トークセッション
三者三様のヒストリーと働き方
自分なりのやりがいを見つけて
渡部
今日は、メディア、百貨店、製造と3つの企業で働く3人の方にご登壇いただきました。働く上での悩みや乗り越えてきたエピソードには、参加者の方が共感できるエッセンスがあると思います。まずは自己紹介を兼ねて、現在のお仕事やプライベートのことを教えてください。
清家
大分放送の総務局人事部で、給与計算や社会保険の手続き、採用などを担当しています。今回皆さんにお話する機会をいただき、とても楽しみにしていました。
佐藤
大分キヤノンマテリアルで、家庭用のインクジェットプリンターカートリッジのノズル技術者として働いています。入社して21年になります。男性が多い、ものづくりの現場のリアルな声をお伝えできればうれしいです。
太田
私はトキハ本店3階で、婦人服売り場のフロアマネージャーとして仕事しています。新卒でトキハに入社し、ちょうど30年が経ちました。今日お話するにあたって、少しでも皆さんのお役に立てることがあれば嬉しいです。
渡部
これまで働き続けてきた道のりは平坦ではなかったと思います。大変な中でも、仕事にやりがいを感じるようになった転機はありましたか?
佐藤
新入社員の頃は、与えられた仕事を丁寧にこなすことを意識し、何事に対しても「なぜこの仕事が必要なのか」を考えて取り組んでいました。そんな小さな積み重ねが評価され、2年目で新製品の立ち上げを任されました。今までなかったものを一から作ることは楽しく、やりがいのある仕事です。完成するまでは過酷ですが、発売されたときの達成感はひとしお。そんなものづくりの醍醐味に魅了され、ここまで働いてきました。
清家
入社のきっかけはディレクターやアナウンサーとして番組作りに携わりたかったためです。しかし、配属されたのは流通販促事業部という販促の職種。イベントを開催したり、スポンサーのためのキャンペーンを実施したりする仕事です。はじめはとてもショックでしたし、何をすれば良いのか分かりませんでした。しかし、私が書いた原稿やスーパー、編集したコマーシャルが電波に乗り、反響をもらい、評価されたことで、放送局で働く楽しさを次第に感じるようになりました。
太田
希望部署ではなかった婦人服売り場に配属され、研修が終わると泣きながら本部フロアに戻りました。今考えるととても失礼な新入社員でした(笑)。ただ、いざ働き始めるとお客さまからの「ありがとう」のおかげで前向きに仕事に取り組むことができました。怒られることも多かったのですが、入社して10年が経った頃、初めてお店を任せられました。年齢の近い先輩もたくさんいましたし、仕事に対してモチベーションが高い人ばかりでした。活発な意見が飛び交う、良いチームで仕事をすることができました。
自分なりの両立のスタイルで
わたしらしい働き方を実現
渡部
女性の働き方は多種多様で、結婚や出産をはじめ、人生に悩み、立ち止まる人も多いかと思います。皆さんは仕事とプライベートのバランスはいかがでしたか?
太田
20代の頃からアクティブな性格で、海外旅行に行ったり、さまざまな体験をしました。そのため、「結婚を何歳までにしたい」という意識が他の方と比べて薄い方だったかもしれません。仕事と遊びが楽しくて楽しくて。人生をバランスよく楽しみながらやってこれたと思っています。
佐藤
私は仕事中心の生活で、30代で体を壊してしまいました。そのときに、「私の人生、これでいいのかな?」「80歳になるまでこの生活を続けるの?」と感じるようになりました。ワークライフバランスや生きることについて考えたことで、自分の選択肢を広げることができたと思います。広い視野を持ち、他人を許せるようになったのもこの頃からです。
清家
30歳のときは営業職として働いていましたが、33歳で報道記者の部署へ異動しました。しかし、この二つのタイミングでがんが見つかり、手術をすることになりました。早い発見だったため、継続的な治療は必要ありませんでした。しかし、「仕事のために自分を犠牲にしなくてもいい」「自分の人生を生きよう」と思いはじめました。さきほど佐藤さんが言ったように、仕事への向き合い方が少し緩やかになったと思っています。常に「本当に自分がやりたいことは何なのか」考えるようになりました。
渡部
私は、25歳で子どもを産み、30歳の頃は育休明けでがむしゃらに働いていた時期です。仕事にも育児にも一生懸命になりすぎて、娘がストレスを感じてご飯を食べなくなったのです。それまで、子どものことをしっかり理解できていると思っていたのですが、彼女が悩みを抱えていることに全く気づいていませんでした。今思い出しても涙が出そうです。女性の働き方は、良いことも悪いことも、自分ではない外側の領域に結構左右されることが多いと感じます。太田さんは管理職になってからハードな時期が続いたとお聞きしましたが、いかがでしたか?
