仕事は多忙だったが、同じグループ会社で働くご主人と20代前半で出会った。3年間勤務し、その後退職した。
退職後、すぐにJAの大分県農林水産祭実行委員会に事務員として再就職。「農業祭の実行委員や各種イベント、表彰式、広報関係などの仕事をしました。それまでの仕事が激務だったため、ゆっくりと時間が過ぎる仕事内容に物足りなさを感じ、転職を考えるようになりました」。
その後、歯科医の受付事務の仕事へ。2年後、不動産業を営む実家の手伝いをしたいと、宅建の資格を取る勉強を本格的に始めるため退職した。勉強をしながら働き口を探し、FM大分の総務に採用が決まり転職した。「産休の方の代理で採用してもらい、復帰するまでの2年間勤務しました。高校時代の同級生がパーソナリティとして働いていたのものあり、スタッフの皆さんがすごく仲良くて、それまでの中で一番楽しい仕事でした」。契約終了後は、大分合同新聞グループ会社「大分合同エリアサポート」に就職。その間、30歳でご主人と結婚。ご両親の承諾がなかなか得られない中、約10年間のおつきあいの末に実った結婚だった。長いお付き合いの間、ご主人との結婚に迷いは一切なかったと話してくれた。「大学卒業してから、ずっと働き続けてたので、翌年の第一子出産を機に一度リセットしたいと、仕事を辞めました」。
飲食、農業、病院、マスコミ関係…。大学を卒業してからの職歴は多彩で、時系列で話を聞いていたが「え?ここでやっと30歳?。そして結婚・出産なんだね!」と驚いてしまった。「いろいろな職種を経験しました。それが今に役立っているとすごく感じます」。
出産4日前の試験で見事合格!
恵まれた環境で家業に力添え
出産後は、家業の不動産会社のお手伝いをすることに。「一棟のビルの中に、不動産会社の事務所と、両親、私たち家族の住まいがあり、今もそこで暮らしています。一つの建物の中に職場と家があるので、仕事をしている間も、事務所に子どもを連れてきたり、母に子どもの世話をお願いしたり、この環境じゃなければ小さな子どもを抱えながら仕事はできなかったですね。本当にありがたいです」。
宅建の資格取得のため長年勉強を続けていた貴子さん。実は、第二子妊娠中(出産4日前)に試験を受け、やっと合格!試験会場で産気づく可能性もあった中、すごい覚悟で挑んだ試験だった。「それまで2、3回試験を受けたけどダメで、これが最後のチャンス!と覚悟していました。トイレも近いし、眠いし、お腹もパンパンだし、集中力も無くなってたけど(笑)長女が手がかからない子だったので夜も勉強ができて、火事場の馬鹿力が出ました!」。
貴子さんの合格に触発され、実家の不動産会社で働いていたご主人も「自分も宅建を取る!」と奮起。その結果、見事合格したそうだ。まさに相乗効果、夫婦で高め合える関係性がとても羨ましいと思った。
友達と始めたインスタグラム
主婦・女性目線ならではの細やかさを
家業を手伝う毎日に転機が訪れたのは、子どもが同じ幼稚園に通うママ友との出会いだった。「最初は幼稚園や子育ての話をしてたんですけど、だんだんと深い話をするようになって。昔からお得な情報などに興味があり、そういう話をしてたら『大分のおでかけ情報を発信するアカウントの立ち上げを考えてるんだけど、一緒にやってみない?』と誘ってもらったんです。昔からブログをやっていたお友達は、SNSの知識が豊富でとても詳しい人だったんです」。その話をきっかけに、3年前、お友達が代表を務める「大分おでかけナビ」を立ち上げ、運営することになった。
新規オープンの話題のお店や穴場スポットを動画で紹介していたり、お得なクーポンを付加したりと、主婦にとっては嬉しい情報が満載のインスタグラムだ。現在のフォロワー数は約4万5000人。影響力のあるSNS媒体として、掲載依頼のオファーも年々増えてきている。
「ご紹介したお店のインスタのフォロワー数が一気に増えたり、売り上げが上がったと喜んでもらえるとすごく嬉しいし、張り合いが出ます。多くのフォロワーを持つインスタグラマーの方は大分にもたくさんいますが、私たちは主婦二人で、身近な話題を、ママ目線・女性目線で紹介しているところが強みだと思っています。お金はかけられないけど、リール動画を撮影したりしながら(動画撮影の担当はほぼお友達)、できるだけ丁寧に情報を掘り下げ、かゆいところに手がとどく情報を、これからも発信していきたいですね」。
このインスタのほかに、貴子さん個人のアカウントや、地元の建設会社のインスタを運用代行する仕事も請け負っている。
「自分の思いや提案が形になっていくことにやりがいを感じます。また、宿泊施設などからPR依頼があると、取材を兼ね旅行気分も経験でき、そういう体験もこの活動をしていなかったらなかなかできないですからね。この前は福岡発グアム直行の航空便PRでグアムにも行ってきました。頑張ってたらこんなご褒美もあるんだ!って思いました。自分たちが好きな場所、好きなこと、好きなものに出会い、趣味と実益を兼ねた好きなことが仕事にできているので、本当に毎日楽しいです!」。
SNS運用代行業の仕事でたくさんの人との繋がりができ、視野も広がったと貴子さん。「自分を大切にしないと、子どもや家族を大切にできないと思っているので、自分ファーストでいたいです。子どもたちも『お母さんいつも楽しそう!』って言ってくれ、今はそれが叶っているなと感じます。これまでいろんな仕事を経験し、広く浅く得た知識が今役立っています。これまでの人生を振り替えったら、目まぐるしい人生だったなって思いますけど(笑)、楽しいが一番!インスタきっかけで知り合えた方と実際にお会いして話すと『あんなことしてみたいね!』って、面白い化学反応が起こりそう。これからも、もっとたくさんのお店や情報を紹介できるよう、活動を広げていきたいです』。
好きな言葉は“アウトプット”。「インプットの機会はすごく多いけど、それを人に話したり、実際に体験しないと身に付かないと気づいたんです。インプットしたものをアウトプットして、定着させることが大事なんだって。これからもそのスタンスで、ゆる~く楽しく、私達らしく情報をアウトプットしていきけたらいいなと思っています」。
この記事のライター:安達博子
お友達と趣味で始めたインスタグラム。今では多くのフォロワーを持つ影響力のある媒体となった。そこに、儲かりたい!とか、影響力を与えたい!という強欲さはなく、「楽しもう!」というスタンスのみ。そしてそれが彼女たちの原動力となっている。「自分たちもまさかこうなるとは思ってなかったんです」と貴子さん。さらりと、流れるように、楽しいことをしていただけ…と、あくまでもシンプル。女性って本当にたくましい!と、こういう話を聞くたびに思います。これからも、「ママのまま」の魅力を発信するお手伝い、どうぞよろしくお願いします。とっても心強い!!!