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女性応援企業「女性の活躍推進には、男性の意識改革が必要」 社会福祉法人 庄内厚生館
- 取材記事 2020.03.29
- #トータル支援#社会福祉法人#男性の育児休業#女性活躍推進事業者表彰
社会福祉法人 庄内厚生館
法人本部長
伊藤 秀海さん
戦後間もなく誕生し、保育園、児童養護施設、障害者施設、介護施設などを多角的に経営している庄内厚生館は、子どもから障がいを抱える人々、そして高齢者までをトータルに支援できる大分県内唯一の社会福祉法人です。活躍している人材も、子育て世代からベテランに再雇用の高齢者までさまざま。そんな中、より働きがいのある職場を目指した新しい制度づくりが進んでいるようです。キーワードは「男性職員の意識改革」。次々にアイデアを実行している法人本部長の伊藤秀海さんにお話を伺いました。
男性の育児休業取得者
第1号を誕生させよう
戦災で夫を亡くした女性たちが働く場所をつくり、さらに彼女たちが仕事中に子どもを預けられる保育所を設けたというのが、庄内厚生館のはじまり。創設者である初代理事長は、当初から産休・育休を取得する女性に給与を全額保証してきたという逸話が残っています。その精神を受け継いでいるのが、息子である現理事長の伊藤大海さんと、孫にあたる法人本部長の秀海さん。そして、令和の時代に突入した2019年、秀海さんを中心として子育てに関する制度が新設されました。その根本となったのが、「女性が出産、育児に集中できる環境をつくるためには男性の働き方改革や育児参加が不可欠」という考え方。「まずは男性の意識改革が必要だと思い、男性の育児休暇取得者を誕生させることから始めました」という秀海さんです。さっそく、法人内で夫婦共働きの職員に子どもが生まれることになり、男性職員の育休取得者第1号が生まれるまで、カウントダウンが始まりました。と同時に、新時代にふさわしい制度が続々と誕生することになったのです。
職員の「声」を吸い上げ
カタチにした制度
一つ目の制度は、「育児目的休暇」です。制度改革に向けて参考としたのが、経営企画室が実施してきた職員対象のアンケート。調査の結果、男性が育休を取りづらい理由のひとつに「給料が減るから」という声が多かったそうです。これを解消するために、従来は有給休暇を育児に充てることを勧めてきたところ、もっと長期で取得してもらうための給与制度改革に踏み切ったとか。現行の社会保障制度に則ると給料の約8割しか支給されないので、会社から13%を上乗せして支払い、ほぼ全額支給になる形を叶えたのです。また二つ目に、奨学金の返済に追われている職員も多かったことから、対象者に月額1万5000円を支給する手当をつくり、経済的負担を軽減。さらに三つ目の制度として、「子育て休業サポート手当」も完成しました。産休・育休を取得する人の代替要員の確保も課題だったため、同じチームの職員がお互いを支え合う雰囲気を醸成しようとしたのです。「産休・育休を取得する人だけが優遇されるのではなく、周囲の人も満足してくれる状況をつくるべきだと思うのです」。この制度により、育休取得者が発生した施設の該当職員を対象に、手当が支給されることになりました。
意識改革に手応え
今後はさらなる働き方改革へ
新設の制度を活用した男性の育休取得者第1号がいよいよ誕生し、彼は妻が里帰り先から自宅に戻ってくるタイミングから1ヶ月の育休を取得。夫婦からは「助かった」という感想を聞くことができたうえ、周囲の男性職員からも「取得したい」との声が挙がるようになり、手応えを感じているそうです。いずれは「企業内の出生数を統計に取り、増加を狙いたい」と取得率の向上を目指している秀海さん。また、夫婦同じ職場で働く職員が、夫に「先に帰るよ!待ってるよ!」と言う姿も職場内で見られるかもしれません。「そうすると周囲の理解も高まりますよね。子育てをとりまく環境を夫婦間で共有することはもちろん、会社とも共有することが大切です」。今後は経験者からの声も積極的に吸収し、「育休取得者に子育てグッズなどもプレゼントしたいですし、経験者の方々が後輩の相談役にもなっていってくれたら」と理想を描いています。こうした取り組みが評価された庄内厚生館は、令和元年度のおおいた女性活躍推進事業者表彰を受賞。さらに次年度は、働き改革に向けた若手主導のプロジェクトチームを編成し、機運を高めていく予定。今後の進化にも、目が離せません。