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2025.04.29

家が整うと心も整うという経験をしているからこそ、
困っている人の力に…

佐伯 有香さん [整理収納アドバイザー]

今回のママ:
佐伯 有香(ゆか)さん [整理収納アドバイザー]
36歳・大分市出身・大分市在住
(幼稚園年中・保育園の一男の一女の母)

整理収納アドバイザー1級、企業内整理収納マネージャー、古物商という肩書きを持つ「クルリライフ」代表の佐伯有香さん。祖母の障害を理解したいと福祉を学び、その後は金融関係の仕事へ。リモートワーク勤務を続けるも、自分にあった働き方を探し〝片付けを通じてママたちを笑顔にする〟を目標に、今の仕事にたどり着いた。一度きりの人生、後悔がないよう夢に向かって一歩ずつ歩みを進める、現在進行形の佐伯さんに話を聞いた。

コロナ渦で子どもと2人だけの
鬱々とした大阪での生活

取材場所にはカフェを選ぶことが多いのだが、今回、佐伯さんに取材をお願いしたところ「仕事もこんな内容なので、自宅に来てただいてよろしいですか?」とご自宅に招いてくれた。初対面の人間が家に上がることに抵抗がある人も多い中、ちょっと嬉しい気持ちになった。玄関の呼び鈴を鳴らすと、可愛らしい女性が出迎えてくれた。

「整理収納アドバイザー=ミニマリスト=生活感を感じさせない部屋」という連想ゲームを勝手に頭の中で作り上げていたが、通されたリビングには遊具や本が使いやすそうな配置で並び、きっとお子さんが描いたのであろう可愛らしい絵も飾られていた。「こんな部屋ですけどどうぞ。リアルな生活を見てもらいたいので…」と佐伯さん。親近感が湧くホッと落ち着く空間に、彼女の飾らない人柄を感じた。



大分市出身。大分県立大分鶴崎高校を卒業後、別府大学の人間関係学科で心理学や社会福祉学などを学んだ。「同居していた祖母が精神障害者だったんです。祖母の気持ちや状況を少しでも理解したいと思い学んでいたのですが、在学中に祖母が亡くなり、そこから糸が切れたように関心がなくなってしまって。私はそこにとらわれなくてもいいんだと、卒業後は福祉とは関係のない保険代理店の仕事に就きました」。

勤務して7年目の時に、高校の同級生だったご主人との結婚が決まり、仕事を辞め、ご主人が住む大阪へ。31歳で第一子を出産し、3年間を大阪で過ごした。「大分で里帰り出産をしたんですけど、大阪に戻りすぐにコロナ渦に。両親は近くにいないし、子育ての悩みを共有できるお友達もいなかった。子どもルームも閉鎖されて、産まれたばかりの赤ちゃんと2人きり、ずっと家にこもって鬱々とした日々を過ごしました。あの時は本当にしんどかったですね…」。

その環境を変えようと、お子さんが1歳を迎えたタイミングで保険代理店のテレワークの仕事を始めることに。

「研修期間として、最初の3ヶ月は京都まで1時間半かけて通勤しました。その間、私がコロナに感染。社内で初の感染者だったので、会社も、娘を預けていた保育園も大慌てでしたね。〝感染予防も徹底してたのになんで? 私のせいでみんなに迷惑をかけて…〟って、当時はすごく自分を責めました」。

ホテルに隔離された2週間、ご主人がお子さんと2人で暮らすことになった。「主人も大変だったと思います。でも子育ての大変さを経験してくれたのは、今考えると良かったなと思いますね。そこからは家事も子育ても、協力的になってくれました」。

佐伯 有香さん [整理収納アドバイザー]

自分を責める日々に疲れ
起業することを決意

その後、佐伯さんが33歳の時に大分に戻ることになり、引き続きテレワークの仕事を続けた。「大阪での暮らしがやっと楽しくなってきたタイミングだったので少し残念でしたけど、親や友達が近くにいて、頼れる場所があるのは本当に楽だなって、痛感しました」。

その年に第二子を妊娠。つわりがひどく、仕事もままならない状況に…。「テレワークなのに休みがちになって、仕事がまともにできない自分に負い目を感じるようになっていったんです。出産後9ヶ月で仕事に復帰したんですけど子どもの体調不良が続き仕事が全然できない状況で、申し訳なさもあって、常に『ごめんなさい』という気持ちでした。主人の仕事は調整できないから、じゃあ私がなんとかするしかない!と、その時に自分で稼ごうと決意しました」。



育休中、副業でアパレルのせどり(商品を安く仕入れ高く販売することで利益を得る物販ビジネス)を始めていた佐伯さん。「実は大阪にいる時から、趣味程度でアクセサリーの輸入販売をしていたんです。アパレルせどりがいいという話を聞いて、子どもを抱っこしてリサイクルショップを巡って、売れそうな商品を見つけたらフリマアプリで市場調査したのち購入して、それを売って…というのをしてたんです。でも、自分で直接仕入れたものを売ったほうが利率が上がるので、古物商を始めました。家にある不用品の買い取りをしていたら、じゃあ片づけしたい人が不要品を手放せるような仕組みを作ろうと、整理収納アドバイザーの資格を取得して、買い取りと整理整頓を合わせた仕事をスタートしました」。