太田
マネジメント職に就いたのが40歳の頃です。当時は年上の男性ばかりで、できない自分にコンプレックスを抱えていました。一人で全部抱え込まないといけないと思い込んでいたのでしょう。仕事が終わらず、いつも家に持ち帰っていました。マネジメント職になったばかりの頃は、気を抜くと自然と涙がこぼれることも多くて、すごく辛かったです。
佐藤
今まではプレイヤーとしてがむしゃらにやれば成果が出ていましたが、管理職になることで業務範囲が広がります。後輩や部下の信頼を得て、前向きに仕事に取り組んでもらわないといけません。信頼感が得られる伝え方や、やる気にさせる方法など、マネジメントについて勉強する日々でした。データしか信じない人には数字を用いて説明する、感情的になる人には、感情に訴えかけるように伝えるなど、伝え方は人によってさまざまですよね。
壁を乗り越えたからこそ伝えたい
未来を担う後輩たちへのメッセージ
渡部
皆さん、たくさんの壁を乗り越えて管理職として、ここまで歩んでこられたと思います。これから会社を担っていく後輩や部下に伝えたいことはありますか?
佐藤
今置かれた環境に感謝しながら、自然体でいることを大切にしてほしいです。若い人に「あなたはどうしたい?」と聞くと、答えられない人が多いと感じます。自分がどうありたいのかを常に考え、人生を自分の足で歩んでほしいです。“自分がいかに納得して自分の人生を考えられるのか”をしっかり意識すれば、どの道に進むべきなのかが分かると思います。
清家
常日頃から意識してほしいのは積極的にチャレンジすることです。仕事に関することでも、プライベートなことでも構いません。チャレンジ精神や好奇心を持って過ごしてほしいと思います。挑戦を重ねながら励む姿勢を持ち続けてほしいです。
太田
ここ数年で女性活躍が推進され、4〜5年前に比べると、女性の可能性が広がっていると感じます。情報交換の場や講演会の場も設けられ、先輩たちの話を聞く機会が増えています。女性だからとか男性だからとかではなく、“自分のやりたいこと”を実現できるような場が少しずつ増えてきました。勇気を出して手を挙げたり、誰かにアドバイスをもらうことが転機となり、自信にもつながっていくと思います。やりたいと思う気持ちがあなたのチャンスです。勇気を持ってチャレンジする気持ちを持ち続けて欲しいと思いますし、私もそうありたいなと思っています。
渡部
皆さん、本音トークをありがとうございました。大事にしたい意見、参考になった考え方はたくさんあったとおもいます。壁にぶつかっても、今日の話を思い出して乗り越えていきましょう。
質疑応答タイム
トークセッション終了後、参加者たちは手元の質問シートに、登壇者に聞きたいことを記入して提出。登壇者が質問に答えながらアドバイスする質疑応答の時間が設けられました。
Q1 大きな壁にぶつかったとき、どうやって乗り越えましたか?
