2025.12.02
![塩田百恵さん[主婦]](https://mama-no-mama.jp/wp-content/uploads/2025/11/251202_1.jpg)
今回のママ:
塩田百恵さん[主婦]
35歳・福岡県出身・大分市在住(小学校1年生・年少の二女の母)
いくつもの大きなライフステージを乗り越えていかなければならない私たち。就職、結婚、出産、子育て、復職、介護…。やっと落ち着いたと思っていた矢先に訪れる転機。大きな荒波に飲まれながらも、そこに巻き込まれず、自分を見失わず、順応している女性たち。本当に頑張ってるぞ!と、大きな拍手を送りたくなる。転居も、その中の大きな転機の一つではないだろうか…。今回取材した塩田百恵さんは、14年間の東京生活を後にし、ご主人の転勤を機に大分へ移住して約4ヶ月。知人もいない、見ず知らずの土地で戸惑いながらも前に進もうとしている。いろんな葛藤と戦いながら鼓舞する姿に、思わずエールを送りたくなる。
先日、行われた「Will be」の修了式(記事はこちら)。女性たちの次なるステップを応援する全5回のセミナーが行われ、セミナーを通じて見つけた〝なりたい自分〟を宣言する日だった。そのレポート取材で会場を訪れた。一人ひとり名前が呼ばれ、修了証書を受け取り、未来の自分像を発表する。その中の一人に塩田さんがいた。上品な華やかさがあり、透明感のあるとても綺麗な人だったので思わず見とれてしまった。そして塩田さんの順番が回ってきた。

「自分を好きになります。仕事をしている自分、家族の前の自分…本当の自分って何だろうとずっと悩んでいた。転勤で大分にきて今の生活から逃げ出したい思いだったが、皆さんの様々な話を聞いて自分の悩みは小さいなと感じた。これからは自分らしく、自分の思考を大事にしながら歩いていきたい」と大粒の涙を流しながしていた。彼女のことを知りたい。そう思い、取材をオファーした。
福岡県若宮市の出身。自然豊かな山間の町で育ち、小学校から中学校まで1学年1クラスという、みんなが家族のようなアットホームな環境の中で、穏やかな子ども時代を過ごした。地元の高校に進学し、卒業後は福岡県内の大学へ進学。そこで管理栄養士の資格を取得した。

「中学の頃から、衣食住には興味がありました。食べることも好きだったし、思春期にダイエットした際、食べ物と体の関係を考える機会もあって…。そこから食の大切さを意識するようになり、家庭科の先生や栄養教論になりたいと思うようになったんです」。
大学卒業後は、当時お付き合いしていた現在のご主人が東京へ就職したこともあり、上京。22歳の時に東京の保育園に就職し、園児たちが食べる給食の献立作成や調理、食育指導を行ったりと、管理栄養士として今年の8月まで約12年間勤務した。「子どもたちに食の大切さを教えることもあり、先生になりたいという夢は叶ったかな…って思いますね。振り返ってみると長い12年間でしたね」。24歳で結婚、27歳で第一子出産、30歳で第二子を出産し、育休を取得しながら働き続けた。
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「頼れる人が身近にいない中で、育児をしながら働くのは正直すごく大変でした。仕事は好きだったのでそこに没頭したいけど、子育てもあって、そのバランスに苦しみました。外面はちゃんとしてるのに、家での顔は違うんです。だから自分が自分でわからなくなったんですよね…。一生懸命仕事をしたい自分と、母の顔の自分がちらつく中で葛藤してました。要領が悪いから、両立できないんです…。人に頼るのも苦手だから全部自分で抱えてしまうんです」。仕事が忙しいご主人にも頼れない中、ほぼワンオペでやりくりしていた。完璧を求めるあまり自分を責めてしまうという、根っからの生真面目な性格が垣間見れた。

仕事と子育てのはざまでもがいていた時、救いの手が差し伸べられた。「ファミリー層が多く住むアパートだったんですが、顔を合わせても挨拶を交わす程度。2人目を出産して仕事に復帰したとき、私が高熱で倒れちゃったんです。そんな中でも子どもを保育園に送迎しないといけなくて、もうろうとしながらも自転車に乗ろうとしていた時、下の階に住んでいたママが「大丈夫ですか?」って声をかけてくれたんです。自転車乗り場が近かったからか、いつも窓を開けて心配して声をかけてくれて。ある日、シチューを持ってきてくれて「お互い様なので、何かあったら声かけてくださいね」って。そのママも2人目を妊娠中だったんですけど、こんな都会で、こんな優しい人に出会えるんだってジーンときて、すごく嬉しかったですね」。
塩田さんもそれ以降は、妊娠中だった彼女のことを気にかけるようになった。大分に引っ越しする最後の日も、駅まで見送りにきてくれた。身内もいない東京で、心の支えとなってくれた唯一の存在だった。
塩田さんご夫妻は、2人とも福岡出身。いずれ福岡へ戻りたいという思いはずっとあった。お子さんが小学校に入学するタイミングで今後の生活スタイルを熟考し、ご主人が九州への転勤希望を提出。結果的に福岡ではなかったが、九州内の大分への転勤が決まり、今年の8月に大分へ。

