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2018.10.31

働き方改革、女性活躍社会の鍵を握る
「イクボス」について知ろう、学ぼう。

「イクボス」について知ろう、学ぼう。

イクボスセミナー(基本編)

平成30年10月19日(金)。大分市、ホルトホール大分にて、大分県主催のイクボスセミナー基本編が開催されました(協力NPO法人ファザーリング・ジャパン)。最近注目を浴びている「イクボス」。人口減少、高齢化社会の今、働き手が減少する一方で共働き世帯が増加している今、企業が優秀な人材を確保し、社員が働き続けるためには、仕事と私生活が両立できる職場環境が求められています。その鍵を握るのが、経営者や上司の存在。部下を、組織を、社会を育てる「イクボス」について知りたい、学びたいと、70名を超える参加者が集いました。

今、社会が求める「イクボス」について熱く語りあう。

はじめに主催者である大分県こども未来課子育て支援班の御手洗課長が挨拶に立ち、「出産数の減少が続く大分県ですが、なかでも第2子が少ないという状況があります。その問題を解決するためには、妊娠・出産をサポートするイクメン=男性の育児、家事の参加がとても大切です。その鍵を担うのは上司であり、経営者であるイクボスの存在なのです」とイクボスの重要性をアピール。

続いて、第一部、NPO法人ファザーリングジャパン代表の安藤哲也さんによる講演会がスタートした。共働き夫婦である安藤さん。「子どもがインフルエンザで休んだときに、妻が上司に、これだから子どもがいる人は戦力にならないと言われ落ち込んでいた。これは何かおかしいなと…」と、自身のエピソードを交えてイクボスが求められる背景を紹介。世界各国と日本の労働環境の比較、働き方改革のポイント、全国のイクボスの皆さんの成功事例などをユーモアを交えながら、分かりやすく説明してくれました。

第二部は安藤さんがファシリテーターとなり、地元企業3社によるパネルディスカッション。
ご参加いただいたのは、オムロン太陽株式会社・大前さん、庄内厚生館・伊藤さん、社会保険労務士・篠原さんの3名。
「まずは自分を含むグループ長がイクボス宣言をしました」、「会社で子育て応援セミナーを開いたら、ママたちからパパ目線の話、考え方が聞けて良かったという声をもらいました」、「会社にとっても、働く人にとってもやりがいがあり、続けられることを書き出し、業務の棚卸しに取り組んだ」など、自社の取り組みを通じた貴重な意見が交わされました。皆さんの話を受けて、「イクボスになるための特効薬はありません。でも漢方薬のようにずっと続けることが大切なんです」と安藤さん。今回の基本編に続き、次回は11月9日(金)に大分、別府の2会場で、イクボスセミナー実践編が開催されます。ぜひ、ご参加ください!

イクボスセミナー実践編の申し込みはこちら
http://www.pref.oita.jp/soshiki/12470/oita-ikuboss.html

「イクボス」について知ろう、学ぼう。

ママが働きやすい環境づくりが
イクボスやイクメンを育てる。

─ママのままプロジェクトでは、いろんなママへの取材を行っていますが、結婚、出産、子育てとステージが変わる中で「家庭と仕事の両立が難しい」、「職場に居づらくなった」という声は少なくありません。

安藤:ママたちにとって働きやすい職場、子どもを育てながらキャリアを伸ばせる会社であることは、これからの社会において、大企業、中小企業問わず重要なことだと思います。その一方で家庭内においても、パパの育児参画とか家事サポートも働くママにとっては欠かせません。その両方について言えるのは「ロングビジョン」をママ自身が持つこと。自分がやりたいこと、キャリアアップ、豊かな生活…子育て期間はもちろん、子どもが巣立った後のことなども、ちゃんと考えて、ビジョンをパートナーと共有することが大切ですね。

