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2021.06.01

子どもの笑顔の先には、ママの笑顔
通り過ぎた私たちから「大丈夫」と伝えたい

ちちんぷいぷいおかあさんの会

「ちちんぷいぷいおかあさんの会」
ポストカード屋 ちちんぷいぷい
山地加奈子さん

約4年前から、別府市で「ちちんぷいぷいおかあさんの会」の活動を始めた『ポストカード屋ちちんぷいぷい』の山地加奈子さん。自身が経験した子育てや保育士の仕事を通じ、見えてきた子どもたちの先にいる〝毎日必死で頑張っているお母さんたち〟。山地さんが描く優しいタッチのポストカードは多くのママの心を癒し、月に一度行われるワークショップでは実際にママたちに出会い、多くの悩み事や愚痴に耳を傾け、寄り添ってきました。山地さんがこの活動を続ける、その想いとは…。

別府市荘園町の「別府光の園」。木々に囲まれたレトロな風情の建物が並ぶこの施設は「子どもの広場(保育所)」「子どもクラブ(学童クラブ)」「子ども家庭支援センター」など、6つの事業を併せ持った施設です。施設内にある児童館で、4年前から「ちちんぷいぷいおかあさんの会」と題した活動を行なっているのが『ポストカード屋ちちんぷいぷい』の山地さんです。ご自身も3人の子育てを経験し、保育士としても働いています。取材におじゃましたのは、月一回のオリジナルカード制作のワークショップの日。参加者の皆さんは、筆代わりの割り箸や枯れ木を使い、言葉やイラストを夢中になってカードに描いていました。「割り箸で描くと温かみのある表現ができるんです。自分の中にある言葉を書くことで、心も整理されますしね」と山地さん。参加するママたちとたわいもない会話をしながら笑顔で接してくれる山地さんに安心感を覚えます。

ちちんぷいぷいおかあさんの会

ーこの活動を行うことになったきっかけを教えてください。

ポストカードを書き始めたのは、今から約20数年前のことです。当時は臨時の教職員として働いてました。結婚後、妊娠したのですが流産してしまい、なかなか子どもに恵まれませんでした。不妊治療で疲れ果てていた時、支援学校の作品展に訪れ、ある作品に出会いました。重度の障害を持った男の子が、実習の先生に宛てたポストカードでした。そこには「ちちんぷいぷい、かりん先生がニコニコになりますように」と書かれていました。私自身、張り詰めていた時期だったので、その言葉にとても救われ、その男の子に会いに行きました。彼のように言葉を紡ぎたいと思ったのが、ポストカードを書き出したきっかけです。



ー転機とも言える出会いだったんですね

彼からたくさんのことを学んだんです。彼は自分ができることを最大限やっているのに、私はできないことばかり目に入って…。だから私もできることをやろう!と、体を温めたり犬を飼ったりしてたら、子どもに恵まれたんです。不思議ですよね。そこからは3人の子どもを出産し、悩んでいた時期が嘘のように慌ただしい子育てが始まりました。そこから10年ぐらいは子育てと主人の仕事を手伝う日々を送っていたんですが、子どもが大好きだったので子どもたちに関わる仕事をしたいと保育士の資格を取得。約5年間、泥まみれになって保育園で働きました。

その保育士時代に、虐待など子どもたちが直面するいろんな状況を目にすることになり、関われば関わるほど子どもたちの後ろ側に必死に頑張るお母さんたちの姿が見えてきたんです。「私に何ができるんだろう…」と考えていた時、ちょうど、以前ポストカードを買ったという方から「カードを見て元気になりました」というお手紙をいただき、もう一度、カードを書きたい!と思って、兼業できる園に移動。それで『ポストカード屋ちちんぷいぷい』という屋号をつけて、本格的に活動を始めました。それが今から4年前です。



実は、生みの母は産後うつで亡くなり、その後は再婚した母に育てられました。育ててもらったことは今でもとても感謝していますが、手をあげられる中で育ちました。辛かった思い出ですが、時間が経つにつれ、育ての母は悪くないんだと思えるようになったんです。子育てに行き詰まり、ただどうすればいいか分からなかっただけ。悪いのは、そこに知識や逃げ場がなかったからだと…。

