2018.04.01
塩塚淳子さん(りあらいず 代表)
「人材育成コンサルティング」「キャリア開発支援」「女性活躍推進支援」「パーソナルカウンセリング」。4つの柱を軸に、働く人、そして企業のチーム力アップのサポートを行うキャリアコンサルタントの塩塚淳子さん。そんな彼女に、女性が社会で活躍するために大切にしてほしいことを伺った。働き方に悩む女性たちに寄り添う塩塚さんが、ロングスパンで人生設計を考えることの大切さ、「人生の見通しづくり」を自身の体験を踏まえて本音で語る。
ー地方銀行での約35年のキャリアを経て、キャリアカウンセラーの道に進まれたきっかけは何ですか?
私の生きる上でのキーワードは「役に立つ」なんです。それをずっと考えながら役職定年を迎えました。行員生活の1/3の期間は人材開発に携わる仕事でしたので、その経験を自分のスタイルで届けることが、「社会」や「人」の役に立つことになるのではないかなと思ったのがきっかけですね。
ー塩塚さん自身が、企業の中で経験したこと、人材開発のセクションで培ったことが今の仕事につながっているのですね。
そうですね。私が入社したのが1982年で、84年に男女雇用機会均等法が施行されました。政府が女性の活躍推進などに動き出したんですね。その流れのなかで、日本のいろんな企業が、女性の管理職を増やそうと取り組み始めたわけです。でも昨日まで事務をしていた女性が「今日から管理職だよ」と告げられて、「すごく戸惑っています」という声も、当時はよく聞いていました。企業の期待と女性社員の戸惑いのギャップを感じましたね。それを埋めて、女性が自信をもってキャリアアップにチャレンジできる環境整備。それが今の私の大きな仕事のひとつです。
ーキャリアカウンセリングでは、具体的にどのようなやり方があるのですか。
方法やアプローチはさまざまですが、そのひとつに「パーソナルカウンセリング」があります。自分の置かれている環境を正しく把握し、自己の能力を最大限に発揮するために、何が必要かを考えるお手伝いですね。その答えは皆さんの中にあるんですが、どんな問題がいくつあるのかが分かると、優先順位がつけられるようになる。すると自分が今やりたいこと、やらなければならないことが整理できるようになります。
ーママを含めた働く女性をカウンセリングする機会も多いようですね。
入社したときは独身でも、その後、結婚して、お母さんになって…女性にはライフステージの中で、いろんな役割を担うようになります。結婚する前だと、何歳くらいで結婚するとか、結婚したいけどパートナーがいないとか。結婚している人は、子どもや旦那さんなど家族との時間と自分のキャリアを両立させなくてはいけないケースも出てきます。例えば、仕事としてはやりたいことはあっても、家族のライフイベントがあると今はムリかも…ということはありますよね。当然、一人ひとり悩みも違いますので、こちらも、その人にとってベストなプログラムを届けるように心がけています。
ー管理職やプロジェクトリーダーを務める女性も多くなりました。職場内で思うことが言えないとか、人との関係性がうまくいかないとか、仕事を任せられることのプレッシャーも少なくないようです。
職場でのポジションが上がっていくことと、子どもの成長時期の重なりをどうするのか。仕事においてキャリアアップのチャンスの時期が来たのに、家庭のこと、子育てのことが両立できず苦しんでいる人がたくさんいますね。キャリアカウンセラーの仕事は「整理」と「本人の中にある答えを引き出す」こと。プレッシャーを感じて、すごく悩んでいる人に対しては、「こういう考え方はできない?」、「こういう風にしている人もいるけど、どうですか?」と寄り添うようにしています。
ー自分の心の中にある「答え」を整理することが大切なんですね。
そうですね。整理する機会を設けることで、客観的に自分のことを見ることができる。私たち人間は「やりたい」というイメージを持つと脳のRAS(Reticular Activating System)がそのイメージに合わせて情報収集をすると言われています。イメージが具体化されているものは必ず実現するんです。だからこそ「目標設定をきちんとしましょう」と伝えています。
たとえば、私は「夢ノート」というものを作ってやりたいことを書いています。かなり実現できていますね。長年、子供たちに金融のことを伝える活動もしていきたいと思っていたのですが、昨年は「夢授業」といって小・中・高の学校に出向き自身の職業について語るボランティア活動をしている素敵な皆さんに出会って、それも叶っています。正直、今すぐできないこともあるんですよ。でも、それで全然かまわない。条件が整ったらできる、今はできなくても5年後、10年後にその時期がやってくるかもしれないんです。
ー5年後、10年後と考えるとずいぶん楽な気持ちになりますね。
環境が変われば、やりたいこととや興味も変わって当然。その時はノートも消したり書き換えたりすればいいんです。夢ノートに書くのは「目標」ではなく、「人生の見通し」。漠然と悩み続けるのではなく、純粋に自分がやりたいことを書き出しておく。定期的にそれを眺めながら、また新たな興味が湧いたものがあれば、書き足したり、入れ替えればいいんです。
ー企業の中のポジションだけでなく、独立や起業を選択する女性も増えてきました。
女性起業家の皆さんと話していると、利益はもちろんですが、社会の役に立ちたいとか、女性の感性やこれまでの人生経験を活かしたいと考えている方が多いですね。私、自身も振り返れば、中間管理職の時に、絶対にこれをした方がいいと思っても意見が通らないとかたくさんありました。その時思ったのは“自分がやりたいようにやるには自分が経営者になるしかない”でしたから(笑)。独立や企業を考えている女性にアドバイスするなら、最初からオリジナルじゃなくてもいいんだよと。今はいろんな手段で情報を集められるので、好きな働き方、自分のやりたいことに近いイメージの人を見つければいいんです。それが理想に近づくための第一歩ではないでしょうか。
ーキャリアアップや起業を志す方がいる一方で、子育てと仕事の両立がうまくいかないと悩んでいるママに対してアドバイスはありますか。
人生はいろんなことが起こります。自分の思い通りにならないことも少なくないでしょう。子どもが小さいから手がかかる、両親と一緒に住んでいるからストレスが…そんな現実はあるけど「でも私はこうありたい」という気持ちを失くさないことが大切です。思い通りにできない環境なら、今はそのタイミングじゃないんです。最近ママたちによく言います。「子どもとべったり一緒に居られる期間はほんの数年なんだから焦らないでね」と。今すぐできなくても、ちゃんと準備して、その時に備えていれば、きっと大丈夫です!
ー自身の様々な経験も含めて「女性が働くということ」について、雇用する側がどのように変わっていくことが重要だとお考えですか。
女性が活躍する社会を国も推進していますから、男性と同じように、女性にもチャンスと可能性は等しく認められるべきでしょうね。そのためには、雇用する側が女性のライフスパンを単年で見るのではなく、結婚や出産など、5年、10年後を見越して接するという意識改革が必要です。女性自身も、多様な働き方の中から理想のスタイルを見つけて、ロングスパンで人生の見通しを立てていくことが大切なのではないでしょうか。