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2019.05.28

女性の感性や知恵で、
農業を女性が輝くステージに。

ウーマンメイク株式会社

平山 亜美さん (ウーマンメイク株式会社 代表取締役社長)

女性スタッフのみで構成されている、農業法人・ウーマンメイク株式会社。「農業を通じて女性が輝く社会を」という想いのもと、オリジナルのリーフレタス「やさいまま」を水耕ハウス栽培で生産。作業軽減化、フレキシブルな勤務体系を推進することで「キツイ・汚い・危険」という従来の農業へのイメージを払拭している。「農業が女性の職業の選択肢のひとつとなるよう、職場環境を整えていきたい」と語る代表の平山亜美さんに、女性が取り組みやすい農業のスタイルを確立させるまでの歩みや農業への想いなどを詳しく伺った。

農業に「働きやすさ」と「女性の視点」を

― スタッフは全員女性とのことですが、働きやすい環境づくりのために、意識していることはありますか?

現在、ウーマンメイクでは20歳〜66歳までの女性17人が働いています。3Kのイメージがある農業ですが、私たちの職場では、重いものは台車を使って移動させる、作業台も女性が作業しやすい高さに設定するなど、できる限り快適な環境で仕事ができるように配慮しています。どんなちいさなことでも改善を繰り返すことで作業効率も生産性もアップしました。また、事業所内に畳の休憩スペースやシャワールームを設けています。もちろん、子どもを連れての出勤も可能です。

―スタッフのモチベーションを保たせる秘訣は何ですか?

女性が働くモチベーションは決して賃金だけではありません。お金を稼ぐだけなら他の職場でもできますからね。私自身も子育て中のママなので実感が湧くのですが、働く女性が何より重視したいのは、家事や育児などで、どうしても急に休まなくてはいけない時に、気兼ねなく会社や同僚に甘えられること。そのためには経営者とだけでなく、スタッフ同士もコミュニケーションを密に取ることが必要です。だからこそ、月に1度みんなで食事会をしたり、イチゴ狩りに行ったり、スタッフの親交を深めることで、休みやすい環境を作るようにしています。



―農業の現場において女性ならではの強みはありますか? また、こだわっていることなどがあれば教えてください。

会社を設立するにあたって販路網確立のために営業していた時、私たちの考えに共感してくれるところもあれば、「女性だから何か特別なことでもあるのですか?」と相手にされないこともありました。とても悔しかった反面、正直その通りだとも思いましたね。女性だから良いものができるとは限らないし、まして農業初心者ですから。ある日、「今、仕入れている業者より安かったら取引するよ」と言われた時、「よし、価格を安くすることではなく、わたしたちができることについて本気で考えよう」と決意しました。そこから試行錯誤の中でたどり着いたのが、女性の感性を取り入れた商品のパッケージデザインにこだわることでした。パッケージを何案か作って、再度営業に行くと、皆さんとても興味を持ってくれたんです。次第にバイヤーもアドバイスをくれるようになり、その意見を取り入れながら商品化することでお店サイドとの信頼関係も深まりました。

―「女性の職場」ならではのやりづらさ、人間関係の難しさなどはありませんか?

よく「女性同士なので派閥ができたり、揉め事も多いのでは?」と聞かれることもあるのですが、ウーマンメイクは人数も少ないですし、年齢の幅がありすぎて(笑)派閥もないです。子育ての事や家族間の相談も休憩時間によく話しているようです。もちろん仕事が中心なので、上下関係で気を遣うことはあるかもしれませんが、急にシフトを変更しなくてはいけないときにも「私が代わりに出るよ!」と、スタッフ同士でしっかりとコミュニケーションを図ってくれるので助かっています。

ウーマンメイク株式会社

「子育てしながら働く」を考え、
辿り着いた答えが農業でした

―農業で起業しようと思ったきっかけは? 決め手は何だったのですか?

もともと経営者を目指していくつかの企業で働いていましたが、出産を機に退職し、「子育てしながら働くにはどんな仕事がいいのか」と考えるようになりました。そんなとき、異業種交流会で道の駅をつくりたいという人と出会い、企画段階でたどり着いたのが「農業」でした。リサーチで訪れた農家レストランで、野菜を作った農家の方が料理をサーブしているのを見て、「農業は野菜を作って終わりじゃない。可能性がたくさんあるんだ」と。農業はやり方次第でどんどん面白くなると気づき、チャレンジしてみようと思いました。

― 「ウーマンメイク」という会社名はご自身で付けられたんですか?

