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2019.01.11

長く働いてもらえる職場であり続けるために、
ひとりひとりにあった環境を考えていきたい。

社会医療法人敬和会 大分岡病院

岡 敬二さん(社会医療法人敬和会 大分岡病院理事長)

大分岡病院、大分リハビリテーション病院、在宅支援クリニックすばる等、6施設が連携して大分の医療と福祉を支える社会医療法人敬和会。大分労働局が推進する「イクボス宣言」企業への参加、「敬和会ダイバーシティセンター」を設置し、女性の能力活躍の支援をはじめとする多様な人材が活躍できる環境づくりなどに積極的に取り組んでいる。組織的に中長期目標を設定することにより、女性の管理職への登用割合47%、産前産後休暇、育児休暇取得率100%、育児短時間勤務利用状況割合78%を達成。

女性が7割を超える医療現場は、責任重大なハードワーク

─「社会医療法人敬和会」で働いている男女の比率はどれくらいなのでしょうか?

女性職員が全体の7割を越えています。特に新しい職員は、20代の若い方が多いですね。結婚をして妊娠をして、出産、育児といったライフスタイルの変化が起こる中、女性が働きやすい職場にしていくためにはどうしたらいいのか。この課題に敬和会全体で取り組んでいます。

─健康を守り、様々な疾患と対峙する医療現場は、大変な仕事というイメージがあります。

命を預かっている職業なので、責任は重く、ハードな面は当然あると思います。それゆえに、かつては、仕事を続けたくても家庭と仕事の両立は難しいからと、結婚や出産のタイミングで離職してしまう方や別の業種に転職していく方が非常に多かったんです。

─組織として、働く人たちの環境を整え、ケアしていくという意識が大きくなっていったのでしょうか?

転職したり、ライフステージの変化で離職していく人が多い一方で、求められる医療がどんどん高度化され、優秀な人材がたくさん必要とされていきました。離職率の高さは私たちの大きな課題でもあったんです。なぜ離職率が高いのかと考えたときに、給与面の待遇であったり、女性の働きやすさの問題であったり、一つの原因ではない、様々な課題が見えてきました。それをひとつひとつクリアしようと20年間かけて改善へと取り組んできました。

社会医療法人敬和会 大分岡病院

大切なのは、「現場の声」を反映していくこと

─環境づくりを進められた20年間の取り組みを詳しく教えてください。

一番大切なのは継続して働いてもらえることですね。結婚や出産をしっかり支えてあげないと、継続雇用には結びつきません。ライフステージの変化を乗り越えて、長く働いてくれる人が増えると、「敬和会は働きやすい場所だ」という認識が広まって、新しい職員もきてくれるのではないかと思ったんです。そんな循環が生まれるように、まずは「長く働ける環境づくり」を目指しました。90年代は病児保育センター「ひまわり」の開設や育児・介護休業制度創設しました。2000年以降は、配偶者出産休暇を新設して、男性の育児参画をバックアップしたり、子育てサポートを強化し、厚生労働大臣認定の「くるみん認定」も取得しました。
 
─女性が多い職場なので、女性の働き方を優先的に考えられていますか。

もちろん女性の職員数を考えると、女性を対象にした施策を優先的に行う必要はあります。ただ、7〜8年前ダイバーシティという言葉が世の中に広まりはじめたときに、「待てよ、大事なのは女性に対するケアだけじゃないのでは」と気づきました。「女性が働きやすい職場」ではなく、「みんなでお互いを支え合う職場」になるべきだと。そのためには、女性も含めたみんなが働きやすい職場を目指そうと「敬和会ダイバーシティセンター」を創設しました。

─「女性の働き方」だけではなく、「みんなの働き方」に着目されたんですね。

社会情勢が変化していく中で、女性の働き方だけではなく様々な課題が出てきます。「みんな」が誰かというと、障がい者であったり、高齢者であったり、外国人であったり…。「ダイバーシティセンター」は、40人ほどのメンバーで構成されたチームで、今は女性活躍をはじめとした多様な働き方の問題を一括で取り扱っています。

─敬和会は育休制度の取得率が100%、時短勤務利用率78%ということですが、女性活躍のために行っている施策は具体的にどんなものがあるのでしょうか?

