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2024.01.30

誰かの気づきや出会いにスポットを当てる
「照明係」になれたら

お悩みコンシェルジュ Endne(エンデネ)

お悩みコンシェルジュ Endne(エンデネ) 布施順子さん

昨今「LGBTQ※Lesbian(レズビアン=女性同性愛者)、Gay(ゲイ=男性同性愛者)、Bisexual(バイセクシャル=両性愛者)、Transgender(トランスジェンダー=出生時に割り当てられた性別と、ジェンダーアイデンティティが異なる人)、Queer/Questioning(クィアまたはクエスチョニング=性的指向・性自認が定まらない人)」、いわゆる性的少数者「セクシュアル・マイノリティ」への理解が不可欠とされ、様々な取り組みが進んでいます。

青森県の言葉で「いいんじゃない?」という意味と、「縁」という言葉をかけ合わせた、屋号の「Endne(エンデネ)」。青森県出身の布施順子さんは、自身も幼い頃から性別の違和感を感じていた一人でした。早稲田大学卒業後、公的機関で障害者雇用に関する業務に従事し、転勤で大分へ。その後、仕事を辞め「お悩みコンシェルジュEndne(エンデネ)」を立ち上げました。国家資格の公認心理師を取得し、現在は小学校・中学校のスクールカウンセラーとしても勤務しています。実践で培かった専門性を活かし、個人・企業・福祉機関に向けて、LGBTQ相談や研修、就労コンサルティングなどの支援活動を行なっています。

ー「エンデネ」を立ち上げた経緯を教えてください

以前、障害者雇用に関する仕事に携わっていました。身体障害や精神障害、発達障害など様々な障害者の方の就職支援をサポートしてきましたが、その中で、LGBTQに関する企業からの相談などもあり、専門の知識を持って対応することが求められていると感じていました。でも、組織としては障害者雇用がメイン業務であったため対応が難しい状況でした。

私自身も、学生時代に性的マイノリティ当事者であると自覚したり、家庭自体が機能不全だった時代もあり、以前の仕事や現在の活動を通じ、自分や、自分の家族を振り返っているんだと感じました。メンタル疾患や発達障害、性的マイノリティの分野に関し、大学から学び続けている私が〝やらない理由はない!〟と「エンデネ」を立ち上げました。

あと、グレーゾーン…いわゆる発達障害傾向にあるけれど、診断までに至らない微妙な層の人たちに対し、ノウハウを持ったサポートを行いたいと考えています。



ー布施さんご自身が当事者だったのですね

幼い頃から性別に対する違和感を感じていた私は、大学時代でアセクシャル(他者に対して性的欲求・恋愛感情を抱かないセクシュアリティ)を知り、「モヤっとしていたのはこれだったのか」と腑に落ちました。

前職を辞め、現在はスクールカウンセラーとして小学校・中学校にて勤務していますが、様々な生徒さんやご家庭、親御さんと出会い、不登校や引きこもり、子どもだけではない大人の発達障害などの悩みを抱える人たちを見てきました。現代は生きづらさを感じている人たちが多いと、仕事や自身の経験などを通じて実感し、この活動で「誰かの人生にスポットを当てられる〝照明係〟になりたい」という想いが生まれました。

大分はLGBTQに関する窓口がなく、唯一活動していた当事者たちの集まりもコロナ渦で止まっていました。相談窓口として、公認心理師協会の電話相談が数年前に始まったのですが、そのぐらいでした。



ーなぜ「照明係」なのですか?

学生時代、演劇をやっていた経験があり、舞台の照明家に憧れていたんです。でも残念ながら私はそこに携わることができませんでした。そんな心残りもあり、誰かの気づきや出会いのきっかけになって人や情報をつなげ、そこにスポットを当てることができる「照明係になれたら…」と考えるようになりました。

「えんでね?(それでいいんじゃない?)」と気軽に言い合え認め合える距離感で、当事者だけでなく、そのご家族にも寄り添える存在になりたいです。

ー「エンデネ」の活動内容を教えてください

大きく2つの柱があります。一つは「LGBTQ」に関する相談や勉強会、企業向け研修などの活動。もう一つは、生活や仕事に困りごとがある人を対象とした支援サービスです。

