2018.10.05
三浦康司さん(GOEN株式会社 代表)
ファミリー層を中心に、マイホーム購入希望に対して親身なアドバイスを届ける「おうちの買い方相談室」。オフィスを訪ねると、事業の中核を担う、おうち購入アドバイザーをはじめ、ママスタッフがイキイキと働いていた。「私たちは住まいのアドバイザーとして、子育て世代の困りごとを解決するという想いで仕事をしています。それなのに社員の「困りごと」も解決できずして何ができるのかと思いますね」と語る三浦康司代表。女性が活躍できる職場づくりに柔軟なアイデアで取り組む同社にスポットを当てる。
-「おうちの買い方相談室」は、男性スタッフと女性スタッフの比率はどれぐらいですか?
「おうちの買い方相談室」は、私を入れて男性が3名、女性が4名です。それにグループ会社で運営している保育園は女性が9名、保険代理店には、男性2人と女性が2人です。全体的に女性が多いですし、もちろんママもたくさんいます。「おうちの買い方相談室」で働く女性スタッフの半分はママですね。
-まさに今回の取材にピッタリの職場環境ですね。女性スタッフの採用は積極的に取り組んでいますか?
仕事のスキルも大切ですが、「ヒューマンスキル」を弊社は重要視しています。お客様からどう思われているのかがポイントです。ものすごく優秀ですが、冷たくて態度の悪い人、感じが良くて一生懸命頑張る人のどちらを選びますか?という話になると思います。その点に関しては、男性、女性と意識しているわけではないのですが女性…特にママは優秀な方が多い気がします。
-面接の際は、何を重視していますか?
最も大切なのは「コミュニケーション能力」です。「会社にとってどんな人を採用したいですか」と聞かれたら「安心できる人」と答えます。それは何かというと、会社全体で大切にしている「縁」をつなぐことができる人。そこが私たちの「存在価値」だと思っています。子育て世代にどんなご縁をお届けできるのかというところを常に考えることを大切にしていますね。そのためには「個のスーパースター」はいらないと思っています。一人のスーパースターが活躍する会社ではなく、平均的に活躍できる会社になりたい。同じくらいの実力を持つ人がチームワークを第一に考えて仕事をする「協調性」が全てだと思っているので、みんなで一つになって、お客様との縁をつなぐことができることを重視しています。
-キャリアやポテンシャルがあるママを雇うことは企業にとってプラスになりますが、その一方で、働く時間などママからのリクエストもあると思います。
いろんな理由で「働きづらい状況」にいるママが多いことも、面接などを通じて実感しますね。働きたいと願う優秀なママが大分にもたくさんいると思います。我々がそういった優秀な人を採用するためには、何が必要なのかを考え、積極的に出会う機会をつくることが大切だと思います。パートタイムは限られた時間の中で働くことができますが、正社員は労働時間の問題が出てくると思います。弊社では定時に仕事を終わらせることを大事に考えています。よく住宅系の会社は、夜や土日にお客さんと面談をすることもあると思われがちですが、実際はそういうケースは少ないんですよ。
-「おうちの買い方相談室」で働くママは、やはり住宅系の会社で働いた経験があるのですか?
そうですね。1人はもともと住宅系のマンションデベロッパーの会社にいて、出産を機に退職しましたが、弊社に復職しました。こちらもキャリアがあるのは心強いですし、ご家族で来店されるお客様もママの立場で考えてくれるスタッフが対応すると喜んでいただけます。でも、彼女が入社する際には「不動産系の仕事は好きだけど、土日の出勤やフルタイムで働くことが難しい」と相談されましたね。
-働くママは、「仕事」「家事」など、1日の中で目まぐるしくステージが変わりますから。
臼杵市から通っているママ社員もいますが、朝の6時半には娘さんが家を出るらしいんです。ということは、それまでに家事などの準備を終えないといけません。それから1時間かけて出社していますし、大変だと思いますね。だからといって甘やかすつもりはないのですが、会社の中で僕たち男性が女性に対してできることはあります。別のママ社員の娘さんはサッカーをしていて、全国大会にも出場しています。そんな時に「応援に行ってあげて」と送り出せる環境であることが大切。これは私の力ではなくて、社員みんなの人間性のおかげだと思っています。弊社では、夏休みになると社員の子どもが社内のテーブルで勉強することもあるんですよ。会社に子どもを連れてくる(笑)。人が増えると賑やかになりますし、そういう雰囲気は良いですよね。私たちは住まいのアドバイザーとして「子育て世代の困りごとを解決する」という想いを持って仕事をしていますので、社員の「困りごと」を解決できずして何ができるのか、と思いますね。
-やはり何か会った時に、気にしすぎずに「休みたい」と言えることが大切だと思います。「おうちの買い方相談室」では、そのような相談事をしやすくするために意識的に行っていることはありますか?