佐伯 有香さん [整理収納アドバイザー]

その先にある
虐待を防止したいという想い

古物商の仕事は買取の会社を紹介する形に変更し、現在は整理収納アドバイザーの仕事へシフトチェンジ。個人宅の片付けを始め、企業や店舗の整理収納アドバイスの仕事を強化している。

「私自身、家を整理することで自分のやりたいことまで見つけることができたので、部屋が散らかっていることでイライラしている人たちの助けになりたいんです。子どもがいるとどうしてもモノが増える。出ていくスピードより、入ってくるスピードが上回るから仕方ないんですけど、片付く仕組みがわかれば、今より絶対に負担が減るんです。お母さんってやること多いし、視界に入る情報が少なくなれば頭がだいぶスッキリするはず。そのお手伝いができたら嬉しいです」。





本格的に仕事を始めて約半年。様々な家庭に赴く機会もあった。

「片付けは心とリンクしていると思っていて…。忙しくて散らかっている家もあれば、心の問題で整理できない家もあるんです。モノがテトリスのように積み上がる場所になんとか隙間を作り、寝るスペースを確保したこともあります。ネグレクトやヤングケアラーなど問題を抱えているであろうご家庭に伺ったこともあるので、今の仕事って福祉の領域にも関わってくるなと感じています。片付けを通じて虐待を減らしたいという思いが常に根底にあって。虐待をしている家庭は十中八九、家が散らかっているというボランティアの方の話も聞きました。虐待って親の心の問題から発生すると思うんです。余裕がないときについ手を出してしまう。でもその気持ちもすごく理解できるんですよね。片付けることで楽になり、心に余裕が生まれることで予防できるんじゃないかって。大学で福祉を学んだからこそ、そこに寄り添いたいという思いもありましたが、今の私ではまだ力不足。私自身にもっと力をつけて、いつの日か、行政や福祉と連携し、その仕組みを作りたいという夢があります。そのためにも今の仕事の幅をもっと広げていきたいですね」。

佐伯 有香さん [整理収納アドバイザー]

自分を大切にすること
その手段の一つが片付けること

仕事をしている中で一番のやりがいを感じる瞬間は、依頼してくれた人たちの喜ぶ姿を見た時。「家が整い変化が実感できると、それを見たママたちの顔が一瞬で明るくなるんですよ。その喜んでくれる姿を見ると、この仕事をやってきてよかったって思います。また一方で、片付けの中で大切なモノを手放す時に『この洋服は子どもが小さい時にね…』って思い出話を共有してくれることもあるんです。そういう時間も尊いと感じます」。

生前整理の勉強も始めたと佐伯さん。やりたいことが山積みの今の状況も楽しんでいる様子だ。「困った時にいつでも相談できる存在になれたら。私の経験からアドバイスできることもあるので、そのためにも、いろんなことを学んでいきたい」と目を輝かせていた。



この数年、知人や友人の死に直面した。10代、30代の若い人たちとの別れも経験し、それはとても辛い出来事だった。

「毎日生きていることすら当たり前じゃないと思いました。自分が生きていること、家族が元気に暮らせていることに感謝の気持ちを忘れずに過ごして生きたいです。いつ終わるかわからない人生を楽しく生きて、やりたいことを全部やると心に決めて、今動いています。子どもとの時間も大切にして、その時間をご機嫌に過ごせるように、まずは自分を大切にして満たしてあげることで、家族にも周囲にも優しくできると思うんです。その手段の一つが片付けで、家が整うと心も整うという経験を私がしているからこそ、困っている人の力になれたらと思っています」。

たかが片付け、されど片付け…。自分に置き換えてみても、心に余裕がない時は部屋の中が散らかっていくという実感がある。逆に、部屋がきれいだと家事も仕事も子育ても、いろんな物事がうまく循環していく気もする。家族が身を置く環境を整えることって、家族のためにも、そして自分のためにも大事なことなんだと、佐伯さんの話を聞いて改めて考えさせられた。

佐伯 有香さん [整理収納アドバイザー]

この記事のライター:安達博子

副業でせどりを始め、買い取りを増やすために整理収納アドバイザーの資格を取得し、それが今の仕事の柱となっている佐伯さん。すべての経験は自分の肥やしになると思っているけれど、まさにそれを体現しているたくましい女性だと感じました。衣食住は、人間が生活する上でとても大切な土台。その中の「住」を整えることが、虐待防止につながるという話しは理にかなっていて、いつの日か行政と手を取り、サポート体制が整う日が来ることを願っています。今の仕事を、自らの力で作り出した佐伯さん。その姿は同じ立場のママたちを元気づけ、後押ししてくれる存在になってくれることと思います。佐伯さんのインスタがまたとてもお茶目で、ありのままの姿が共感しかない(笑)。夢に向かう佐伯さんを、これからも応援したいです!

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