2018.11.20
小野尚子さん(有限会社ジェイ・パック副社長)
大分銘菓「ザビエル」のパッケージをはじめとした、オリジナルパッケージの開発・製造を行なっている有限会社ジェイ・パック。繊細なつくりや丁寧なこだわりが感じられるパッケージはクライアントをはじめ各方面から高い評価を得ている。現在、スタッフは全員女性。「彼女たちがどんなライフスタイルを送りたいのか、それに対して会社はどう応えるか。一対一の対等な関係で考えてきました」と話すのは副社長の小野さん。職人気質の男性が多かった時代から、女性メインの職場へ変化を遂げたジェイパックの改革に注目した。
─現在、「ジェイパック」で働いている女性はどれくらいでしょうか?
役員を除いて8名いますが、全員が女性です。最初から女性が多い職場だったわけではなくて、私が入社した10年前は圧倒的に男性が多かったんですよ。仕事的には力仕事もありますので…。そんな中、私自身も含めて女性も長く働いていける職場にしたいと考えて、少しずつ会社の改革を進めていきました。技術職という性質上、せっかく身につけたものを結婚や育児で手放してほしくなかったんです。
─全員が女性ということですが、女性ならではの強みはどんなところに活かされていると感じますか?
女性ならではの丁寧で細やかな作業をしていただけていると感じますね。製造業なので、指示に対しての順応性の高さも助かっています。男性は職人気質の人が多くて、昔はマニュアルもなく「背中を見て覚えろ」という雰囲気だったと思います。その中で、これは必要なのか?もっとこうしたほうがいいのではないか?と、建設的な意見を女性スタッフが口にしてくれるようになったんです。
─建設的な意見交換があって、仕事の効率化が進んだんですね。
女性は何よりも無駄を嫌うところがあると感じています。特に主婦の方は家に帰れば家事も育児も待っていますから、帰宅したあともずっと忙しいんですよね。「作業が終わらないときは残業すればいい」という考えがまずないので、「どうやったら時間内に仕事を終わらせられるか」を考えてくれますし、意欲や集中力が素晴らしいです。
─パートから正社員になられた方もいらっしゃるのでしょうか?
仕事ぶりが素晴らしくて、会社からオファーした社員がいます。でも、最初は断られてしまったんですよ(笑)子どもが病気になったときのことや、保育園の行事で休みづらくなることを心配していたようです。もちろん、こちらも事情を理解した上でオファーしているので、会社でもできるだけのことはサポートをしていくから正社員として働いてほしいとじっくり話しあいました。
─具体的にはどのようなサポートをされていらっしゃるんですか?
女性が働く上では、自分のライフスタイルが充実していないと安心して働けないと思ったので、時短勤務の提案と、子どもの行事があるときは早退しても大丈夫だということを最初に約束しました。子どもが病気で面倒を見てくれる人がいないというなら、会社に連れて来ても構わないと。これは弊社のような少人数体制の中小企業だからこそできる強みですね。
─女性スタッフが多くなって来た中で、女性が働きやすい職場づくりのために、どのような改革をされたんですか?
休みを取りやすい環境を整えました。今は一人ずつに一週間のメニューを作っているんですが、その中で「今週はこれだけ生産してほしい」ということを伝えて、スケジュール管理は各自に任せているんです。それぞれが一人親方のようなイメージですね。成果を出してもらえたらどんな時間配分でも大丈夫なので、休みをコントロールしやすくなったと思います。
─火曜日は早退して水曜日は残業するという調整も自由ということなんですね。
以前は、正社員は8時半から17時半、パートは9時から15時の勤務だったんですが、これも変化して現在は様々なシフトで働いています。主婦の方って「この日は早く帰りたい」とか、「この日なら残業できる」とか、それぞれにいろんな都合があるんですよね。自分のライフスタイルに合わせて成果をあげてもらえたらと考えています。
─複数人でひとつの作業をするのか、一人ひとりが持ち場を持つのか、どちらのスタイルで作業をしているのですか?
どちらもあります。チームで働く部署の場合は、スタッフが早退するときや休みを希望する日は事前に打ち合わせています。弊社は「多能工化」を推奨していて、一人がひとつの機械だけを担当するということがありません。休んだ人の機械を動かせるスタッフが他にもいるので、スムーズにお休みを取ってもらっています。
─一人がひとつの作業を集中して担当せず、複数の作業を行える仕組みを取り入れているんですね。なぜこの働き方を推奨されているんですか?
担当制だった場合、一人のスタッフが休みがちだったり時短勤務だったりするとその機械で生産するものが間に合わなくなってしまいますよね。自分が休むことで、他の人に迷惑をかけてしまうことを心配するスタッフもいます。そこで、一人ひとりがマルチに働けるよう他の機械の使い方も覚えていこうということになりました。能力給制度を導入して、新しい機械を覚えると給料が増えるようにもしたんです。おかげで他の機械を積極的に覚えたいと言ってくれるスタッフが増えました。
─実際の現場はどのような雰囲気ですか?
8人しかいないので、みんな家族のような存在です。遠慮がないので、役員に対しても積極的に意見してくれるスタッフもいます。60歳以上のパートさんもいれば、20代の正社員もいますが、お互いの意見をぶつけあって理解を深めていくような感覚ですね。
─女性ならではのコミュニケーションが活発という印象を受けますね。
男性が多かった時代から女性が増え、改革を始めた当時は色んなことが大変だったんです。それを乗り越えてきた仲間だし、みんなががんばっていることを互いに知っているんですよね。残業が続いている社員に「今日はこれを子どもに食べさせてあげて!」とおかずをもたせたり、スタッフの間での差し入れもよくあります。困っている人を助けようという意識は全員が持っていると思います。
─小野さんにとって、「女性が活躍できる職場」とはどんなものだと思いますか?
「仕事」という点においては、女性も男性も環境はあまり関係ないと思っています。ただ、「働きたい」という気持ちを持ってくれている人や、「ジェイ・パック」でやりがいや楽しさを見つけてくれた人に対しては、会社も全力でその人を幸せにしてあげたいと思っています。その人のために何ができるのかを考え、そのやり方を貫いていくのが、私たちの目指すところですね。
─男性女性というよりも、「働いているその人」に焦点をあてて環境を整えているということでしょうか。
そうですね、一人ひとりに寄り添う仕組みをつくるということは、働く人が自分の能力を提供してくれているということなんです。会社は働きやすい環境をつくる代わりに、その人は自分の能力を最大限まで発揮してくれる。お互いが唯一無二の存在なんですね。正直な話をすると、自分の中で「やりがい」や「楽しさ」を見つけていかないと、製造業ってすごくハードだと思うんです。厳しさの中に、「ものづくり」への楽しさや喜びを見出してがんばってくれている人には、会社も全力でサポートしていきたいと考えています。