佐藤
私は6歳の子の子育て中です。復帰したての頃は時短勤務だったので、常に時間が足りませんでした。仕事と育児の両立に大きな壁を感じていましたが、業務の整理整頓をすることで乗り越えました。
太田
育児の経験はありませんが、以前に母の介護を経験しました。当時は介護休暇や時短勤務制度についてよく知らず、介護と仕事の両立に必死でした。あのとき、余裕を持って、周囲の人に相談していれば良かったと思っています。現在は仕事と家庭・生活を両立できる制度も充実しているので、頼れるものをうまく活用して、気持ちを上手にコントロールしてください。
清家
仕事のやりがいについて思い悩んだ時期がありました。少し視点を変えようと思い、資格取得という目標を設定して乗り越えました。セミナーや講演会など、仕事関係以外の人とコミュニケーションをとることで、新たなやりがいや楽しさを再発見するきっかけになると思います。
Q2 自宅に帰っても仕事のことを考えてしまい、なかなか切り替えができません。上手な気持ちの切り替え方法を教えてください。
太田
お酒が好きなので、帰宅後は毎日晩酌を楽しんでいます。また、最近はゴルフやサーフィンなど、新しい趣味も増えました。仕事のことを考える暇がないぐらい熱中できるものをつくってみてはいかがでしょうか。
清家
業務に関するメモや情報を挟み込んだデスクマット、またペンケースや書類など、これまで置いていたものすべてを最近、デスク上から撤去しました。仕事のアイテムは全てロッカーに片付けてから帰宅。“仕事が終わった”と意識づけて帰る習慣をつけることで、気持ちのリセットにつながると思います。
佐藤
Netflixでひたすら作品を見るなど、自分だけの時間を持つようにしています。それでも悩んでしまうときは、答えが出るまでとことん考えます。しっかりと考えて解決策を導き出すことで、少しは気持ちが楽になるかもしれません。
Q3 上司から管理職を目指すよう言われ、嬉しい反面、部下がついてくるのか不安です。どうすれば部下からの信頼が得られるか具体的に教えてください。
佐藤
まずは、しっかり部下の話を聞くことが重要です。人は、自分の話を聞いてくれる相手でなければ信頼できません。意識的に視線を向けて、「しっかり聞いている」と伝えましょう。また、指示を出す、アドバイスするときは、その人が理解しやすい言葉や表現を使ってわかりやすく伝えることがポイントです。
太田
ベタかもしれないのですが、一生懸命取り組む姿勢がとても大切です。一生懸命な姿を見せれば、「私たちのために頑張ってくれている」「サポートしたい」と思ってもらえるはず。とにかくまずは、何事にもひたむきに取り組むことからスタートしましょう。
清家
業務報告や小さな相談など、定期的に1on1ミーティングのスタイルを取る部署は、雰囲気も良好だと感じます。新米管理職であれば、自分の不慣れな部分や分からないことは素直に相手に伝えるとともに、信頼できる上司や同僚などにアドバイスを求める環境を整えておくことが良いと思います。
Q4 休日はどうしてもダラダラ過ごしてしまっていつも後悔します。充実した休みを過ごすコツを教えてください。
佐藤
結婚する前は、マグロみたいに常に回遊していないと生きていけないタイプでした。休日はに3〜4つ用事を入っていないと落ち着かず、「生き急いでいるね」と言われていました。もし、強制的に奮い立たせるのなら、「誰かと一緒に何かをする」を意識付けると良いと思います。人と行動する予定を入れると、必然的にキビキビ動くことになりますから。
清家
タイムマネジメントの本によると、水曜日までに週末の予定を入れると良いと書いてありました。一度実践してみてください。
太田
逆に、ダラダラすることがリフレッシュになることもあるのではないでしょうか。やりたいことがあれば、それに向かって一直線になれると思いますが、たまにはダラダラすることも必要です。
Q5 あの時こうしていればと思うことはありますか?
太田
私は独身なのですが、20代の頃に1度、結婚のタイミングが訪れました。しかし、その頃は自分がそんな気持ちではなかったので、結婚しませんでした。特に後悔しているわけではありませんが、「もしあのとき結婚していたら自分の人生はどうなっていた?」と思うこともあります。ただ、“自分で決めたから今こうなっている”と思うようにしているので、後悔することはほとんどありません。
佐藤
普段、物事をじっくり考えるタイプなので、後悔することは少ないです。もともと結婚願望がなかったのですが、ひょんなことをきっかけに、友人と1年間婚活をしてみました。「これでだめだったら結婚しなくても良いね」なんて話しながら。そこで主人と出会い、結婚。「あのとき主人に出会わなければどうなっていたかな」と思うことはあります。どちらにせよ楽しく過ごしていると思いますが…。
清家
あまり人生で後悔を感じたことはありません。あえて挙げるなら、もっと早い段階からお金について学んでいたら良かったなぁと思います。現在、高校の教育で、金融や資産形成の教育が始まっています。学生のうちから「お金」にまつわる正しい知識や判断力を身につけると、社会の見方が変わったかもしれませんね。
最後に
質問タイムが終わると、参加者と登壇者で名刺交換タイムを行いました。異なる業種の方々と、仕事のことや家庭のこと、さまざまな話題で交流を深めていました。同じ悩みを抱える女性同士がともに学び合う有意義なセミナーとなりました。