2018.06.19
姫野秀信さん(朝日キャリアバンク株式会社 代表取締役)
「子育てと仕事を両立したい」と考えるママにとって、最大の課題は「時間」と「環境」。企業との折り合いがつかず「働きたくても働けない」というケースが少なくない。働きたい人と企業のマッチングを行う人材派遣会社「朝日キャリアバンク」は、女性をターゲットにした求人サービスを開始。ママの力を社会へ届けるため、様々な取り組みを行っている。ママと企業をつなぐ独自のシステムや次世代のワークスタイルなど、これからの時代を見据えた「ママの働き方サポート」について、代表の姫野秀信さんに話を伺った。
ー人と企業をつなぐサービスを提供される中で、「女性向けの求人」に力を入れるようになったきっかけは何ですか?
2016年頃、求人サービスの会員登録者数が減少したことがきっかけです。ちょうどその頃「女性の働き方」についての議論が盛んに行われるようになり、弊社でも女性向けの新しい求人サービスを届けるための取り組みを始めました。人口減少が進み、これからは男性の労働力だけでなく女性の力も必要になってきます。中でも「子育てママ」の力を活かすことが、将来の人材派遣における重要なポイントだと考えました。
ーママの力を起業へ届けるために、どのような取り組みをしているのですか?
子育てしながら働くためのサポートとして、ママと企業をつなぐサービス「ママキャリ」をスタートしました。インターネットやメールで「ママ」と「企業」が直接やり取りできるシステムを導入し、自宅にいながら就職活動をすることが可能に。子育てなどで忙しいママのライフスタイルにも合っていますし、面接などで外出する必要もないので、時間の有効活用につながっていますね。
ー企業とママが直接やり取りをする中で、朝日キャリアバンクさんはどのようにママをサポートしているのですか?
私たちは、ママと企業が円滑にコミュニケーションを図れるためのコーディネーターとして様々なサポートを行っています。例えば、午後から4時間だけ働きたいママがいるとします。魅力を感じる仕事があっても、朝から8時間の勤務であれば、その会社は候補から外れてしまいますよね。そこで「ママキャリ」では、ママが企業と勤務時間の交渉ができるよう「スキルシート」という仕組みを設けました。ママが持つスキルや強みを「スキルシート」へ記載し、直接企業へアピール。「時短でも良いから自社で働いて欲しい」という企業の増加へつなげ、ママの雇用を拡大する狙いがあります。
ー履歴書を一方的に送るのではなく、直接やりとりすることで、お互いの細かいニーズや困りごとが見えてくるんですね。ところで、どんなお仕事がママから人気なのですか?
やはり事務職が人気です。土日に休みやすいお仕事なので、お子様との時間をつくれることが理由だと思いますね。登録者の中には、土日に勤務するシングルマザーの方もいらっしゃいます。そのような方には、こちらからヒアリングを行った上で、勤務する曜日・時間の細かい調整を企業へご提案しています。「ママキャリ」にご登録いただく際には、ご家庭の状況なども可能な範囲でお伺いして、最適な働き方ができるように企業側にお伝えしていますね。
ー企業との橋渡し役になってくれるコーディネーターがいることが、ママの働きやすさにつながるのかもしれませんね。
企業がママに求めること、ママが企業に求めること…その両面で折り合いをつけ、ベストな形でマッチングするのが私たち「コーディネーター」の役割だと思っています。
ー「ママキャリ」のほかにも、ママの働き方支援に関する取り組みは行っていますか?
家にいながら仕事ができる「テレワーク」を推進し、多様な働き方を実現するための準備に取り組んでいます。首都圏では既にそのような働き方が広まり始めており、今後地方にも波及してくると思います。普及には時間がかかると思いますが、弊社の事業の新しい柱になるように育てていきたいですね。そのために今年から東京の「ママワーク」と提携し、ノウハウを学んでいます。
ー「ママワーク」と提携することによって、どのようなことが可能になるのですか?
「Skype」のように、離れた場所にいる相手との情報共有が可能になります。ママワーク専用Webシステムの「ミートイン」を使用して端末の画面上に文字を書き込むと、通信相手の画面にも反映される独自のシステムを導入しており、相手が目の前にいるようにアドバイスや指示を受けることができるんです。
ー「テレワーク」の活用によって、ママの働き方の幅が広がるかもしれませんね。
そうですね。弊社でもテストケースとして、育児休暇を終えた社員が「テレワーク」で勤務しています。現在は5時間の時短勤務中で、「テレワーク」に関するノウハウを学んでいる最中。今後「テレワーク」推進の旗振り役としての活躍を期待しています。
ー相手の顔が見えない中で仕事をすることに対して、心配や不安な気持ちを感じる方もいるのではないでしょうか。
そのような気持ちを持つ方もいらっしゃるとは思いますが、今後首都圏から「テレワーク」の成功事例が出てくるにつれ、抵抗感は薄れてくるはずです。時間をかけて地道に取り組み、将来は「テレワークで働きたい人」と「テレワークに関心がある企業」のマッチングを行っていきたいですね。
ー朝日キャリアバンクは、働く女性の姿についてどのような印象をお持ちですか?
非常に真面目な方が多いと思います。仕事に対して真摯に向き合っており、男性に比べてサボる方も少ない印象があります(笑)。あとは、女性は相手の話を引き出すのが上手いですね。弊社の求人サービスは女性会員が多いので、対応するのが男性社員だと言いづらいこともあるはず。しかし女性社員が対応すると、相手が同性という安心感からか会話が膨らみ、男性社員が聞きづらいことも聞けるようになるんです。それがきっかけになり、良いマッチングにつながることもありますね。
ー結婚や出産のタイミングで職場を離れる女性も少なくありません。このような、働く上での「性別の壁」についてはどのようにお考えですか?
弊社には、2度の育児休暇を経て職場復帰をした社員がいます。育児休暇でブランクができたとしても、以前から働いてくれている社員は仕事に安定感がありますし、スキルも高い。今後は「女性だから」「男性だから」という枠を外し、性別に関係なく活躍できる時代がやってくるはずです。
ー女性の働き方が多様化する中、「女性が活躍できる社会」がどのようなものなのか、答えが出しづらくなっていると感じます。その点について、どうお考えですか?
「女性の働き方」という大きなテーマで考えることで、本当に大切なことが見えなくなっているのではないでしょうか。弊社では「自宅でも仕事ができる」「企業と直接勤務時間の交渉ができる」という、ターゲットを絞ったテーマに基づいてサポートしているので、その条件に当てはまる方にとって、最適な働き方を提供できています。全ての女性へ理想の働き方を提案するのは、一企業の取り組みでは難しいはず。ひとりひとりに寄り添い、最適な働き方をお届けすることが私たちの使命だと考えています。
ー時代の流れやライフスタイルに合った働き方を提案し、多くの女性が自分らしく働ける場所を届けることが大切なんですね。
ワークライフバランスをしっかり取ることが、豊かな人生を送ることにつながると信じています。子育てをする時期は家のことを優先して、子育てが終われば仕事を優先する。企業側もそのバランスにしっかりと向き合い、理解していくことが大切ですね。1人でも多くの女性が社会で輝くために、これからの時代にマッチする働き方を提案していきます。
朝日キャリアバンク 株式会社
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