WORK働いているママ・これから働きたいママに
プラスとなる情報を紹介します。

2024.04.09

おおいた子育てパパ応援事業「パパ応援講座」
「働き方を考える意見交換会」レポート

おおいた子育てパパ応援事業「パパ応援講座」<br>「働き方を考える意見交換会」レポート

経営者と子育てパパが
働き方を考える意見交換会

大分県では、「子育て満足度日本一」実現のため、地域ぐるみで率先して子育てを楽しむ父親同士のコミュニティをつくり、父親ならではの悩みを相談したり、イベントに参加したり、「パパであること」を楽しむために、全5回の「パパ応援講座」を実施しています。2月23日(祝)、臼杵市にて4回目の講座「働き方を考える意見交換会」が開催されました。ファシリテーターに、NPO法人ファザーリング・ジャパン 九州代表理事の森島孝さんをお招きし、大分市の企業「株式会社 Cont」代表の河野智洋さんと、ワークライフバランスについて考えたいパパ7名が意見交換を行いました。自社の上司、部下には聞けない事など本音で話し合い、課題解決のためのヒントが見つかったのではないでしょうか。

講師インタビュー
NPO法人ファザーリング・ジャパン 九州代表理事 森島孝

現在は、さまざまなNPOプロジェクトに携わる活動をしていますが、もともと出版社や広告代理店で会社員として働いていました。当時は、ファザーリング・ジャパンの活動内容については知っていたものの、私生活では全く実践していませんでした。家庭を顧みず仕事に邁進していた矢先、体調を崩してしまい、長期で仕事を休むことに。思わぬ形で家族との時間が取れるようになりましたが、妻も子供もどこかよそよそしい雰囲気で、入院した際もお見舞いにはほとんど来てくれませんでした。そこで、家庭での自分の立ち位置を認識したのです。そこから、「父親として家族の時間を優先したい」と思い独立。現在に至ります。そこから、2年かけて家族仲を修復しました。

現在は、ファザーリング・ジャパン 九州支部代表理事として、九州各県の子育て中の男性を支援する活動を続けています。昨年も、大分県の「子育てパパ応援事業」に携わりましたが、年々感じるのは、育児に積極的な男性が増えてきているということ。これまで女性が抱えていた仕事や家事、育児をシェアしながら、父親として子育てを楽しみながら人生を歩んでいきたいと思うパパが増えてきたということは大変喜ばしいことだと思います。

多くのパパが講座にご参加いただいていますが、パパ同士には独特の距離感があります。しかし、皆共通して胸の奥にあるのは、「同じ境遇のパパとつながり、悩みを解決したい」という想いです。パパたちが自分の取り組みや悩みを発信、共有することで、さまざまなところに大きな影響が生まれ、パパがもっと子育しやすくなる環境が整って行くはずだと考えています。

子育てに触れ、父親であることを楽しむことは、働き方の見直しや企業の意識改革、ひいては次世代の育成につながります。誰もが、もっと自分らしくわがままに、仕事もライフスタイルも楽しみながら自由に生きていける社会が理想です。そのためにも、今後はプレパパや大学生など、若い世代に向け、「家事・育児の分担」「パパ同士のコミュニティーの魅力」といった内容の講座に力を入れていきたいと考えています。

男性をとりまく過去と今
仕事と家庭のバランスは?

今回の会場である臼杵市の海辺こども園には、ファザーリング・ジャパン九州代表理事の森島孝さん、同団体理事の馬場義之さん、大分市の広告制作会社「株式会社Cont」代表取締役の河野智洋さん、臼杵市内の企業で働くパパ7名が集まり、皆でひとつのテーブルを囲みます。全5回のうちの4回目とあって、パパ同士はすでに顔なじみのメンバーばかり。開始前から和やかなムードが流れています。

まずは河野智洋さんの自己紹介からスタート。「職業柄、県内外の多くの経営者と出会う機会があります。今日は、私自身が抱えている悩みはもちろん、同じ経営者から聞いた本音をお伝えしながら、“ぶっちゃけ”トークができれば嬉しいです」と挨拶しました。

森島さんとパパたちは、「残業は美徳」「飲みニケーションも仕事」がスタンダードだった時代のことを振り返りながら、現在は子育てや介護中の人も働きやすくなってきたと語ります。



とはえ、今の30〜40代が働く企業には、古い体質の企業もまだまだ多いのが現状。彼らは、仕事を優先するのか、家庭を優先するのか、一番揺れ動く世代でもあります。森島さんが「それぞれ職種や職歴、お子さんの年齢やなど異なりますが、仕事と家庭のバランスをどのように考えていますか?」とパパたちに質問します。



多くの意見が飛び交うなか、皆が賛同したのは、「その時々で、生活の質が上がる方を選ぶ」という意見。飲み会や大事な案件に関わることで自分の生活が向上する場合は仕事を選ぶが、家でご飯を作ったり子どもと遊ぶ方が家庭がうまくいく場合は家庭を選ぶそう。

また、「飲みニケーションと呼ばれるぐらいなので、飲み会への参加が重要な場合もあります。クライアントとの会食に参加することで仕事の幅が広がることもあるし、営業活動になることも。“自分が将来的にどうなりたいのか”をベースに考えています」と語るパパもいました。



続いての議題は、飲み会ではない方法で上司と上手にコミュニケーションを取るコツについて。「社長や上司からの飲み会の誘いに応えることで評価が上がるケースもまだまだ残っています。しかし、それは今の時代一番やってはいけない評価方法。近年、弊社では個人面談を実施しています。仕事に関する目標について話すのではなく、プライベートなことも含めて1時間私とフリートークするだけ。実は、仕事とプライベートは、はっきりと分けられるものではありません。その2つはグラデーションでつながっていて、仕事で抱えている悩みだけでなく、プライベートを含めて悩みや課題を把握することができれば、仕事面においてもマネジメントしやすくなります」と河野さんは述べました。

