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2018.12.18

「ホームスタート」は、
ママが本来の力を取り戻していくためのステップ。

ホームスタートジャパン

土谷修さん(ホームスタートジャパン副代表理事)

「ホームスタート」とは、就学前のお子さんがいる家庭を対象とした訪問型子育て支援ボランティア。「ホームビジター」と呼ばれる地域の子育て経験者が、サポートを必要としているママへのボランティア活動を行なう。「ホームスタート」の活動内容は、家事や買い物代行などの物理的な支援ではなく、子育ての知識や技術的な指導でもない。あくまでも「傾聴」と「協働」の二本柱だ。「ただただ、ママと肩を並べ、寄り添うことが大事なんです」と語るホームスタートジャパンの土谷修副代表理事に、詳しい話を伺った。

元気をなくしてしまったママの「心」を応援したい

─ホームスタートとは、実際にどのような支援なのでしょう?

ホームスタートは、未就学児がいるご家庭を対象とした「家庭訪問型子育て支援ボランティア」です。ホームビジターさんと呼ばれる地域のボランティアが、週に一度、2時間程度ご家庭を訪問しています。子育て支援といっても、家事や育児を代行する物理的な支援ではありません。ママが抱えている悩みを聞き、心に寄り添ってサポートする「傾聴」と、一緒におうちで遊んだり、公園や児童館へお出かけする「協働」を二つの柱とした活動を行なっています。

─「ホームスタート」を開始したきっかけを教えてください。

保育園や幼稚園に通っていたり、児童館や支援センターを利用している家庭はたくさんあります。しかし、そこから孤立している家庭が5%程度存在していると知ったとき、既存の仕組みでは完全に支援を届けられないという壁にぶつかったんです。そのとき出会ったのが、イギリスのソーシャルワーカー、マーガレット・ハリソンさんの考案した「ホームスタート」でした。彼女は、ボランティアだからこそできるフレンドリーな活動に着目し、親の心を支援することで、子育て意欲が向上することを確信したそうです。風が通らない場所には、こちらから積極的に出向いて風穴を開けていく。これが「地域の人たちの力を借りた支援活動」のスタートでした。

─子育て相談ができる場所や支援サービスは行政や民間にもありますが、「訪問型子育て支援」ならではのメリットや特徴はどんなところでしょうか?

私たちが特に応援したいのは「自らSOSを出すこともできないほど疲れてしまったお母さん」です。元気が残っているお母さんは、自分で動いて情報を集めて、積極的に行政や民間のサービスを受けることができます。でも、子育てのストレスや疲労で元気をなくしていたり、周囲から孤立しているお母さんは、外へSOSを求めることができません。行政や民間のサービスの多くは、「利用者を待つ支援」なんですが、この仕組みだけでは助けてあげられないママがいるんですね。だからこそ、こちらから出向いて「届ける支援」が必要だという思いから、ホームスタートを開始しました。

ホームスタートジャパン

大切にしているのは「当事者性」と「素人性」

─ホームスタートでは、実際にどのような人がホームビジター(ボランティア)として活躍されているのでしょうか?

ホームビジターは、8〜9日間の特別な研修を受け、知識的、技術的に必要なことを養った地域のボランティアです。その中で、ママの悩みを受け止める「傾聴」や「共感」のスキルはもちろん、個人情報の管理についての知識をしっかりと共有します。ホームビジターさんの条件は、ただひとつ。「子育て経験者であること」だけで、年齢や性別は問いません。元々は利用者だったママさんが、現在ホームビジターとして活躍してくれている例もあります。