以前から育休産休の制度はあったのですが、休みを取得することに心苦しさを感じる人が多かったようです。そこで「次世代育成委員会」という組織を編成し、時短などの制度を広めていく試みや、より働きやすい環境のための話し合いを設けました。現場の人たちが「もっとこうしてほしい」と思うことを形にしたり、新たな施策に対して現場の人がどう感じるかということをフィードバックする場ができたと思います。メンバーには子育て世代の人が集まっていたので、とても話しやすかったですね。

─ママたちに取材すると、皆さん産休や育児休暇の間に社会から取り残されていると感じる人も少なくないようです。

一時的に職場を離れることを、現場に迷惑をかけていると感じられるかもしれませんが、私たちは「戻ってきてほしい」という気持ちをはっきり示しています。職場から離れている間でも広報誌を送って、「今病院の中はこうなっているよ。心配ないからね」というメッセージも届けています。こちら側から定期的にお手紙などを送ってコンタクトを取りながら、何かあったときには相談窓口になれたらいいなと思います。復職されたときに安心して働いてもらえるように、保育園の運営や病児保育など、お子さんに対しての環境づくりも整備しています。産休に入る前と復職の前には、総務人事部が個人面談を行うようにしているんですが、そのときに手当や手続きの説明から復職後の予定まで聞いています。例えばブランクが不安な場合には復職のプログラムも用意していますし、保育所はどうしますか?とお子さんの予定を確認したり。本人が不安に感じることはなんでも相談しながら解決していきます。

─保育施設を作ったり、委員会を作ったりと、とてもニーズに合った施策を行っている印象を受けました。

小学校低学年のお子さんがいると、夏休みなどの長期休暇をどうするのかは大きな問題になります。そこで敬和会では、教員免許や資格のある方にきていただいて、学童保育を開設しています。夏休みにはプールにいったり映画館にいったりしながら、お子さんたちも楽しく過ごしていますよ。

社会医療法人敬和会 大分岡病院

全ての職員の個性や多様性を尊重し、
「みんな」が働きやすい環境づくりを目指す

─敬和会では、ワークスマート化や女性が活躍できる職場づくりにおいて、どのように考えていますか。

私はよく海外に行って様々な視察を行うんですが、デンマークで貴重な体験をしました。デンマークは救急病院が少ない国です。視察した病院は手術の数が大変多く、24時間体制で手術が行えると伺っていたので、さぞ忙しいだろうと思い込んでいました。ところが実際は医師も他の専門職のスタッフも週32時間勤務だというんです。例えば、チーム単位で引き継ぎで手術を行っていたりする。それだけのマンパワーがあるし、誰が、どのチームが行っても大丈夫なように、技術の標準化やコミュニケーションが徹底されているんですよ。日本では、逆に「長く働くほうがいい」という風潮がDNAのように染みこんでしまっています。でも、オランダやデンマークのように効率化を進めていけば、働き方もきっと変わってくる。時間外労働を削減したり、生産性を上げていきたいという想いの原点はここにあります。

─一緒に働く仲間のためにという想いが、「女性」だけではなく、「みんな」が働きやすい職場作りの実現につながっていくんですね。

これからの日本は、少子化と高齢化社会で若い働き手がどんどん減っていきます。ひとりひとりに合わせた「働き方」まで掘り下げなければ、選ばれる法人にはなれません。若い人たちの考え方、時代の変化に合わせて、私たちも変わっていく必要があると思っています。

社会医療法人敬和会 大分岡病院

社会医療法人敬和会
https://keiwakai.oita.jp/

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