「私も就業5分前に、上司と雑談する習慣があります。『今度授業参観があるんです』といったプライベートな話を自分から振ることで、お互いの距離も縮まる。仕事のお願いや休暇の申請もしやすくなります」と馬場さん。「会社への要望・不満などは労働組合で改善しています。実際に、同僚がハードな部署への異動を打診された際に、子どもの送り迎えが必要なこと、家庭とのバランスがとりたいと相談したところ、その人事が白紙になったことがあります」と、パパたちも実体験を語ります。

個人面談や労働組合などを設けて、従業員の意見を吸い上げ、風通しをよくすることで彼らが抱えている問題を見える化し、改善点について建設的に話し合っていることがわかりました。「飲みニケーションの文化がなくなっても、“会社がこうなればもっと働きやすくなる”という意見を伝える場があれば、お互いのガス抜きができる」と河野さんがまとめました。

また、「会社に悩みを伝えることも重要ですが、“パパ友”の存在もとても大切だと思います。例えば、悩みや愚痴は、聞いてもらえるだけでスッキリすることもあります。毎回妻に伝えているとうんざりされるので、パパ友に相談することも多いです」という意見も飛び交いました。

おおいた子育てパパ応援事業「パパ応援講座」<br>「働き方を考える意見交換会」レポート

妻には言えないけれど…
パパたちの本音に迫る

「家事や子育てにも注力しているけど、本音は“もっと仕事をしたい”と感じている人はいますか?」と河野さんが問いかけます。ここからパパたちの本音に迫っていきます。

「子どもは可愛いし、家族も好きだけど、家事をしなくて良いなら本当はしたくない(笑)。でもそれはママも同じですから」と本音を漏らしながらも、パパもママも同じだと皆口を揃えて言いました。

「今や男性も女性も仕事や家事・育児も頑張らないといけない時代。しかし、家事・育児で培った、効率的に作業をこなすスキルやマルチタスクの能力は、仕事にも大いに生かすことができるし、自身の成長にもつながるのではないかと思います」と河野さん。



「現在、子どもは高校生になり、だいぶ自分の時間をとれるようになりました。それに、思春期の娘からは悩みを相談されることも。あのとき、自分の行動を反省し、子育てに関わってきたからこそ今の生活があります」と森島さん。「私たちができるのは、子育て真っ最中のパパたちに、人生を楽しんでいる姿を見せること。子育ての期間はあっという間に終わり、再び自分の人生を思う存分楽しめるタイミングが戻ってきます。今というかけがえのない時間を大事にしてくださいね」と馬場さんは続けます。

「家事や育児など、仕事以外の世界にも目を向けていくほうが、豊かな人生を送れるし、仕事でもよいものを生み出せると思います」と河野さんは締めくくります。パパたちは、皆笑顔でうなずき、意見交換会は終了しました。

おおいた子育てパパ応援事業「パパ応援講座」<br>「働き方を考える意見交換会」レポート

たくさんの質問が飛び交う
質疑応答タイム

意見交換会終了後、パパたちが河野さんに聞きたいことを投げかける質疑応答タイムへ。最後まで活発なコミュニケーションが生まれるひとときになりました。

■質疑応答
―まだまだ女性管理職が少ないと言われています。企業の代表として男性と女性に求めるものは違うのでしょうか?
仕事面においては、求めるものや役割は変わりません。役割の違いはありませんが、女性は時間や環境的な制約が大きいと感じることはあります。例えば、子育て中の女性社員は、保育園のお迎えの都合で、夕方からスタートの会議には参加できなかったり、県外出張に行く場合も、食事づくりや不在中の家庭のケアなど、事前にさまざまな準備が必要になる場合が多い。それに、その問題を改善するためには、会社や各家庭がいろいろなアイデアを出して問題をクリアすることができれば、男性も女性も同じように活躍できると思います。

―今後、週休3日制は広まって行くと思いますか?
「週休3日になったら仕事が終わらないのでは?」と不安な人も多いかもしれませんが、意外とリアリティーがあるのではないかと思っています。弊社も、社員の残業時間が多くなった際、ダラダラ作業をしているため結果的に残業時間が多くなっていることが判明。どんなに遅くても21時までに帰るようにとルール化しました。最初は不満も多かったですが、1年もすればみんながきっかり21時に帰れるようになりました。週休3日になれば、給料面も不安になるかもしれませんが、その時間を全然違うジャンルの副業に充てたり…。ライフスタイルの幅が広がると思います。

―求める人材が集まらない場合は?どんな企業が理想ですか?
管理職クラスの人材ばかりでも会社はうまくいきません。野球に例えれば、4番バッターばかりでも試合には勝てない。やっぱり仕事はチームプレー。しっかり一人ひとりとコミュニケーションをとりながら、得意な分野とそうでない分野を見極めて、適材適所の人員配置が重要だと思っていますし、そんな会社にしていきたいと思っています。

パパと経営者が、仕事のことはもちろん家庭のこと、自社の上司や部下には聞けない疑問や不満、本音をぶつけ合った今回のイベント。子育てと仕事の両立、今後のキャリアのことなど、同じ悩みを抱える同志が、共に高め合い、課題解決のためのヒントを得ることができたひとときとなりました。

おおいた子育てパパ応援事業「パパ応援講座」<br>「働き方を考える意見交換会」レポート

こちらの記事もオススメです

page top