─ママが働きやすい環境づくりは、どのように進んでいくのが良いのでしょう。

安藤:日本の民間企業では、まだまだ男性と女性の賃金格差があります。その一つに労働時間の長さも関係しています。正社員でフルタイムじゃないと無理だよとなると、出産、育児期に働くのは難しい。だから女性の離職率が高くなる。そこを経営者や父親一人ひとりが理解しないと始まりませんね。母親の幸福度の調査によると、世界トップクラスのオランダやデンマークに比べて、日本の母親はかなり低いんです。母親を支える社会システムの弱さ、夫の育児参画の低さが女性が活躍できない大きな原因になっています。女性が活躍できないと家庭の所得も伸びないので「家計的には子どもは一人が限界だね」という話になって少子化にもつながっていく。私たちのイクボスやイクメンを育てる活動は、職場と家庭の両サイドから少しづつ改善することを狙っています。

─経営者の方も、パパも「働くママのために…」と思って動いているものの、ママたちにとっては、それが見当違いになっていることもあるようです。何か良い解決方法はありますか?

安藤:経営者のトップダウンでは働く女性のニーズに的確に応えることは難しいかもしれませんね。家事も男性のスキルは、ママの望むレベルには達していないかも。最初っから上手くはいきませんよ。ただ毎日コツコツ続けていれば、職場環境も家事サポートも向上します。ここでポイントになるのは、男性は自分のイメージではなく、どうすればママが満足するのかということをちゃんと研究すること。それは、いろんな仕事の中で「顧客はどうやったら喜んでくれるかな」と考えることと同じ。家庭でもできるよって思うんですよ。だから、手伝おうかとか「家庭サービス」ってのはNGですよとイクメンのセミナーでは言ってるんです。手伝うじゃなくて、やるべきことはいっぱいあるわけだから、自分で気づいたら動く。特別な日に立派な料理っていう家事じゃなくて、排水口の髪の毛を取るとか、シャンプーが切れてたら補充するとか、名もなき家事をやることが大切なんです。それだけでも、仕事から帰ってきたママの家事が一つなくなるわけだから、すごく感謝されると思いますよ。

「イクボス」について知ろう、学ぼう。

ワークライフバランスから
ワークライフシナジーの時代へ。

─今日のセミナー、ディスカッションを通じて感じたのは、イクメンやイクボスを育てるのはやっぱり女性じゃないだろうかと。

安藤:そうですよ。イクボス、イクメンを増やすにはにはどうすればいいです?とよく訊かれますが、「そんなの簡単ですよ、女性が働けばいいんです」と。男性の育児が増えない理由の一つに、女性はしっかり者で強いから「全部自分でやったほうが早い」とか、「自分の方がうまいから」という気持ちもあると思います。子育てや家事は私の領域なんだから入ってこなくていいと。それが男性の育児参画を鈍らせている面もあるかと思います。働くことの意味って漢字で書くと人が動くって書いて、ひらがなだと「は・た・ら・く」じゃないですか、つまり「はた」にいる人を「らく」にするっていう意味なんですよ。パパが家で家事やると、ママが楽になる。ママも時間ができれば働こうかなと意欲が湧いてくる。それにより家族の暮らしが豊かになるのではないでしょうか。

─ワークライフバランスは、それぞれの家庭の中で起こる小さな出来事や課題とつながっているんですね。

安藤:そうなんです。だからワークライフバランスを考えるとき、天秤から寄せ鍋に考え方を変えましょうとよく話します。天秤って常にどちらかを犠牲にして、どちらかが成り立つみたいなイメージがありませんか。それって、常にアンバランスで、ストレスなんですよ。そこで寄せ鍋みたいに分けずに考える。仕事しているときも家事の事を考えたり、逆に家庭の中で得たものを仕事で活かすとか、オンとオフではなく、自分の人生を寄せ鍋に見立てて、具材として仕事とか子育てとか地域の活動とか趣味とか色んなものを盛り込みながら、バランスを取っていく。ワークライフバランスじゃなくてワーク・ライフ・シナジーの時代だと思います。自分の人生の鍋奉行なんだと思って(笑)、ライフデザインしていただきたいですね。

NPO法人ファザーリング・ジャパン
http://fathering.jp/

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