─プロや専門家ではなく、あえて「ボランティア」が活動を行うよさはどこにあるのでしょうか。

ホームスタートが大切にしているのは「当事者性」と「素人性」。というのも、専門家が行う活動は指導や教育といった面が強くなりがちで、「当事者性」という部分はかなり薄まってしまうんです。ビジターは、利用者と肩を並べて寄り添い、自分のことのように話を受け止めながら、「共感」を生み出します。前から引っ張りもしないし、後ろから押しもしない、気の長い支援はボランティアにしかできないし、「当事者性」を持った関わりが、ママの孤独感をやわらげたり、悩みを打ち明けて元気を取り戻していく過程に有効なんですね。また、専門家や行政の取り組みでは手が届かない「支援の隙間」が存在します。ホームスタートは、素人ボランティアがご近所さんや家族の感覚で、その隙間にフレンドリーなサポートを行えることが最大のメリットです。

─実際にホームスタートを利用するときの流れを教えてください。

まずはメールやお電話でお問い合わせをいただくことがスタートになりますが、ホームビジターがいきなり訪問するわけではありません。「オーガナイザー」という調整スタッフがお伺いして、ママの希望や訪問内容のヒアリングを行っています。ホームビジターが最初に訪問する時は緊張してしまうという利用者さんの声もあったので、初回はオーガナイザーが同行して、ホームビジターを紹介するようにしています。

─オーガナイザーとは、どんな人たちですか?

オーガナイザーは、利用者さんとホームビジターのマッチングを行う調整役として活躍するほか、ホームビジターの養成、ケア、フォローを行う大事な役割を担っています。ホームスタートの活動では利用者の個人情報を守ることが原則ですが、特別な事情がある場合には他の専門機関へのつながりを作ることもオーガナイザーの役割です。素人性を重視しているとはいえ、活動の責任をボランティアさんだけにかけるわけにはいきません。組織としてしっかりとビジターのケアも行ない、実際の効果を検証する仕組みを持っているので、安心して利用していただきたいですね。

ホームスタートジャパン

目指しているのは、ママを応援する「地域」のような存在

─「ホームスタート」は、今後どのような展開を目指していますか?

ホームスタートの基本は「傾聴」と「協働」。このふたつ以外に手を出して展開していく必要はないと考えています。もしも他の部分で必要になってきたときは、ホームスタートの「傾聴」と「協働」を活かしながら、「ホームスタート・プラス」という形で新たな支援を考えていこうと思っています。例えば今は就学前のお子さんがいる家庭だけが対象ですが、学齢期のお子さんや、発達の問題を抱えたお子さん、多胎児の育児、お母さんの心の問題。様々な状況への支援は、これから5年ほど時間をかけて、背景を検証しながら考えていくつもりです。

─「聞く」と「一緒になにかをする」という、とてもシンプルな行動から、いろんな広がりが始まっていくような印象を受けました。

ホームスタートの基本的な考えは「地域」なんです。昔は、近所のおじいちゃんやおばあちゃん、子育てを終えた人々が気軽にママに関わってくれていました。今は、その地域のコミュニティが薄れてしまっています。だから「地域」に似た仕組みを作っていかなければいけない、ということで生まれたのが「ホームスタート」なんです。昔ならでは地域コミュニティを取り戻すことができれば一番いいと思うので、そこを目指してがんばっていきたいですね。

ホームスタートジャパン

県内のホームスタート実施団体


豊後大野市ホームスタート・やしの実0974-22-3003
豊後高田市ホームスタート・アンジュ0978-25-4512
宇佐市ホームスタート・とよかわ0978-25-7100
別府市ホームスタート・にじのひろば0977-23-3801
杵築市ホームスタート・にっこ・にこ090-9720-2018
日出町ホームスタート・ひじ090-5292-3853
中津市ホームスタート・なずな0979-32-5620
竹田市ホームスタート・夢とんぼ080-5792-5457
臼杵市ホームスタート・うすき0972-63-1128
佐伯市ホームスタート・ふれみらさいき0972-46-2677
玖珠町ホームスタート・いちごのきもち0973-72-4860
日田市ホームスタート・ヒタ080-6449-2770

ホームスタートジャパン
http://www.homestartjapan.org/

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