社員一人ひとりとの面談は定期的に行っています。働く環境において「できること」と「できないこと」の区別は、一人ひとりと話してみないとつけられないんです。仕事は楽しくやらなきゃいけないし、責任感を持って取り組むべきだからこそ、社員と向き合うことは何より大切だと感じています。
-「おうちの買い方相談室」では、社員全員が集まってミーティングする機会も多いのですか?
ミーティングで大切なのは、「正しい意見」「正しくない意見」は別として、意見が出てくること。13時に会議をすることが多いのですが、その時は全員で集まってお弁当を食べています。「全員で一緒に何かをする」ということが大切だと思いますね。
-会社として、ママの労働時間に対してどのようにお考えですか?
就業時間は9時~18時なんですが、私個人が、仕事は大好きなんですけど、遅くまでダラダラとすることが美徳だと思わないので、やるべきことをしっかりやれば良いのではないかと。仕事とプライベートのバランスも大切ですね。プライベートを大事にすると、仕事にも身が入ると思いますね。
-具体的に、社内でのスキルアップやモチベーションアップのための取り組みは何かありますか?
仕事のスキルアップ研修は定期的に行っていますが、それだけではないユニークな取り組みもしています。脳科学の先生にお越しいただき、「コミュニケーション」や「脳科学」に関することを学んだり、メンタルに関するセミナーを開いてもらったりしています。これらは全て「チームビルディング」のためですね。
-学びの中に楽しさや気づきの要素があるんですね。
そうですね。弊社の多くのスタッフは「上級組織診断士」という資格を取得しています。その資格で何かできるかというと、家族の組織診断ができるんです。生年月日から、家族みんなの「取扱説明書」というものをお作りします。これはお客様へのサービスになりますし、子育て世代においては、ご主人や奥様から本音を聞ける良いきっかけにもなります。これからのビジネスにおいて「良いものを届ける」というのは当たり前のことだと思うんです。それ以上に「関係性」が大事になってくると思うんですよね。会社としてお客様との「関係性」を築くことが会社の武器にもなると思いますし、多くの人が仕事をしやすい環境が実現できると思っています。
-これまでの取材の中で、ママのサポート企業は「男性と女性が同じように働ける職場」というフレームを作っていると感じました。しかし「おうちの買い方相談室」は、「女性の良さを引き出す企業」のロールモデルになる気がします。そういったビジネスプランやイメージはありますか?
私としては、弊社は「女性の雇用を応援する」という偉そうな立場ではなくて、逆に「助けてもらう」という面の方が強いと思っていて。そこで「働く時間」がネックになるのであれば、こちらで協力できることはできる限り調整しますし、もし、子どもの預け先が無ければ保育園をつくれば良いと考えています。女性ならではの感性やパワーに助けてもらうことにすごく期待していますから。
-今後、ママスタッフに期待していることや、将来のビジョンは何かありますか?
「おうちの買い方相談室」はフランチャイズでお店を増やしていて、今は7店舗あるのですが、年内には16店舗に増える予定です。例えば、そういった新店舗で「リーダーとして働きたい」という社員もいれば、逆に一人ひとりのお客さんと話していきながら「家ができるまで寄り添いたい」という社員もいると思います。働くステージに関しては、働くママ自身が望むものだと思うので、まず自分自身が「いろんな可能性を見せる」ことが大事だと思っています。どうなりたいのか決めるのは彼女たち自身。そのチャンスを作ることが会社としてとても重要なのではないでしょうか。
-これまで「女性が働くためのこういう制度をつくりました」という企業に取材することが多かったですが、「おうちの買い方相談室」は、まず働く女性のニーズありきでフレキシブルに対応していると感じました。
例えば「17時半までしか働けない」なら「時短社員」という制度にしたり…就業規則をアップデートすればいい。私の座右の銘は「見切り発車」ですから(笑)。まずやってみることが大切。女性が働くことの大変さやいろんな問題を女性だけでなく、男性も、企業も一緒になって考えて、社会に対して発信していくことが、これから女性が活躍できる環境づくりへつながるはずです。
おうちの買い方相談室
https://oita-ouchi.net/