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2021.12.14

男性医療人がつながり
向き合う育児参加

医療人パパの会「ザ・ペンギンズ」

女性医療人キャリア支援センター 中田 健さん
小児科 助教 医局長 岡成和夫さん
循環器内科/高度救命救急センター 米津圭佑さん

大分大学挾間キャンパスで働く男性職員で構成される医療人パパの会、通称「THE PENGUINS(ザ・ペンギンズ)」。病院で働くすべての人が、子育てと向き合いながら、仕事やキャリアをあきらめることなく、活躍できるように様々な活動を展開しています。メンバーは、保育園の送迎をはじめ、PTAへの参加、オムツ替えなど、実際に子育てを行う現役パパたち。今回は、女性医療人キャリア支援センターの中田医師、小児科の岡成医師、循環器内科/高度救命救急センターの米津医師の3人に、ペンギンズ誕生のきっかけや活動内容、男性の育児参加、今後のビジョンなどを伺いました。

ペンギンズの活動が
現場の意識を変える

―ペンギンズ誕生のきっかけは?

中田:
私自身、現在、中2の男の子、小6の女の子、小1の男の子の子育て中で、妻も皮膚科の医師として働いています。私も妻も同じ医師免許を持って働いているので、本来であれば同じようなキャリアを重ねるのですが、夫である私は、新たな資格を取得したり、研修出張に出向くことが可能なのに対し、妻の場合は子どもが生まれるたびにキャリアを中断し、子育てに専念する時間を持つことになります。私は、子どもが生まれたときは、1日しか育休を取得しませんでした。両親のサポートも受けずに、妻は毎日仕事と子育てを両立させようと必死でした。そんな姿を目の当たりにして、ここで働くみんながそれぞれの状況を理解し合う、多様性のある環境にするために意識改革が必要だと思い、ペンギンズを立ち上げました。グループ名は、オスも卵を温め子育てするペンギンからヒントをもらいました。昔は、「男性が育児参加なんて」と、鼻で笑われることもありましたが、徐々にメンバーも増え、職場環境は徐々に変わってきたと感じています。



―岡成さんは医局長としてペンギンズにどのようなイメージを持っていますか?

岡成:
実は私たち小児科も、子育てに関し、男性、女性の区別なく積極的に参加できる環境づくりへの取り組みを始めようとしていた時期でもありました。ペンギンズの取り組みを院内報で目にして、自分たちの考えは今はマイノリティかもしれないけれど、方向性としては間違ってないのだなと実感できました。医療業界はまだまだ古い体質の部分もありますが、ペンギンズとも機会があれば一緒に男性の育児参加を考え、カタチにしていきたいですね。



―ペンギンズはどのような活動を行っているのですか。

中田:
これまでは、メンバーで集まり、お互いの状況を報告したり、悩みを相談したりすることが多かったのですが、先日、パパ料理研究家の滝村さんをお招きしてオンライン開催ではありますが、パパ向けの料理教室をしました。

第1回パパの会の様子


第3回パパの会の様子


第6回パパの会はオンラインで料理教室を開催

子育ての経験が
スキルアップにつながる

―ペンギンズをきっかけにスタッフ同士のつながりが生まれているようですね。

中田:
私は6年前からペンギンズの活動をしていますが、岡成先生が医局長を務める小児科には女性医師が多く、育児に対して理解のある男性医師も多いと伺い声をかけました。男性小児科医は全員育休を取得した実績もあり、「m3.com」という医療従事者が読む雑誌にも掲載されましたよ。循環器内科医の米津先生が、双子が生まれたのをきっかけに、育休を1ヶ月取得した話を聞きつけ「ぜひお会いしたい!」と今回の座談会にお誘いしました。

