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2019.04.23

「子育て満足度日本一」をめざして
~届けたい!子育て支援の制度いろいろ~

大分県福祉保健部 こども未来課

御手洗洋子さん(大分県福祉保健部 こども未来課課長)

「子育て満足度日本一」をスローガンに掲げる、大分県。「大分県福祉保健部 こども未来課では、「待機児童問題」を筆頭とするさまざまな課題に対し、国と市町村の橋渡しをしながら、解決策を講じている。では実際、大分県ではどのような取り組みをしているのか、これからのビジョンは? 今回は、自らも働きながら3人の子育てをした経験を生かしながら「子どもの成長の喜びを共有できる社会」を目指す御手洗洋子課長にお話を伺った。

大分県の待機児童問題、現状と今後の課題とは?

─よくニュースなどで耳にする「待機児童」。その定義を教えてください。

待機児童とは、認可保育所への入所を申請していて、入所の条件は満たしているものの、入所できない状態の子どものことです。その方たちに対して、行政は定員に空き枠のある保育園を紹介しますが、お住まいのエリアや職場の問題などから、中には「第一希望の保育所以外には入りたくない」という親御さんもいらっしゃいます。統計上、このようなケースは自己都合となり、待機児童にカウントされないんですよ。

─今、大分県の待機児童はどれくらいいるのでしょうか?

平成29年4月の時点で、待機児童の数は505人でした。そのほとんどを抱える大分市では、全国的に見てもワーストに入るということで、待機児童解消を最重要課題に掲げて対策を講じてきました。その結果、平成30年4月には13人まで減って、大分県全体としても13人となっています。短期間で確かな成果を上げることができたものの、先ほど申し上げたように、「希望する園に入れないなら……」と言う方も大勢いらっしゃるので、「入れてない子、いっぱいいるのに」と思う人もいるでしょうね。

─数字を見ると劇的な変化ですね。行政ではどんな努力をしていますか?

待機児童をなくすため、各市町村の子育て支援課などが中心となって、新しく施設を整備し定員を増やしたりしています。県では、その市町村に対して助成金を交付したりしています。また、保育士確保は、定員を増やすためにも、保育の質を向上させるためにも重要な問題ですが、どの業界も人手不足ですから苦労しています。保育士の処遇改善も進めていますし、保育士の魅力を発信したり、保育士資格を持っていながら今は働いていない方への再就職の働きかけなど、様々な取組を進めています。

─今後、解決していくべき課題はありますか?

少子高齢化、人口減少が全国的に大きな課題となっています。大分県でも、平成21年度から「子育て満足度日本一」のスローガンを掲げて、様々な子育て支援事業に取り組んでいます。けれども、生まれてくる子どもの数は減少を続ける一方で、虐待の相談件数は増加しているという厳しい現状があります。課題は山積しており、これをやったらすぐに解決するというような簡単なことではありませんが、笑顔の子ども達を一人でも増やすために、県と市町村がしっかりと連携して地道に取り組んでいくことが重要です。そのためには、何よりも、子育て中の皆さんのニーズを把握すること、保育現場の方々や業界団体の意見を聞くことが重要だと思っています。市町村では市民ニーズを基に、支援事業を考えます。そして、大分県がそれをバックアップするという形ですね。県としても、子育て関係の各団体の代表者などにご意見をいただく「子ども子育て応援県民会議」という場を設けており、知事も出席して、皆さんの生の声をお聞きしながら県の施策に反映させています。

大分県福祉保健部 こども未来課

理想は「子どもの成長の喜びを共有できる社会」

─行政からだけではなく、ママたちからニーズを発信することも大切ですね。

そう思います。行政として努力はしているものの、ママたちがまだまだ不満に感じていることや、かゆいところに手が届かないもどかしさはたくさんあるのではないでしょうか。昔は「こんなものなのかな」となんとなく思わされていたことを、今のママたちは「そうではないだろう」と気づく力がある。そういった、消化できない気持ちを声に出していくことが、「子どもをもっと大切にしなければ」という社会の意識向上につながり、行政を動かす強力な力になると思います。

─ママのままプロジェクトのように、物事を本音で、リアルに考えることが必要な時代なのではないかと思っています。

本当にそうですね。本音を言えるって大切ですよね。理想の母親像に縛られて、一人でもがいているママも多いのでは。これからは、ママだけが育児を孤独に担うのではなく、パパももちろん、地域のいろいろな主体がそれぞれの得意分野を活かしながらつながっていけたら、子育ての負担感ってずっと軽くなると思います。「子どもの成長の喜びを共有できるパートナーや仲間がいる」ってことは、社会とつながる大事な意味を持っていますよね。家庭でも会社でも地域でもどこでも同じで、「今日はこんなことができるようになった」とか、「子どもが熱を出したんなら遠慮無く休めよ」とか、「子どもの遊ぶ声が聞こえてうれしい」とか、子どものことで喜び合える、豊かな社会になったらいいなあと思います。ママのままメンバーさん達は、リアルなママの声を発信して、それを自分たちで楽しみながら行動に移していますよね。本当に頼もしいです。

