2018.11.02
平井貴美子さん(チャイルドおおいた 代表)
「子どもの笑顔のためには、お母さんたちへのサポートが必要」──18歳以下の子ども専用電話「チャイルドラインおおいた」の活動をきっかけに生まれた「ままのほけんしつ」。子どもに関わる人々へのサポートが、子ども支援につながるという考えから、おとなの心に寄り添うボランティア活動を開始した。ママに限らず、日常的に子どもに関わる人なら誰でも対象。「ママたちがほっとできる居場所になっていきたい」と利用を呼びかける。子ども支援活動の中から見えた現状やママの子育て支援への想いを、代表の平井貴美子さんに伺った。
─「ままのほけんしつ」を始めるきっかけは?
元々は「チャイルドラインおおいた」という、18歳未満の子どもたちへの支援活動からスタートしました。ママを支援したいという考えは「チャイルドラインおおいた」の立ち上げ時からあったのですが、子どもたちが生きやすい社会のあり方を考えていく中で、子育てと日々向き合うママへのサポートは大事だという思いが強くなっていきました。
─今のママたちの子育て環境は、昔に比べてどんなふうに変化しているのでしょうか?
「異年齢集団」に属していないということが挙げられると思います。今のママさんは、核家族化が進み、地域との関わりが薄くなって、年代が違うママさんと接する機会が少ないんですね。地域のコミュニティで年上の先輩ママさんと関わっていると、何か心配事があっても「うちも同じだったから心配しなくて大丈夫よ」と励まされることもあるのですが、同年代のママさん同士だと、ママ友グループの関係性に気を使ったり…いろいろと難しいですよね。異なる世代とのコミュニケーションの機会が、今のママさんたちは減っていると思います。そんなママさんたちを少しでも支援できたらという思いで、「ままのほけんしつ」をスタートさせました。
─ママを支えたいという思いから、「ままのほけんしつ」が生まれたんですね。
その原点は、先ほども話したように「子ども支援」なんですよ。ママが笑顔になれないと、子どもたちも笑顔になれない。だからママの気持ちを軽くしてあげたいというのが「ままのほけんしつ」のルーツなんです。ママの気持ちに寄り添って、ほっと一息つけるような場所を作ることが私たちの仕事です。
─「ままのほけんしつ」はどのような体制で運営されているのですか?
月2回、第二・第四火曜日が開設日で、3人のスタッフが常駐しています。直接来られなくても電話相談もありますし、「この日しか空いていない」というママさんがいたら開設日以外でも柔軟に対応していきたいですね。
─「ままのほけんしつ」という名前に込められた想いを聞かせてください。
学校の保健室って、どこかほっとできる場所というイメージがありませんか?不登校で教室には行けない子が、保健室だけには通えたり、保健の先生には本音を語ることができる。「ままのほけんしつ」という名前ではありますが、お母さんだけではなく、お父さん、おじいちゃんおばあちゃん、地域の人のご利用も歓迎しています。子どもに関わる人ならどなたでも対象です。
─確かに「保健室」にすることで、気軽に相談やお話ができるイメージになりますね。
実際に、「相談」ではなく、「話を聞く」「雑談する」ことが「ままのほけんしつ」の目的です。話したいことがあったら、気軽に遊びにきてほしいですね。「辛いこと」や「悩みごと」じゃなくてもいいんです。そもそも雑談もできない相手に、悩みごとを相談できるわけがない。とにかく日常会話を楽しむことがいちばん大事。その会話の中から、解決のヒントが見えてくることもあるんです。
─「ままのほけんしつ」が、ママへ伝えたいことはなんでしょう?
相談ごと、心配ごとがあるときも頼ってもらいたいのですが、まずはお茶でも飲みにきませんか? ということ。電話相談でも構いませんし、遊びに来る、お茶を飲みにくるだけでもいいんです。悩みがなくても、ただ誰かと話したいという気持ちがあれば、気軽に利用してほしいですね。何かがあったとき、安心して相談できる関係性を作っていきたいと考えています。
─「ままのほけんしつ」がこれから目指すビジョンを教えてください。
私たちの原点は子ども支援ですが、各所で連携が取れていないと感じています。相談先や支援団体はたくさんありますが、本当に支援が必要な人たちには伝わっていないんですね。私も「チャイルドラインおおいた」に関わっていなければ、発達障がいやDVという言葉を知らなかったかもしれません。こういう困りごとには、きっと解決策がある。例えば、ここがある、あそこもあるよ、という選択肢があることを知ってほしいと思っています。そのために、将来的には大規模な施設を利用した「支援団体の見本市」のようなイベントがあればいいですね。今は困っていなくても、将来頼ることがあるかもしれないじゃないですか。まずは知ってもらうこと。そして困難を抱えている人たちが、いかに立ち寄りやすい場所をつくりあげていくか。それが私たちの役割だと考えています。