2019.01.24
櫻木 祐宏さん(おおいたスタートアップセンター所長)
大分市東春日町のソフトパーク内にある「おおいたスタートアップセンター」は、起業を考えている人をワンストップでサポートする施設。現在の会員数は1350名。約40% 600名の女性会員の中には子育て中のママもたくさんいる。「ママの自身の人生観や価値観が起業のきっかけになる」と語る櫻木祐宏センター所長に、同施設のサポート内容や起業を志す女性へのアドバイスなどじっくりと話を伺った。
─おおいたスタートアップセンターとはどんな施設なのですか?
大分県が男女問わず起業を志す人を支援することを目的に設立したのが「おおいたスタートアップセンター」。フロア内には起業家が集う交流スペースやセミナールームもあります。会員登録をすれば、起業に関するセミナーに参加したり、創業に関する相談サポートなどのバックアップを受けることができます。現在の会員登録数は1350名ほど。そのうちの約40% 600名が女性です。起業や創業するというのは、簡単にいうと商売をはじめる人。法人設立だけでなく、個人事業主としてスタートする人も全部含みます。今は自宅をオフィスやショップとして兼用したり、ウェブを活用したビジネスもあるので、スタートアップという呼び方がふさわしい気がします。とにかく新しいことをはじめる人たちは、皆さん「起業」していると言えるのではないでしょうか。今までやったことがないことに取り組むこと、新しいことをやろうと決意することがスタートアップ。そこから起業につながることもあれば、就職につながることもある。どの道に進んだとしても、私たちは、そんなやる気のある人を応援したいと思います。
─女性の会員の中には子育て中のママもいますか?
もちろんです。起業したいと漠然と考えているが、何から始めていいのか分からない、今、何を悩んでいるのかモヤモヤしている…そんなママも多く訪れます。不思議なことに専門のスタッフと話している間にだんだん自分の考えが整理されていくんですね。具体的なプランは仕上がっていなくても、仕事だけでなく、子育て、夫婦の役割についてなどをいろんな角度から考えていくことで、ずいぶん前に進むことができますよ。ゆっくりとご相談いただけるように、女性インテリアコーディネーターに手伝っていただき、カフェのようなリラックスできる空間づくりを意識しました。
─大分県は「おおいたスタートアップウーマンアワード」などのイベントも主催していますね。
起業や成長を目指す女性起業家が、夢の実現のための新たな一歩を踏みだすことができるイベントです。まずは自分がやってみたいビジネススタイルや起業プランを募り、審査を経て選ばれたファイナリストにはプレゼンテーションする舞台が用意されます。本イベントの特徴はビジネスプランの優劣を競うのではなく、女性視点を活かした「想い」を実現すること。県内企業を中心とするサポーター、地域で起業を支援するパートナーにご協力を頂き、課題解決をサポートするサポーター賞や、当日の聴衆の共感度で選出されるオーディエンス賞が決まります。女性起業家と企業サイドの出会いが実現しますので、良いビジネスプランだと思えば、企業はその方に仕事をオファーしたり、活動を支援することができます。バリバリのキャリアウーマン、ついこの間まで学生さんだった人、シニア世代の方、もちろん、子育て中のママもいますよ。女性の起業家も多様化していることを実感しますね。
─会員登録数やビジネスプランの発表会へのエントリーなど、大分県内でも女性の起業家がどんどん世の中に出て、活躍する時代が訪れている気がします。
中小企業白書のアンケートに寄せられた女性の皆さんからのリクエストは「知識を得るための機会を与えてほしい」、「セミナー、勉強会の情報が欲しい」、「創業のための準備で必要なことは?」など、本当に前向きなものが多いですね。起業することは資格を取得するわけではないので、半年で実現してもビジネスプランを温めながら3年をかけてもいいのです。特にママは、結婚や出産、子育てなど家庭環境とかの変化もあるでしょうから、そういう長い時間をかけて緩やかに夢を実現するのもいいと思います。ママとして子育てと仕事を両立させることに悩んだから、これからママになる女性たちのストレスが少しでも軽減する環境を作るビジネスモデルを考えたり、これまでは、大量購入、大量消費をしてきたけど、これからはできるだけゴミを出さないようなエコな生活をビジネスに転換したり、ママの視点で着想、発想したビジョンやキーコンセプトもたくさんあると思います。自身の人生観とか世界観、価値観をビジネスに投影させることは起業モチベーションのアップにもつながります。
─これから起業を志す女性の皆さんにアドバイスはありますか。
「虻蜂取らず」という諺があるように、二つのものを同時に取ろうとすると失敗する。だから、こっちをとるためにはこっちを犠牲にしなきゃいけないのかしらと悩んでいる女性は多いです。そんなとき私はいつも「どちらか一つじゃなく、虻も蜂も取りに行ってください」と背中を押すようにしています。子育てしながら、介護しながら、やりたい仕事もして良いじゃないですかと。犠牲や我慢をしなくても、何か良い方法がここで話をしているうちに生まれるかもしれない。その答えは全てにおいて100点を取ることではなく、自分自身が納得するスタイルを見つけることなのではないでしょうか。女性が起業し、のびのびと活躍できるためには、保育園や幼稚園などの預かり時間、父親の育児参加、行政の様々な支援体制などが必要になります。今後、スタートアップセンターとしても拠点が大分県内に広がりを見せることで、女性の起業をさらにバックアップできることを目指したいと考えています。
スタートアップフェス2019の開催情報はこちら
https://startup.oita.jp/event/startup-fes-2019/
おおいたスタートアップセンター
https://startup.oita.jp/