─御手洗さんも子育て、そして仕事への復帰を経験しているそうですね。

はい。30年以上も昔の話になりますが、3人の娘がおります。当時は、出産のための休暇は前後8週間の産休しかない時代でした。認可保育所では、まだ首が座らない子どもは預かってもらえないので、最初は認可外の保育所に預かってもらいました。仕事が遅くなり、ギリギリに迎えにいって、うちの子ひとりが残って待っていることもあり切ない思いもしょっちゅうでした。保育所になかなか慣れない子どもを心配して、「仕事が忙しすぎて、お母さんの愛情が足りないのでは?」と言われたときはショックでしたね。振り返ると、時間にも精神的にも余裕がなく「保育所=子どもを預かってくれる所」くらいにしか思っていなかったな、と反省しています。でも、保育士さんのいろんなアドバイスはありがたかったし、家族の協力もあったから、何とか仕事も続けてこれたと感謝しています。その頃からずいぶん時は経ち、働くママはどんどん増えているのに、仕事と子育てを安心して両立できるような環境はまだまだ十分とは言えない状況です。今、このような立場になって改めて思うことは、保育所のことだけでなく、職場の働き方改革や地域の子育てへの理解も進むよう、自分の経験を活かして積極的に動きたいと考えています。

大分県福祉保健部 こども未来課

注目してほしい大分県の子育て支援制度

─2019年秋から、幼児教育の制度が変わりますね。

はい。10月から幼児教育の無償化が始まり、3歳以上の保育料は原則無料となります。所得の少ない家庭の場合は、0歳から無料です。認可外施設に関しては、保育が必要と認定され、一定の基準が満たされた認可外施設に預けざるを得ないと認められた場合は無料になる予定ですが、現在、その詳細を国で検討しているところです。さらに、移住定住を促進するため、市町村が独自に助成範囲を拡げているなど、取り組みに差はありますが、総じて、大分県内の市町村は子育て支援に力を入れていると思いますよ。

─行政も、子育て支援に関してさまざまな改善策を行っている。それらの情報を届けるということも課題だという気がします。

市町村が取組んでいる子育て支援は、それぞれ内容が異なるため、県で統一したPRをしにくいのが実情です。また、市報に掲載したり、パンフレットをつくったり、WEBで配信したりといろいろとPRはしていますが、本当に届けたいところに届かないもどかしさもありますね。たとえば、子どもが生まれた全世帯に配布している「おおいた子育てほっとクーポン」、これは病児保育やインフルエンザの予防接種をはじめいろいろな子育て支援サービスに使えるものですが、ミルクやオムツ購入にも使えるようにしてほしいという声もあります。そのような意見も理解できますが、行政のいろいろなサービスを知って活用してもらいたいということから、利用範囲をサービスに限定しているという側面もあります。



─ 「モノ」ではなく「コト」に使えるよう繋げていく、そのプロセスは重要ですね。

はい。クーポンの利用率は今、73%程度。「よくわからなかったから使わなかった」という人に、どうやったら伝わるか、活用してもらえるか、更なる工夫が必要と思っています。 ほかにも、子どもを預かってほしい〈利用会員〉と預かりの援助を行う〈提供会員〉を繋ぐ「ファミリー・サポート・センター」や、24時間365日子育ての悩みを相談できる「子育てほっとライン」、不妊治療費の助成など、大分県をあげて取り組んでいるさまざまなことを知ってもらいたいですね。その1つとして、不妊治療に関する情報発信の可能性を広げようと、スマートフォンアプリ「ルナルナ」と連携協定を結びました。デリケートな話題なだけに、従来の行政の広報手段では限界がありますが、県内のルナルナユーザーに向けて、ピンポイントで詳細な情報を発信してもらえることが期待できます。このように民間と連携して取組む事も大事だと思っています。「ママのままプロジェクト」とも連携して、相乗効果を狙いたいですね。

─子育て支援とひとことでは言っても、多様化していることがわかりました。

私が所属するこども未来課では、若者の出会いを応援する「OITAえんむすぶ出会いサポートセンター」や、妊娠、出産、子育てまで切れ目ない様々な支援を行っています。価値観の多様化にあわせて、必要とされる支援も多様化するのは当然です。が、その前段として、「妊娠は自由にならない」という事実を、男女ともに正しく知って、自分のライフデザインを早い段階から意識してもらうことにも力を入れていきたいと思っています。少子化問題も地方創生も、10年、20年後を考えて「今できること」をやるしかないんです。そのために、「今できること」とは何かを日々、考えています。

大分県福祉保健部 こども未来課

大分県 こども未来課
http://www.pref.oita.jp/soshiki/12470/

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