自分も子どもを持ちいろんなものが見えてきた時に、私がお母さんたちと直接出会うことで、同じ過ちや苦しみを少しでも減らすことができるかもしれない…という思いにたどり着きました。こんな大変な世の中で子育てをし煮詰まり、虐待が増えているという事実があるなら、今から自分が出会う子どもたちとお母さんたちといい関係が築けたら、何かがわかるかもしれないと。だから、サポートする立場になりたいと思い活動を始めたんです。



ーご自身のいろんな経験も含め、この活動に繋がっているんですね

子どもに関わってきた自分の過去をずっと辿っていくと『子ども』という原点があり『母と子』という絶対的なテーマがあるんです。日々子どもに関わってきて分かるのは『子どもはお母さんのことが大好きだ』ということ。私は残念ながらその感覚を持てませんでしたが、子どもができて私自身も実感しました。この『光の園』にも児童養護施設があるので、様々な思いを抱えているお子さんもいます。子どもにとってお母さんという存在はとても大きく大切なもの。共に暮らせたらと願わずにいられないけれど、幸せの形は1つではないのかもしれません。



スマホやゲームをいじっている現代の子どもたちの表面的な部分を見て「今の子どもは何を考えちょんかわからんな」という大人もいます。だけど、直接会ってみると昔も今も何も変わってない部分もたくさんあり、子どもってすごく素敵な存在。私は大好きなんです。子どもたちの笑顔が見たかったから、それを辿っていくとお母さんの笑顔にすることが子どもを笑顔にするということが分かったんですよね。

今はだいぶ解消されましたが、以前は待機児童問題で苦しんでいるママもいましたし、この1年間はコロナの影響で、里帰りもできず出産後はずっと家にこもって子育てで辛い思いをしているお母さんもきっとたくさんいると思います。いろんな悪条件の中で子育てをしているママたちがここに来ることで、少しでも安心してもらえたら嬉しいです。



ー山地さんとお話ししてると元気が出ます。「頑張ろう!」って思えます

でもね、ママたちはいつも頑張ってるから頑張ってほしくないの。頑張らなくていいんですよ。ポストカードを作るという目的ですが、カードはあくまでもツールで手段。書きながら、お母さんたちとたくさんの話をしたいんです。

今、イヤイヤ期や反抗期に直面して「小さい頃はあんなに可愛かったのに』と壁にぶつかっているお母さんもきっとたくさんいると思います。でもね、私は子どもは宇宙人だと思ってるんです(笑)。宇宙人である子どもを地球人にしようとお母さんたちは毎日必死なんですよね。そう思うとちょっと心が軽くなりませんか?(笑)。



子育てって波があって、絶対に何度も凹む時があるんです。保育の視点からすると、その窪みは着実にぐーんと成長する時なんです。だけど当事者は必死。当時直面して私たちも分からなかったんです。離乳食に悩み、寝ないことに困り、イヤイヤ期で爆発しそうになり、反抗期で頭を抱え…。そんな子どもの年齢に応じた困りごとを、私たちはすでに通過したからこそ分かったことがたくさんあります。今、頑張っているお母さんたちに、それを通り過ぎたおばちゃんたちが「頑張っちょんな!でも大丈夫で」と伝えてあげることで救われるんじゃないかと思うんですよね。シングルママとして奮闘している人、働きながら子育てしている人…ママたちの頑張りを見てると、通り過ぎた人たちが知らんぷりするんじゃなくて、大丈夫だよという一言を送る場がもっとあってほしいと願っているんですよね。私は今51歳ですが、同世代の人たちはきっと、子育てもひと段落して自分の人生を振り返る頃でしょう。自分の輝く時間を見つけると共に、今必死に頑張るママたちがいることにも少し力を貸してもらえたらと思います!

別府市のママだけじゃなくても大丈夫です。ぜひこの「光の園』に気軽に足を運んでください。一緒にポストカードを作って楽しみましょう。

ちちんぷいぷいおかあさんの会

「光の園』
別府市荘園8組
http://beppu-hikarinosono.jp/

「ちちんぷいぷいおかあさんの会』
場所:「光の園』
別府市荘園8組
http://beppu-hikarinosono.jp/
内容:オリジナルのポストカード制作
日時:毎月第3水曜10:30~12:00
参加料:300円
問い合わせ:090-9496-0321(山地)

「ポストカード屋ちちんぷいぷい』
オンラインショップ
http://www.puipui-nin.com/

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