Experience

シリーズ記事
スキルアップのために体験したいセミナーや
企業の取り組みをまとめています。
「Woman NEO」Vol.10

「Woman NEO」Vol.10

シリーズ記事 2020.01.30

制度を整え、利用できる風土に
Woman NEOは昨秋、働く女性80人にアンケートを実施。結果を基に、大分大学の松浦恵子副学長(ダイバーシティ担当、男女共同参画推進室長)にお話を聞きました。

―アンケート結果から読み取れることは。

回答者の半数が正社員であり、抽出の仕方によっては違った結果が出たかもしれませんが、 生き生きと働いている女性の姿が見えてきます。とてもうれしく思いました。
反面、意識や組織風土など課題もあると感じます。 個別の記述には、数字には表れない問題点も根深くあります。例えば、「あなたの周囲では女性が生き生きと活動していますか」 の問いは「そう思う」「ややそう思う」が8割を占めましたが、「いきいきと活動はしているが、男性と比べると割合はやはり少ない」といった記述も見られます。ロールモデルの少なさが表れているといえます。
「女性が働くには不利な点が多いですか」の「そう思う」「ややそう思う」には「まだまだ家事や育児は女性がやるものという風潮が強い」といった声もあり、根強い固定的性別役割分担意識が見えてます。

―大分県の働く女性を取り巻く課題は。

女性の登用について県内企業に意識調査をしたのですが、都市部と比べるとやはり遅れていることが分かります。女性管理職登用目標を策定している企業は福岡の3分の1。反対に、女性の管理職比率が20%以下の企業は福岡の1.5倍です。
中小企業を中心に「女性は結婚したら退職するもの」という風潮がまだ残っているところ、出産後は責任ある仕事は任せないというところもあるそうです。会社としては配慮したつもりでも、本人のモチベーションに影響することも。いわゆる「マミートラック(産後復帰した女性が、残業や転勤ができないといった制約のため、昇進などが不利になるキャリアコース)」は当たり前のように存在します。

―近年の特徴的な傾向は。

生き生きとした女性が増えていることはアンケートにも表れている通り。大分県は企業の女性社長の比率が全国3位という調査結果もあります。女性社長、起業家の皆さんは本当にポジティブで、アイデアを持ったすてきな方ばかり。県も今、女性の起業支援に力を入れています。この流れはここ数年のことではないでしょうか。
男性の育児への関わりも当たり前になってきていますね。子どもの健診などに父親が行くのも珍しくありませんし、男子学生も将来の育児に積極的です。だからこそ、男性が育休を取得しづらい職場のムードに苦しんでいます。
「女性の両立支援は進んできたのに、なぜ育児をしている自分たちは支援してもらえないのか」という声もあります。男性が育休を取りたくても取れないことのしわ寄せは女性に来ます。家庭と仕事の両立を考えなくてはならないのは全て女性ということになってしまう。男性の支援も一緒にやらないとどこかで矛盾が生じます。

―性別にかかわらず誰もが活躍できる社会にしていくには。

いわゆる「粘土層(古い考え方に凝り固まった管理職世代)」の意識を大きく変えることは難しいかもしれません。ただ、孫の誕生は大きなきっかけの一つになり得ます。イクジイ支援も効果的といえるでしょう。
柔軟に物事を受け入れる若い人たちへの啓発に力を入れていく必要があります。「女性はこうあるべきだ」「男性はこうなんだ」とか「自分は女性だから上に立たなくてもよい」といった「無意識のバイアス」をどうしていくかは一つのポイント。無意識を意識化するだけでも、考え方は変わってくるはずです。
柔軟な働き方ができる制度を整え、きちんと利用できる風土にしていくこと。地道にやっていくしかありません。障がい者や高齢者、外国人らを含め、職場に多様な人がいるのは大事なこと。まずは人口の半分を占める女性が感じている不便さや窮屈さを払拭することが必要です。社会全体、大分県が活気づいていくと思います。
page top