はい。「女性がつくる」という意味を込めて、創立メンバーで考えました。野菜だけでなく、女性たちが“次の時代をつくる”という思いも込めて。ありがたいことにメディアに取り上げていただき、多くの人に知ってもらうことができました。

―不安はありませんでしたか?

経営も初めてだったので、設立資金の額の大きさもわかっていませんでしたね(笑)。それに、もともと農業系の大学で学んだわけでもない農業の初心者で、虫も嫌いですし、汚れるのも嫌でした。水耕ハウス栽培に出会わなかったら今の私はなかったと思います。会社を設立すると決めた段階から積極的に営業に行き、とにかく販路を開拓していきました。

育てる喜びは子育てと同じ
女性の仕事の選択肢に農業を

―子育てと農業の両立に関して、大変さを感じる事はないですか?

野菜づくりは子育てと似ていて、愛情をかければかけるほど美味しい野菜が育ちます。マニュアル化された作業を適当にこなしていたら、発芽しなかったこともあるんですよ。「今日、野菜に農薬を散布しないといけないけど、子どもが少し咳をしている…」というときでも、子どもに申し訳ないなという気持ちを抱えながらビニールハウスへ向かったこともありました。とても辛い気持ちでしたが、それぐらい野菜には愛情が必要なんです。ウーマンメイクでは誕生日の人が種を蒔く「バースデーシーディング」を取り入れています。出荷作業のみを担当する人は実際にレタスの生育を見ることはないのですが、うちで働くからにはレタスの成長を感じたり、見守ってほしいという想いから始めました。自分の蒔いた種が育っているかはすごく気になるし、愛情も湧いてきます。従業員同士で「〇〇さんのレタス、元気に育っていたよ!」など会話もたくさん生まれますしね。

―ウーマンメイクのブランドとして生産・販売しているレタス「やさいまま」にも女性の視点が込められていますね。

女性だけの会社だからこそ、女性ならではのアイデアを前面に押し出しました。「“野菜そのまま”の味を届ける」だけでなく、「“優しいママ”のように育てる」という意味を込めて「やさいまま」というブランド名にしました。また、消費者である女性に名前を定着させるために、オリジナルの商品名を考えたりもしましたね。「#コサージュレタス」と検索すると、すべてウーマンメイクのレタスなんですよ。自分たちが育て、名付けた野菜を食べてくれている人がいることは、生産者として一番うれしいこと。従業員はもちろん、パートさんのモチベーションにもつながっていると思います。



―子育てママが働くため、企業には何が必要だと思いますか?

女性が働く場合、子どもの体調不良などで、急に休まなくてはいけないことが必ずあります。こちらも「しょうがないこと」だと思っているので、何も言いませんし、他のスタッフもそれを理解した上で働いているので、「また休むの?」なんて言いません。何らかの理由で長期で休むことがあっても「大丈夫だった?」と声かけできるようなチームになってきていると感じます。会社のサポート体制はもちろん、スタッフがそれぞれの状況を理解しながら働くということもとても重要だと思います。さまざまな課題に直面することも多いのですが、ルールにしばられずにケースバイケースで対応し、一つひとつ解決するように努めています。

―農業法人として今後の目標はありますか?

今後は規模を拡大していくのか、違う野菜を育てていくのか…、さまざまな選択肢があります。農業法人なので、おいしい野菜を作り続けることが一番ですが、それと同じぐらい大切にしていることが、スタッフが働きやすい環境づくりです。環境が整ったら、もともとやりたかった道の駅に近づけていきたいです。それと同時に、「キツイ」「男性がするもの」といった従来の農業のイメージを変えていかなければいけないとも感じています。

―ウーマンメイクをロールモデルとして農業全体が変わってほしいということですね?

田舎は農業が基幹産業です。農業がなくなれば、仕事がなくなって困ってしまう人もいるので、これから先も守っていかないといけない。農業人口の減少を防ぐためにも、他の仕事と同じくらいの収入を得られるようにしていかないといけない。水耕ハウス栽培の場合は空間の快適さや作業しやすい環境は保たれているので、付加価値としてフレックス制を取り入れるなど、働きやすさにフォーカスしていきたいですね。

ウーマンメイク株式会社

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