昨年の6月に国会でLGBTQの理解増進に向けた法案が可決しましたが、まだまだ認知されていないと感じます。そこで、さらなる周知を広めたいと、昨年の7月に一回目の勉強会を開催しました。その際、医療関係、就労関係、行政、教育関係の方々に参加いただきました。大分市内でLGBTQの当事者の集まりを主催する方との出会いもあり、そこで様々なご縁ができてネットワークが広がり、県内の高校や、教職員組合の方々に向けての研修を行うこともできました。11月に、LGBTQの理解とアライを増やそうという趣旨で「九州レインボープライドパレード」というイベントが行われ、そこで相談ブースを出店しました。行動を起こすことで福岡で繋がりが広がり、それを原動力に動いて…ということを繰り返した1年でした。多くの方に応援してもらえ、今、やりたいことができているなと実感しています。





ー活動を始めてよかったと実感した出来事はありますか?

高校で行われたLGBTQの授業を見に行き、先生方に対して講評をお願いされたので話したんです。その後、開催した勉強会に、担任の先生から教えてもらったという教員志望の学生さんが「教壇に立つならLGBTQを知らなきゃダメだから。もっと知識を深めたい」と、自主的に勉強に来てくれました。将来を担う若い人たちの行動に、未来への希望が持ててすごく嬉しくなって「こちらこそありがとう!」という気持ちでいっぱいになりましたね。


ー一般の方が参加しやすい活動があれば教えてください

自身のセクシャリティなどでモヤっとしている方と、そのご家族や関係者の方を対象に「モヤるユースの居場所・ツドエバ」という場所を提供しています。話をしたり、本を読んだり、勉強をしたり、自分の好きな時間をそこで過ごしてもらい、だけどそこに来れば、笑えて、何かが変わるかもしれないよ…という場所にしたいんです。2月には竹田市と佐伯市、3月は大分市で実施する予定です。25歳以下は無料ですので気軽に来てほしいです。気になる方は「エンデネ」のインスタに詳細を掲載しますのでチェックしてください。



ースクールカウンセラーのお仕事もしているんですね。現場で何か感じることはありますか?
 
エンデネの活動と、スクールカウンセラーの仕事は通じるものがあると常に感じます。「たとえ学校に行けなくなったとしても、人生は終わらないよ」と、本人や保護者の方にいつも伝えているのですが、私の姉が不登校で高校を中退した経験や、妹が大学を中退した話を我が家の事例としてお伝えしたり、不登校の大学生が一年旅をして元気に過ごしている話や、被災地を訪れた後大学を卒業し就職をして結婚をしたという話など、様々な事例を聞くことで、少し希望を持てるのか皆さんの顔が上がるんですよね。

教育現場って、未来に意識を向けさせる役割を担っていると思うんです。そういう個々の生き抜く力が発揮できるようなお手伝いができたらって思うんですよね。
 
あと、やはり女性にかかる負担が大きいなと感じます。学校に相談に来るのは圧倒的にお母さんで、次はおばあちゃんが多いんです。ご主人が単身赴任でワンオペで全てを担っているお母さんや、育児を担っているおばあちゃんなど、いろんな家族の形があります。そんな女性たちの心が軽くなるアプローチも今後必要だなと感じますね。子どもの支援と家庭の支援ってセットで、特にお母さんはキーポイント。どこかで不満や不安を吐き出せる場所を提供したいと考えています。



ー今後の展望を教えてください

とりあえずは「ツドエバ」をいろんな場所で開催したいというのが今年の目標です。様々な問題が複合して絡み合っているので「性」には限定せず、「来たい人は来て!私がいるから」というスタンスでどんどん実施していきたいですね。アウトリーチ型の支援を目指し、私たちが当事者に会いに行く活動を増やしていき、今年は昨年行なっていた活動をもっと立体的に展開していきたいです。



これまで導かれたように生きてきて今の活動があると感じています。やらない理由を並べるより、どうやったらできるのかを考えながら、さらに学びを深めて自己研鑽を積むことも継続していきたいですね。私の活動がみんなの役に立ち、自分が光源となって皆さんを照らせる存在になっていきたいです。

お悩みコンシェルジュ Endne(エンデネ)

お悩みコンシェルジュEndne
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