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2020.06.09

子どもの笑顔のためにママの心のサポートを。
長屋文化のような支え合う社会を。

おおいた子ども支援ネット

おおいた子ども支援ネット 専務理事 矢野茂生さん

「すべての子どもたちに明るい未来を!」をテーマに、包括的な子ども支援事業を行うNPO法人「おおいた子ども支援ネット」。居場所のない子どもたちが安心して未来を見つめる場所をつくろうと、自立援助ホームや放課後等デイサービスなど、さまざまなサポートを行っています。様々な事情により困難を抱える子ども自身やその家族とコミュニケーションを図るなかで、子育てママへの支援の重要性を感じることも多く、「悩みがあれば気軽に相談に来て欲しい」と利用を呼びかけています。今回は、専務理事の矢野茂生さんに、家事や育児、子育てに奮闘するママの心のサポートについて伺いました。

「悩みがあればすぐにおいで」
日頃から相談できる環境づくりを

ー子ども支援事業へ取り組むきっかけは?

私たちの法人は緊急避難が必要な子どもや居場所のない子どもたちに安心して未来を見つめる場所をつくってあげたいという気持ちを、福祉関係者や教育関係者、弁護士有志が語り合う中で生まれてきました。法人の事業を展開していく中で、子どもたちの笑顔を増やしていくためにはママへのサポートも重要だと気付きました。「ママのままプロジェクト」にも多くのママが登場しているように、世の中にはたくさんのママがいますが、みなさんママである前に、一人の人間です。当然辛いと感じることもあるし、人に言いづらい困難を抱えている可能性もあります。そこで、ママたちや子どもたちが気軽に頼ったり頼られたりする環境が必要だと感じています。私は長屋で生まれ育ちましたが、長屋に住んでいる家族は、もちろんそれぞれの家族のカタチがあるけれど、家族で揉めごとが起きたら、隣のお宅にお邪魔して相談したり、何かを手伝ってもらったり…そんなことは日常茶飯事。そんな温かい長屋文化に、私は何度も助けられてきました。長屋のご近所さんのように何かあったら気軽に利用できるような法人をつくりたいと思ったのがきっかけです。



ー確かに今の時代、ママたちは井戸端会議のような相談の場がなくなってきている気がします。

そうなんです。「これは誰に相談すればいいのかな?」とちいさな悩みを抱えたママがいきなり行政の相談窓口を頼るには、なかなかハードルが高い。だからこそ、もっと気軽に話を聞いてもらえたり相談できる場所があれば良いと思います。

ー例えば、「子どもに対してたまたま手をあげてしまった。自分は子どもを虐待してしまう人間なのか」と悩んだとき、まず何をすれば良いのか分からない方も多いと思います。そんな状態で相談に行っても良いのでしょうか?

もちろんです。起こった事象に対してどう対応していくかということも大切ですが、わたしたちが一番重きを置いているのは、何か重大なこと起こる前に予防できる社会システムを作っていくことです。例えばですが、病気になってしまったら、できることは「治療」になります。しかし、予防だとあらゆる方法がありますよね。常日頃から病気にならないようにママに対して寄り添い、コンディションを気にしてあげるようなサポートが大切だと思いますね。

おおいた子ども支援ネット

仕事はメンバーシップ型、子育てはジョブ型
2つがゆるやかにつながる社会へ

ー今の社会に対して感じることは?

今の社会は、仲間が集まり、みんなで「こうしよう、ああしよう」と同じことを行い、価値を生み出す「メンバーシップ型」が一般的です。一方、家事や育児などの仕事は、個人が持っている責任や仕事を果たす「ジョブ型」です。結婚や出産の影響で、それまで企業などでメンバーシップ型で活動していた人が、急にジョブ型にシフトチェンジすることもありますし、しばらくするとジョブ型からまたメンバーシップ型の社会に戻ることもあるでしょう。しかし今の日本ではメンバーシップ型とジョブ型では価値観が違うため、お互いを受け入れることが難しい場合も多いようです。

ー仕事だけでなく、ママ友や学校といった付き合いもメンバーシップ型ですよね。

そうですね。ママ友といった付き合いや、学校などの教育機関など、そこにいる人たちはメンバーシップ型が多いですよね。しかし、どちらにせよそこにはアイデンティティがありますから、メンバーシップ型とジョブ型のバランスを考えながら、人生をどう歩んでいくのかを考えていくといいと思います。

ーメンバーシップ型とジョブ型を両立するのは難しい気もします…。

メンバーシップ型に入るには「メンバーである以上こうしなさい」という価値観を受け入れなくてはなりませんし、ジョブ型は「1人で子育てしている」、「毎日眠れないくらい神経を使っている」ということは社会には見えにくい。どちらにもそれぞれの大変さはあります。だからこそ、それぞれの「価値」を押しつけあうのではなく(男は仕事で疲れてんだーのような意味不明問題等)互いの「価値」を受け容れ、サポートしあっていくことが必要と思っています。「ひとりぼっちにしない社会」が重要ですね。

おおいた子ども支援ネット

一人ひとりの暮らしを細かく分類せず、
多様性を大切にしていく

ー風通しの良い社会のために意識すべきことは何だと思いますか?

例えばシングルマザーが相談にいらしたとき「自分はシングルマザーだから」といって俯くときがあります。でも少し考えて欲しいのです。シングルマザーを選んだ方も選ばざるを得なかった人も、それぞれ1つの人生のカタチ。結婚しない人も1つのカタチですし、子どもがいてもいなくても1つのカタチ。障害があろうがなかろうが1つのカタチ。それぞれの人生が社会に点在しているだけなんです。それを私たちはついつい細かくカテゴライズしてしまいがち。細かく分類・細分化されすぎることで生きづらい世の中が出来上がっちゃうんじゃないかって思っています。

―なるほど。細かくカテゴライズしすぎず、多様性を受け入れるということですね。

さまざまな価値観が増えることを受け入れ、多様性を重視していかなければいけません。私が尊敬する人の言葉を借りると「どんな人にも役割と出番がある」。しかし、集団の価値観によって個々が流されて見えなくなることもあります。個々の役割をどうやって目立たせていくのか。自分が困っていることを伝えられる人は良いですが、困っていると言えないママたちをどうやってケアしていくのか。「声を出して良いんだよ」「あなたの立ち位置は全然おかしくないんだよ」とどうやって伝えるか。それが私たちの課題です。



―今後の目標は?

人生を送る中で息苦しくなって立ち止まっているママや子どもがいたら、何らかの方法で一歩を踏み出すお手伝いをすることが私たちの仕事です。カタチのないものをカタチづくるようなイメージですね。「おおいた子ども支援ネット」が取り組んでいることが、向こう三軒両隣のようなシステムの中で解決できるようになることが最終的な願いです。私が小さい頃お世話になった長屋の世界観を事業として成り立たせていきたい。今のコミュニティ、地域のコミュニケーションの中に、新しいタイプの長屋をつくっていけたら良いなと思っています。

おおいた子ども支援ネット

おおいた子ども支援ネット
http://oita-kodomosien777.net/

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