―米津さんの育休取得について教えてください。

米津:
妻は県の医務職員として働き、現在は育休中です。お互い似たような職種なので、仕事のハードさは理解しあっていたのですが、私自身は子どもが生まれたばかりの頃は、朝早く出勤して、夜遅くに帰るような生活をしていました。しかし、日を追うごとに妻の疲れが気になり…このままでは妻に育児を任せっきりになってしまうと、私も思い切って育休取得の申請をしました。



―岡成さんは育休は取得されましたか。

岡成:
私は取得しませんでしたが、実は妻から「産後、もっとこうしてくれていたら…」と、未だに言われるんです。忙しいからという理由で子育てを諦めてはいけないなと少し後悔しています。共に働くスタッフがみんなで協力すれば、ドクターでも育休は取得できることを証明したいというのが正直な気持ちです。3年前から男性の育休取得を推進し始め、小児科の男性は100%取得できるようになりました。小児科の一員として働くうえで、父親、母親の気持ちに寄り添うということはとても大切。子育ての経験そのものが仕事に活かせるのです。だからこそ男性医師も積極的に育児するべきだと思っています。



―先輩たちもいる中で、育休取得に迷いはなかったですか?

米津:
正直迷いはありました。しかし、育休の相談をしたところ、先輩ドクターが私の気持ちに寄り添ってくださいました。循環器内科では男性の育休取得実績がなかったので、「これを機に取得してみてはどうか」と教授にまでかけあってくれたので、スムーズに取得することができました。現在、循環器内科と救命救急センターを兼任しているのですが、救命救急センター長からもすぐに許可をいただき感謝しています。

公園へ出かけたり、絵本を読んだり、お子さんとの時間を大事に


―医療の現場では育休中はどのようにして仕事はカバーするのですか?

中田:
医療の進歩によって、昔に比べて当直中に患者さんから呼ばれることは少なくなりましたし、今は個人の力に依存しすぎないチーム医療が重視されています。スタッフがいつ抜けてもいいように、周りでカバーできるような環境も整いつつあります。能力の高い人材を揃えるのも大切ですが、誰がいなくなったとしても、現場を回していける体制作りを意識しています。

未来の医療人へ
積極的な情報発信を

―岡成さんが今後、ペンギンズに求める活動はありますか?

岡成:
これまで、学生向けのキャリアプランに関する講演会や男性の料理教室など、さまざまな活動を行っていますが、どれも素晴らしい取り組みだと思います。自分たちの世代は、当時は男性子育て参加の情報が少なく、意識も低かった部分がありますので、学生たちに向けた取り組みを継続的に行ってほしいですね。

育休中にお子さんの沐浴を行う小児科の先生


―学生の頃からそういった機会があると、医師としてのキャリアがスタートしても、育児参加への意識も異なりますね。

中田:
先日、学生100人の前で米津先生に育休取得に関して講演を行ってもらいました。数年後に彼らが医局に入ったときに、「育休を1ヶ月取得した先輩がいるんだから、自分も取得したい」と周囲に遠慮することなく、アクションを起こせると思います。そういう意味でも未来の医療業界を担う学生たちの意識改革にも役立ったのではないかと思っています。

米津:
若い世代が、仕事のキャリアだけでなく、プライベートな出来事も含んでライフプランを考えることが重要だと思います。育休だけではなくて、介護休暇などを取得する可能性もあると思うので、誰でも、いつでも必要な休暇を取れる職場になるといいですね。



―今後のペンギンズのビジョンを教えてください。

中田:
今後は、もっと家事・育児のスキルアップのための講座をはじめ、子どもを交えてイベントを実施するのも良いのではないかと思っています。学童保育のことや、食材宅配サービスを使ってみた感想など、パパ・ママに役立つ情報を積極的に発信していきます。私たちがボトムアップの意識改革を行うことで、育休取得もどんどん広がり、男性の育児参加への注目が高まってほしいですね。

医療人パパの会「ザ・ペンギンズ」

大分大学医学部附属病院 女性医療人キャリア支援センター
https://www.oita-carsupport.jp/

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