「子どもたちにはちょっと負担をかけてしまうけど、私も今の生活を変えたい…と思っていたので少しホッとした自分もいました。でも、12年間東京で暮らした思い出が蘇ってきて寂しくなったり、大分に来てよかったのかな…って思ったり、気持ちはまだ落ち着かないですね。迷っている自分を見つめ直すために『Will be』のセミナーに参加したのに、自分を振り返れば振り返るほどわからなくなってきて、じゃあどうしたらいいの?って分からなくなって。今は専業主婦で、時間のほとんどを子どもに費やしている感じなんです。仕事をしていた時の自分はキラキラしてたなぁとか思い出して焦ったり、自分を発散できる場所がなくて、そのストレスを子どもに向けてしまってる最低なお母さんだって、自己嫌悪に陥ってるんですよね。しっかりと人生を歩んで欲しいから、どうしてもつい口うるさく言ってしまって…。自分を整えたいと思っているのに、なかなか答えが見えてこないんです…」と塩田さん。その話を聞き、つい「自己肯定感、低すぎ!人それぞれに物語があって、もがいたり、頑張ったりしてる今の姿がリアルなんだから、それでいいんだよ。そんな自分を〝よく頑張ってる!えらいよ〟って褒めて、認めて受け入れてあげて」と叱咤激励してしまった。

山あり谷ありの人生。塩田さんにとっては、今は先の見えないトンネルの中にいる状態なのかもしれない。もし、今、谷にいるなら、あとは山の頂上に向かって登るだけ。説教じみたそんな話をしているうち、塩田さんの表情が明るくなっていった。「私、多分、年上の人の助言を欲していたんだと思うんです。これまでの仕事は、自分が一番上だったから先輩と呼べる存在の人があまりいなくて。今はいろんな人の話を聞いて、自分の中にどんどん吸収していきたい。だからかな。公園のベンチに座ってるお爺ちゃんや、たこ焼き屋のおばちゃんと話すのがすごく楽しくて、自分が好きな時間だと気づいたんですよね」。
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「やっぱりいつかは仕事したい!」と塩田さん。前職の管理栄養士の仕事から離れ、気づいたことがあったという。
「前職もやりがいがあって好きだったけど、接する人たちは限られる職場でした。私は多分、いろんな人と接することが好きなんだと思います。これまでのスキルを活かしながら、人と接する仕事って考えた時に浮かんだのが、最低限の調味料を使った素朴な味つけの、栄養バランスが取れた総菜やお弁当を売るお店。私自身が東京で働いていた時にそんなお店が欲しいなって思ってたんですよね。忙しい中でも手作りのものを食べさせてあげたいって思う時に、おかず一品買って帰って、あとはお味噌汁とご飯と小鉢くらいを用意したら晩御飯になるような、そんな安心して食べられるご飯を提供できるお店を開いてみたいです」。

10年計画でスタートした塩田さんの夢への道。その間は、お弁当屋さんで働いたり、大分の人たちの行動範囲や生活スタイルを調査したり、いろんな経験や知識を増やして下準備をしていきたいと話してくれた。大分に根をはる覚悟で、これからの夢を描いた塩田さんの瞳は、いつの間にかキラキラと輝いていた。
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この記事のライター:安達博子
実はお酒が大好きという塩田さん。取材の最後には「飲みに行こう!」と約束してしまったのですが、大分に来てまた知り合いも少ない中で「人生の先輩の話をたくさん聞きたい」と言われたら、そりゃ、飲みに誘うでしょ(笑)。自分に自信が持てないと悩んでいた塩田さん。今抱えているリアルな悩みを包み隠さず話してくれて、ありがとうございました。大分に転居してまだ4ヶ月。右も左もわからない土地で、よく頑張っているなって思います。これからたくさん知り合い増やして、行動範囲を広げて、コミュニティー増やして、いろんな人の力を借りてお惣菜屋さんの夢に近づいて行こう!大分の人は優しいから安心してね。そのために力になれることはなんでもしてあげたいと、めちゃくちゃ贔屓しちゃってる私です。だってほっとけないんだもん(笑)。って言ってたら、コントマーケット(私がひろこママとしてカウンターに立っているバー)にすぐ飲みに来てくれた!嬉しい!その行動力を生かして、夢へ向かっていこうね。応援してます。