2018.09.11
太田 瞳さん(ライフデザインラボ株式会社 代表取締役社長)
子育てと仕事を両立するママにとって、子どもの急な発病は大きな悩みのひとつ。頼れる相手が見つからず、心苦しさを抱えながら仕事を休んで看病にあたるママも少なくない。「病児保育」に特化した保育サービスを行う「ライフデザインラボ株式会社」では、体調を崩した子どものお迎えから病院の受診、預かり保育までをトータルに行う保育事業を通じて、働くママが安心して仕事ができるための環境づくりに取り組んでいる。「自分自身が子育てを通じて感じた困りごとが、サービス立ち上げのきっかけになりました」と語る代表の太田瞳さんに、ご自身の子育て体験や、独自のサービス内容について伺った。
-太田さんが「ライフデザインラボ」を立ち上げるまでの経緯を教えてください。
私は幼い頃からクラシックバレエを習っており、結婚後も講師として活動していました。その中で結婚・1人目の子どもの出産というライフステージの変化を経験し、1年の育児休暇を経てバレエ講師の仕事を再開したのですが…。「待機児童問題」の影響で認可保育園に入園できず、一時預かりの保育園に子どもを預けて仕事をすることに。この頃は、周囲に頼れる人がおらず、子どもが急病の時などは母に看病を頼んでいました。母は現役で働いているにも関わらず、車で1時間もかかる遠方から駆けつけてくれました。親とはいえ、正直、申し訳ない気持ちにもなりましたし、でも、行政機関などに頼ることもできず…なんとか解決できる方法がないかなぁと考えたのが、ライフデザインラボのスタート地点だったような気がします。
-頼れる相手がいなかったり、役立つ制度のことを知らないと、子育ては本当に大変だと思います。
そうですね。その後も、夫の転勤で2人目を産んですぐに、東日本大震災直後の東京へ引っ越し、2年後には3人目の子どもを東京で出産しました。その間、東京に身寄りがなかった私は、今となってはほんの些細なことですら誰にも聞けない、誰にも頼れない、と悩みと孤独に苦しんだ生活が3年間も続いたので本当に辛かったです。そんな状況の中、再び大分で暮らすことになりました。引き続き講師として働くため、子どもを預ける保育園を探したのですが「待機児童問題」は全く解決しておらず、10ヶ所の保育園の入園先行に落ちました。子どもが発病した時に一時的に預ける「病児保育」の施設も常に埋まっている状態で、本当に不便さを感じていて…。ショックでしばらく塞ぎ込んでいたのですが、時間の経過と共に前向きな気持ちになり「私と同じ思いをしているママたちを救うためにも、子どもを預けられる場所を自分自身でつくりたい」と考えるようになりました。
-ご自身が子育てで感じた「困りごと」が、「ライフデザインラボ」を立ち上げるための原動力になったんですね。
特に「病児保育」に関しては、子どもが発病した時にすぐ預けたいと思っても、常に予約が埋まっていて預けられないことが多かったんです。自分自身がこうした困りごとを感じていたこともあり、「ライフデザインラボ」は「病児保育」に特化した家庭的な保育所を目指しました。ママたちが「困っている時」に頼れるサービスを届けることで、子育てに対して前向きな気持ちになって欲しいという想いも込めています。
-「ライフデザインラボ」のサービスの中で、大切にしていることは何ですか?
お子様が発病した「当日」に預けられることを何より大切にしています。例えば、朝早くに発病した場合、出勤までの限られた時間内で病院へ連れて行くのは難しいですよね。「ライフデザインラボ」では、発病した当日の朝6時45分までにご連絡をいただければ、ママやパパに代わり「看護師・保育士・研修を受けた子育て経験豊富な母親達」が病院を受診して、2人体制で夕方までお預かりします。毎日変わるニーズに応じて、空き部屋を利用した病児保育室をご用意する「サテライト型の病児保育」サービスをご提供しています。その他、お子様の病状や発育についての疑問や悩みを「LINE」を使って、気軽に小児科医に相談できるサービス「小児科オンライン」と提携し、ママが抱える不安の解消に役立つサービスも無料で提供しています。
-子どもを保育する「ママスタッフ」の方々は、どんな方なのですか?
看護師や保育士、学校教員をすでに退職された方などにご協力いただいています。空いている時間の中でシフトに登録していただき、当日の朝6時45分までに「預かり」のご依頼が無い場合、その日は「お休み」になるというスタイルです。プライベートの急な予定にも対応できるようにスタッフ同士でスケジュールの調整を行っており、それぞれのライフスタイルに応じて働くことができます。別の職場で働きながら、お休みの日に「ライフデザインラボ」で働いているスタッフもいるんですよ。
-独自の「病児保育」システムやスタッフの方々の働き方など、今の時代に合ったフレキシブルな仕組みで取り組んでいますね。
「ライフデザインラボ」の立ち上げには、夫のサポートも大きな力になりました。私と同じように彼にも、現状の「病児保育」が抱える課題を解決したいという想いがあり、行政とは別の切り口から「細やかな保育サービス」を届けることが必要だと考えていたようです。そのために必要なのは、専門的なスキルがあるけれど、休職や退職などで眠っている女性の皆さんの力を発掘し「保育の現場」で活躍していただくこと。夫と何度も話し合いを重ねて「ライフデザインラボ」の事業計画をつくり、大分県内の優れた起業家を発掘する「第14回大分県ビジネスプラングランプリ」に応募したところ、奨励賞をいただきました。私たちが「病児保育」の課題を解決するための一石を投じることで、今後のより良い環境づくりのきっかけにつながると嬉しいですね。
-「ライフデザインラボ」のサービスを考える中で、心に残った出来事は何かありますか?
あるママから「このサービスのおかげで、働きたいママが自由に羽ばたいていけるようになると感じました」という言葉をかけていただいたことが印象に残っています。その方はカメラマンでしたが、夢を持ってお仕事に取り組んでいる方から、そのようなお言葉をいただけたことが嬉しかったですね。
-今後、新たに取り組みたいサービスは何かありますか?
保育園や幼稚園に預けているお子様が発病した際、お迎えから病院の受診、預かりまで行う「お迎え代行サービス」に取り組んでいきたいですね。保育士さんから親御さんに直接連絡をする場合、電話がつながらずスムーズなお迎えができないことも多いです。しかし「ライフデザインラボ」が保育園や幼稚園と提携し、保育士さんと親御さんの間に入ってお迎えから預かりまで行うことで、どちらの負担も軽減することが可能になります。「働くママ」を応援する企業の福利厚生としても活用できると感じますし、今後は「企業」と「保育園・幼稚園」に対してもサービスを届けていきたいと考えています。
-太田さんは「ママのままプロジェクト」を通じて、ママたちが欲しい情報を発信していく「ママアンバサダー」としても活躍されていますね。今後「ママのままプロジェクト」を通じて取り組んでいきたいことは何かありますか?
一人ひとりのママが「ありのままの姿」でいられることも大切ですが、私はそれに加えて「ママでいられることの喜び」という、前向きな気持ちの大切さも伝えていきたいと思っています。そのためにも、今後は「ママフェス」のような楽しいイベントを開催してみたいですね。ママが前向きになれるようなサービスや、バレエの経験を活かしたエクササイズ、身体に優しい食事などの紹介できる、お祭りのように楽しいイベントにしたいです。今後も「ライフデザインラボ」はもちろん、「ママアンバサダー」の取り組みを通じて「困りごと」や「悩み」を解決し、ママたちが笑顔でいられるためのきっかけをつくっていきたいですね。
ライフデザインラボ株式会社
https://lifedesignlabo.co.jp/